小説同人誌の装丁まとめ(イラストなし/加工説明あり)
はじめに
この記事は、絵が描けない&少部数発行(基本は30部)の字書きが自力で作った同人誌の装丁まとめです。加工要素を色々追加したものから、ほぼ基本仕様の中で作ったものまで各種取り揃えてみました。
それぞれポイントとなる加工要素を見出しに記載するとともに、特殊紙やフォントなどは本文中でも外部リンクを貼っていますので、何かの参考になれば幸いです。
※二次創作同人誌に関する記事となります。イラスト表紙の作例はありませんが、一部に小説の本文画像を掲載しています。上記につきご了承ください。
HOPE21
短納期かつ少部数でちょっと装丁凝りたい!となった場合にまずおススメしたい、ホープツーワンさん。
基本となるポケットセット+や季節のセットの範囲内でかなり遊べる(特にセット内で空押しできるのは大きなメリットだと思います)ことと、早割20%オフでお手頃価格になることから、個人的にもっともお世話になっている印刷所のひとつです。
・OKムーンカラー+空押し 『旅のおわり』
Affinity Designerで表紙を作るの記事で作例に挙げた本です。
HOPE21は通常のポケットセット+では空押し対応していないのですが、季節のセットを選択するとセット内で空押しオプションが使用できます。
この本はラストシーンが「桜舞い散る下で再会するふたり」だったため、読み終えた時に表3側(裏表紙の裏側)に桜の花びらが2枚浮かんで見えるように、背表紙をまたいで空押しを配置しました。
OKムーンカラーとOKフロートは空押しすることで表面の質感が変わるだけでなく、裏側からも押した部分が透けて見える特徴があり、その「裏側から見える」効果を狙った装丁でした。
なお、印刷した部分への空押し加工は汚れるおそれがあるそうで(印刷所さんよりTELでご案内いただきました)、この時は少し弱めに押していただいています。
・エンボスサンバシルク、加工なし 『UNTITLED PORTRAIT』
前述の本とは異なり、こちらは通常のポケットセット+で印刷しています。表紙の紙はホープツーワン基本用紙(オリジナル用紙)のためポケットセットでも使えるのですが、遊び紙を選びたかったので+の方で依頼しました。連作短編集で、その最後の1篇が絵画ネタだったことから、(油絵の)カンバスに近いニュアンスの出る表紙用紙として選択しました。オンデマンド印刷のトナー感も油彩っぽさを出すのに一役買ってくれた気がします。遊び紙も表紙に近い質感のタントセレクトTS-1を使っています。
・ニューラグリンS+箔押し黒 『Fighter, Loser, Survivor』
表紙に使ったニューラグリンSは色展開含めどちらかといえば可愛い系の紙なのですが、手触りは結構ラフなので、グランジっぽいテクスチャー素材を敷いて逆方面の装丁に使いました。Impactフォントを使えば何となく洋ロックっぽい格好良さが出せると信じているタイプのオタクです。
タイトルを黒箔押しにしたものの、このフォントならオンデマンド印刷のトナーだけでもわりと光沢と存在感が出るので、別に箔押しにしなくても良かったな……と今は思います。
・OKフロート+空押し 『刻む名前』
タイトルのイメージが墓碑銘(墓に「刻む名前」)で、作中のキャラが「名もなき化け物」だったため、『人の名』を空押ししました。
当時は季節のセットが空押しに対応しておらず、スロットセットで依頼しました。本編中のメインの時代・舞台設定が戦時中の中国なので、表紙デザインはどこか炎を思わせる色合いの水彩テクスチャを使用しています。
・レイチェルGA+箔押し赤、トレペ口絵挟み込み 『至上ノ運命』
珍しくセットを使わない通常印刷の本。というのも私にしては大変珍しく人気カップリングの死別⇒転生再会ハッピーエンドという王道内容で、いつもより部数を増やせる見込みがあったため、これは装丁も盛れるぞ……!と調子に乗って色々やった経緯があります。
レイチェルGAはおそらく今もう使える印刷所がプリントオンしかなさそうなのですが(2025年1月時点)、この唯一無二のエンボス模様が大好きな紙です。スパイジャンルなら雰囲気も合いそうだなと思い、取り寄せ対応で使用しました。タイトルは数式フォントほぼそのままなので、もう少しアレンジしても良かったかもしれません。
そして通常印刷の口絵オプションは本文の任意の箇所に挿入可能なため、本編が完結して視点人物が変わるタイミングで中扉的に1枚挟みました。目立ちすぎることもなく、ちょうどいいアクセントになったのではないかなと思っています。
STARBOOKS
紙オタク垂涎の豊富すぎる遊び紙のラインナップと箔オタク(中略)特殊箔のラインナップ、そして初心者でも迷わない丁寧な対応から、おすすめ印刷所として必ず名前が挙がるSTARBOOKSさん。しばらく予約受付を中止されていましたが、2025年1月現在は再開されているようです。
個人的には表23印刷をする場合に依頼することが多いです。
・プレミアム遊び紙 『いとしのナイトメア』
コスモテックさんコラボのプレミアム遊び紙・スターリットドリームがどうしても使いたい!というところから内容を考えた、いわゆる出られない部屋ネタの本。着想元に『不思議の国のアリス』があったことから、表紙はドアモチーフのデザインにしました。タイトルのフォントはラノベPOPを使っています。
『◯◯しないと出られない部屋』は「さよならしないと出られない部屋」とのダブルミーニングだったので表4(裏表紙)に黒50%でこっそりネタバレの隠しメッセージを入れていたのですが、出来上がってみたら結構しっかり視認できてしまったため、もう少し濃度を下げても良かった気がします。本当は傾けたら読めるぐらいの濃度にしたかった……。
・本文黒枠、カラーページ挟み込み 『Nowhere Dogs』
(言葉にすると非常にややこしいのですが)過去軸の連作短編集+現在軸の本編長編という二部構成で、かつ過去軸の中にも少し毛色の異なる断章が挟まっている作りだったため、本文中に視覚的な仕掛けを作りたいと考え、短編集部分はページに黒縁、本編部分は黒縁なしとし、その区切りになる箇所にカラーページを挟みました。映像にたとえると、モノクロ(からフルカラーに切り替わるようなイメージです。
併せて、断章部分はフォントをHG教科書体に変更しています。余談ですがHG教科書体の縦書き(小説本文)はなかなか雰囲気がでるので、一人称や回想シーンに使うと良いアクセントになると思っています。
・サガンGA+シルバートナー、パール箔 『在る証明』
内容がハードボイルドアクションだったので、触った感じもざらっとした紙を使いたいと思い、砂岩=サガンGAを使いました。シルバートナーの光り方も綺麗です。
この本のデザインについては、たたき台を作った上でデザイナーさんに細部を仕上げていただきました。詳細はこちらのポスト(最強の1冊を作りたくてデザイン&校正サービスをお願いした話)をご参照ください。
・キュリアスIRパール+表23印刷 『パレードの速さで』
「本の表紙をめくると中に宇宙が広がっている」というのをやりたかった本です。自己満足ですが、手のひらサイズの文庫本の内側に宇宙があるのはエモいなと。キュリアスIRは両面に加工がなされているため、表23側もうっすら偏光パール加工が見えます。
ちなみにこの時はノベルティとして丹羽紙業さんでブックカバーを作りました。モフルという紙にキャラのモチーフをワンポイントで印刷しただけですが、なかなか可愛くて気に入ってます。
その他の印刷所
上記印刷所以外で、こんなことやったよ~というのを紹介します。
・ヴィンテージゴールドモス、加工なし 『What a wonderful world』(コミックモール)
コミックモールさんで印刷しました。元祖お安く文庫本を作れる印刷所として有名ですが、価格面以外の特徴として、実は意外と取り扱っている用紙の種類が豊富です。特に表紙は他印刷所で取り扱いのない紙が使えることも多く、このヴィンテージゴールドもそのうちのひとつになります。クラフト紙に着色&金ラメ加工の、シックでとてもかわいい紙。とはいえ連量107kgと薄手なので、A5サイズ以上の場合は遊び紙にする方が適しているように思います。
印刷はラメ面とクラフト面のどちらも選べるのですが、この本ではラメの方に印刷しました。クリスマスの話だったので、遊び紙をタントセレクト-TS9の赤にしています。でもこの紙も廃番(廃色)なんですね……寂しい……。
・肌色の遊び紙 『明けない夜のダイアローグ』(ブロス)
一応表紙用紙はオプションの紙変えを使っていますが、ブロスさんのほぼ基本仕様になります。
なんと全年齢向けのくせにベッドシーンがテーマ(!)だったため、遊び紙を肌色(色上質紙うすだいだい)にしました。表紙がジェントルホワイトフェイスというすべすべした白色の用紙なので、何というか、シーツの下のむき出しの肌……みたいなイメージで……どうにか色っぽいしっとり感を演出できればと考えた次第です。
・色上質紙黒+全文銀インク印刷 『無言歌集』(EditNetプリンテック)
EditNetプリンテックさんで過去に本文銀インク印刷フェアがあり、その時に作った本です。
Twitterに掲載していた画像SS(1~2ページ程度で終わるもの)の再録集で、この文章量・長さなら可読性を多少度外視しても問題ないだろうとの判断から、表紙含め全文を銀インクで印刷しました。文庫サイズ中綴じで、どちらかといえば詩集に近いイメージです。
・番外編:小説同人誌の扉(中表紙)のあしらい
ところで装丁において意外と悩ましいのが、扉ページではないかと思います。表紙が建物の外観なら、扉ページは表紙をめくって最初に出てくる、いわばその本の玄関でもあるため、手間はかけたくないものの、ちょっとした印象は残したいところ。
よくある扉ページの工夫としては、
・市販の文庫本のように飾り枠で枠囲いにする
・タイトルロゴを置く
・タイトルに合わせてあらすじや印象的な序文を添える
等でしょうか。もちろん上の合わせ技もあり。
私は「表紙をモノクロ変換して流用する」のを結構やります。特にシンプルな装丁の本の場合、ちょっと凝って見える&簡単に統一感が出るため、結構おすすめです。
・表紙イラストなしでアンソロジーを作る工夫 『須郷徹平アンソロジー・夜明けの色彩』(西村謄写堂)
以前にアンソロジーを主催した記事を書きましたが、そのアンソロの表紙についてです。
漫画・イラスト・小説混在の二次創作アンソロジーで表紙にキャラのイラストが一切ないのもわりと珍しいと思うのですが、いくつかの理由から、この時は表紙イラストなしの方針に舵を切りました。
イラストによる視覚的な訴求力に頼れないので、タイトルロゴはデザイナーさんに依頼し、また表紙用紙と箔にもこだわりました。表紙用紙は西村さんオリジナル用紙のソレイユという偏光紙にマットPP、箔は透明ホログラム箔を押しています。
箔も紙もめちゃくちゃ綺麗なのですが、写真ではなかなか伝わらないため、よろしければXの動画もご参照ください。
またデザイン的な面でいうと、本来最も重要な要素であるタイトルロゴは中心部または上部に置くのが正解だといわれています。
が、地平線からの夜明けのイメージで、この時はあえて下部に配置しました。海外の映画ポスター等を参考にしつつ、背景画像のベクトルが右上⇒左下なので、視線誘導のセオリーであるZ型(横書きの場合。縦書きはN型と言われています)からも一応外れないかな……という感じです。
※参考:視線誘導の法則
おわりに
気づけば13冊分、7000字も書いておりました。
私は特殊紙オタクの箔オタクなので箔押しも紙も遊べるだけ遊びたい性分なのですが、予算や締め切り、はたまた内容との兼ね合いから、できる特殊加工には限りがあります。
また自分で作った表紙はどうしたって素人デザインなので、ふと我に返って垢抜けないなぁ……と落ち込むこともしばしばあります。
が、それでも紙や加工の組み合わせで「自分が書いた小説を表現する」ことは可能です。そしてそれは、同人誌作りの大きな楽しみのひとつではないかなとも思っています。
この記事が何かのヒントになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
いつか頼んでみたいコスモテックさん。記事を読んでいるだけで楽しい。
栄光さんの作例もとても勉強になります。
あとこの方のセンスと工夫がめっちゃ好きです。デザイナーさんじゃないんですよね……すごいなぁ……