首相の政倫審出席 国民の疑問に応えていない
政治家の逮捕や辞任が相次ぐ東京・江東区民(の一人)として怒っている。そうした中で政治倫理審が開かれた。
国民の政治不審が分からない岸田総理の言いぶりだったようだことが、各詩の社説で窺われる。どの論調も同じ。そのうち中国新聞のものを掲載した。
読んだ人はすべて頷くはずだ。ゴチック体にした箇所だが、清和会の不可解なパーティー券売上げ処理は、当時の安倍晋三会長の指示で正常化することになっていた。ところが彼が暗殺されると元の木阿弥になっている。陰謀論者ならば「安倍暗殺の目的は不当な政治資金処理を続けるためだった」と言うかもしれない。
マスコミはいまだに「安倍派が…」と、故安倍氏が不当処理の黒幕との印象付けのような言い方をする。これも一種の陰謀か。国民感覚では”黒幕”としては森喜朗氏の方がよほど怪しい。派を個人名称で呼ぶのであれば「旧森派」という方が、問題の実態に近いと思えるが。
政治不信の根本はパーティー券問題なのだろうか。今の法律では政治家のパーティーは合法であるし、正当に手続きすればすべて非課税とされている。ところが岸田総理は「在任中は自分に関してはパーティーを開かない」と約束したとか。
合法なのになぜ自粛するのかと突っこむべきだし、パーティー開かなくても政治活動に支障がないのであれば、「法的に禁止する法改正を国会でお願いしたい」と言わせるべきだった。岸田さんはそういう気持ちに違いないと勝手に忖度して政治資金規正法の改正提案をするのが野党の使命と思うが、SNSでは野党議員も同じ傷を脛に持っていると揶揄されている。ほんとうのところはどうなのか。
国民の政治不審の基本は、国の存続が問われる事態に追い込まれつつあるにも関わらず、領袖クラスとされる政治家に感心も希薄も感じられないことだ。その最大要因は適せでない者、国を憂い、なんとかしたいという意思がつっともない者が選挙で勝つということだ。この悪風を断つにはどうすればよいか。最初のにすべきことは分かっている。選挙地盤の世襲を禁じることだ。方法は実に簡単。3親等内の親族は同じ選挙区から立候補してはならない。ただそれだけ。女性候補を増やすために男性に断念させることをできるのだから、現職の親族に別区域からの立候補を要請するなど雑作もないことで、職業選択などの自由の侵害などというバカバカしい議論が出るはずもなかろう。
こうなっていればわが江東区の今の惨状も起き得なかった。その原因は3家の地盤世襲による政策そっちのけの議席争奪戦だった。
首相の政倫審出席 国民の疑問に応えていない
中国新聞社説 2024.3.1
岸田文雄首相は、いったい何のために出席したのか。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて、きのう開催された衆院政治倫理審査会での答弁は、国民の疑問に応えたとはとても言えない。
はなから出席する意味を取り違えていたのではないか。弁明で「政治不信を引き起こしていることに自民党総裁として心からおわびを申し上げる」と述べた。今回の政倫審は裏金に関して国会議員が説明責任を果たす場である。それを差し置き、謝罪したところで意味はなかろう。
まして政権が苦境に陥る中で、政治改革に取り組んでいるかのようなアピールの場に使ってもらっては困る。党総裁として実態解明へのリーダーシップがこれまで以上に求められる段階だ。裏金事件が浮上して既に約3カ月。法案審議に影響が出ている。
きょうの政倫審には安倍派幹部4人が出席する。これまで、裏金づくりについて「分からない」「関与していない」と不自然な釈明を続けている。説明責任を果たさせるために率先垂範が求められた。その意味でも、踏み込んだ見解を語らなかった首相に失望感を禁じ得ない。
最もあきれたのは安倍派の組織的な裏金づくりがいつ、誰の指示で始まり、2022年にいったん中止しながら復活した過程を尋ねられた時だ。首相は「残念ながら、はっきりした経緯や日時などは確認できていない」とした。党の聞き取り調査の報告書にある「判然としない」をなぞったに過ぎない。
報告書が核心部分を明らかにしていないのは分かりきっていた。ならば新たに調査を重ね、公表するのが「説明責任」というものだ。
裏金づくりが始まったとされる時期に派閥会長だった森喜朗元首相らへの聞き取りをしていないことも判明した。裏金の使い道は報告書に沿い「政治活動以外への使用、違法な使途は把握されていない」と言い切った。だが、安倍派議員による政治資金収支報告書の修正で「使途不明金」としたり領収証がなかったりする例が多く、信じ難い。
さらに首相自身の政治資金パーティー開催について大臣規範への抵触だと野党から再三詰め寄られた挙げ句、在任中は開催しないと答弁した。これも改革への後ろ向きな姿勢の表れだ。首相は繰り返し「あらゆる機会を利用して説明責任を促すことが重要」と話すが、肝心なのは説明の中身だ。
現職の首相が初めて政倫審で弁明した意味は重い。しかし、従来の国会答弁を繰り返すばかりで、真相に迫る熱意は見えなかった。これでは、安倍派幹部に全面公開での出席を促すという内向きの論理だけで出席を決めたと言われても仕方ない。
二階派事務総長の武田良太元総務相もまた、実態解明に程遠い答弁に終始した。派閥の政治資金収支報告書への虚偽記載を「全く存じ上げなかった」と述べた。首相ともども、国民が何に憤っているかへの想像力が欠けている。政治不信が深まるばかりだ。
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