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661社会保障過去最高額が問いかけること

 社会保障給付費が過去最高の132兆円になった(2020年度)。対前年度6.7%の増。コロナでのバラマキという特殊要素はあるが、それ抜きでも増えているはず。人口は減っていく、今後に予想されるインフレへの対応。そうしたことを考えれば、社会保障給付の設計が今のままでいいのか。
 そういう問題提起に対しては、ではどこを削れというのかと反論される。受け取っている人に対して、「あなたへの給付は間違いであったから返してもらう」と言えば、「隣の人はもらっているのに、なぜ自分はダメになのか」などで上へ下への騒動になるのは必至。いったん支給を始めれば、それをやめるのは難しい。コロナのバラマキも、これが先例になって、今後新たな大規模感染症発生時に再開されることが想像に難くない。
 だが、社会保障給付費が増えることは、国民福祉増進とほんとうに合致するのか。これを公的社会支出の各分野に分けて分析してみよう。
「高齢分野」の種給付は老齢年金と高齢者介護。寿命の延びでますますの増額が必要されるが、今の働き方を変えたらどうか。定年過ぎても地域活動に従事し、それでいささかの報酬をもらえれば、預金の取り崩しが少なくなる。返す刀で健康寿命が延びることにもなる。
「遺族分野」では働く父親が死なれた子や妻が給付対象。働き盛りの者の死亡や自殺をいかに減らすかによって、所要財源は変わる。
「業務災害」分野では労災防止。とりわけ過労死、パワハラ自殺などの対策だ。給付原因を除去すれば給付は必要なくなる。
「保健分野」とは広い意味での医療費のこと。生活習慣病予防などもっと資金を投じるべき事項もある。半面、終末医療など社会資源を用いることに真の国民の賛意があるのか疑問の事項も多い。自費や任意加入の民間保険に任せる分野があるはずだ。
「家族分野」とは、児童手当、育児休業、保育所、放課後保育など。わが子養育の本来責任は家庭にある。それを果たさないのが児童虐待。普通の家庭の経済負担軽減が求められている。遺伝子を残したいという生物としての本能くすぐればよいのだから、方法さえ間違えなければ、小さな資金で大きな効果を発揮するのが簡単な分野。国家との関係では、実際に要した金額を税金控除の形で返せばよい。税収は減るが、社会保障給付費は減る。給付のための複雑な行政機構が要らない分、税控除の方が国民負担は小さい。
「労働政策・失業分野」。工場の行き過ぎた海外展開の是正、外国人労働者の受け入れ調整で国民の就業機会を増やす。併せて法定雇用率による就業促進を、障害者に限らず、児童養育者や高齢者などにも広げる。構造的失業をなくせばよいのだ。
「住宅分野」。現在は低所得者への賃貸住宅提供にとどまっているが、視野狭窄。長生き時代を踏まえれば、価値ある住宅を所有させ、その資産価値を老後の生計費に一助にすべきである。リバース・モーゲージがその一手法。住宅の耐用年数を高めることで、低価格高性能の中古住宅を流通させる。
 いろいろあるけれど少子高齢社会を前提に、わが国社会の経済基礎構造を少しずつ変えていく。それによって社会保障給付を受給が必要な人を減らしていく。給付費が増えず、むしろ減らしていけるようになれば、社会保障の財源問題も難しい課題ではなくなる。これが社会保障対策なのだ。

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