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673 他人の目にどう見えているのか

毎朝ラジオ体操を欠かさないし、1万歩目標に歩いている。体重だってひところに比べれば5キロ以上減量した。測定器に乗ると実年齢より15歳若く表示される。
「健康寿命はまだまだ大丈夫」
 そう思っていた自信が砕かれました。
 
 昼飲みの約束があり、都心に向かう地下鉄に乗りました。混雑度一番の東西線のことですから、12時前でも空き席なし。それは慣れっこですから、立ってつり革を持っていました。
「ちょっと、もしもし」と背中から声が聞こえます。振り返るともう一度同じ声。
「ボクのことですか」と声の主に問うと、「そうあなたよ。立ってないで、ここに座りなさいよ」と言って立とうとする女性がいます。
 驚き、その女性を観察すると、どう見ても70代の後半以降。しかも旅行用のスーツケースを手にしています。
「さあ早く、こちらに座りなさい」
 
 彼女はすでに立ち上がっています。「ボクはまだ若いのだ」とお断りして、親切を無にするのは失礼ですから「ありがとう」と入れ替わりに座りました。
 彼女は数席離れたところに仲間らしい人の前に立ち、「今日はいいことをしたわ」と話しています。
 
 彼女の目にボクはどう映ってたのか。座らせなければ電車の振動で倒れて動けなくなるようなお年寄りに見えたのでしょうか。
 
 目的の酒場で友人たちと会い、このいきさつを話したところ、「無理ないよ。今日の会合でだれが一番年配か、店員に聞いてやろうか。きっと君が指名されるぜ」
 そう言われるとそうかもしれない。急に弱気になり、普段は大ジョッキのビールを中ジョッキにしたのでした。
 家に帰って家内に報告すると、「だから言わんこっちゃない。白髪のまま出歩くからよ。髪さえ染めれば、あなたは実年齢より3歳低いで通用するわ」
 身内のひいき目での励ましであれば、「10歳低く通用する」くらいのお世辞をいってほしいものです。
 
 医者にかからず、薬も飲まず、健康保険財政への貢献大の身ですが、白髪染めだけは体質に合わないようで、湿疹が出てしまうのです。
 案じた一計は、これから冬に向かう。外出時には帽子をかぶることにしよう。通販で手ごろでおしゃれなのはないか、探すことにしました。

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