410外国人漁業規制法
日本海の大和堆(やまとたい)周辺は好漁場。そして日本の排他的経済水域。ここにも北朝鮮等の外国漁船が出張ってきて、日本漁船が操業を回避する事態が起きている。巡視船が放水などで退去させているが、そうした手ぬるい対応でいいのだろうか。
外国人の漁業の規制に関する法律(昭和42年法律第60号)という制定法がある。初めて聞いたという人が多いと思うが、ボクもその一人。今日まで存在を知らなかった。法律の目的は、ずばり「外国人がわが国の港その他の水域を使用して行なう漁業活動の増大によりわが国漁業の正常な秩序の維持に支障を生ずるおそれがある事態に対処」するためとある(1条)。さすがに日本国は法治主義国家と感心したのだが…。
規制対象となる外国人とは、「日本の国籍を有しない者」と「外国法に基づいて設立された法人その他の団体」。あらゆる権限が政府の統制下にあるのが共産主義国。北朝鮮から出漁してきた漁船は、例外なくこのいずれにも該当するだろう。この法律で規制する「漁業、水産物の採捕、採捕準備行為又は探査行為」(3条)であるから、漁具を備えた漁船はどこから見ても有罪だ。
違反者は「3年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」ほか(8条の2)、「犯人が所有し、又は所持する漁獲物等、船舶又は漁具その他漁業、水産動植物の採捕、採捕準備行為若しくは探査の用に供される物は、没収することができる。ただし、犯人が所有していたこれらの物件の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる」(9条の2)。
組織的に大船団で押し寄せるとのことであり、一網打尽にして船と装備の没収をしなければ、取り締まりの効果はないだろう。放水でお茶を濁して済ませる事態ではない。逃走を図ればエンジン部分を打ち抜いて停船させるのが、通常の国の警察権行使方法ではないだろうか。そうしなければ法の執行という業務不実施になってしまう。
法文を読んでわからなかったのが1条中の「わが国の水域」。定義規定が書かれていないので、ひょっとして大和堆がこれに含まれない可能性があるのか。それで日本政府は逮捕等を躊躇(ちゅうちょ)しているのか。
ウィキペディアなどによればその懸念はなかった。領海(12海里)の最外部から、海岸線の200海里(37.4キロメートル)までは排他的経済水域として、沿岸国に水産資源や鉱産資源の独占的権利が認められている。大和堆も当然この排他経済水域に属する。
その根拠は1982年の『海洋法に関する国際連合条約』。国際的な取り決めなのだ。自国だけはそれに拘束されないとの主張は認められないし、日本国憲法上からも認めてはならない。「日本国が締結した条約及び確立した国際法規は、これを誠実に順守することを必要とする」(98条2項)。
排他的経済水域において他国に認められるのは、「航行」「上空飛行」「海底電線・海底パイプラインの敷設」だけである。ミサイル実射訓練での無通知打ち込みは、当然この対象外だろう。
金正恩が「イカを捕ってこい」と指令しているのであれば、彼を逮捕して懲役に処するのが、日本の官憲の任務である。実行できるはずがないとの言い訳を考えるのではなく、不在裁判で有罪を宣告、9条の2の但し書き部分によって日本国内にある北朝鮮政府や高官の財産没収をするのが法の執行部署の責務のはずだ。
この論理は「実効支配」している尖閣でも同じである。法律に規定されている責務を果たそうとしない政府を国民が信頼できるはずがない。総理総裁選びの基準事項であろう。
(注)写真は国土交通省の提供