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584憲法記念日 違憲気分では気持ちよく祝えない

明日は憲法記念日。今の条項が施行されたのは昭和22年5月3日。西暦では1947年。75年になるわけだ。4分の3世紀。この長い期間、一度も改正されたことがない憲法は、「世界広し」といえども他に例がないようだ。政体は変わらなくても憲法を作り替える国さえあるのに。例えば共産党独裁の中国など。
わが国では憲法改正は許されないのか。そんなことはない。わが国に憲政が導入されたのは19世紀のことで、正確な日付では明治23年(西暦1890年)11月9日に施行された大日本帝国憲法。その標題を含めて全面修正したのが、今の日本国憲法。旧憲法を廃して、新憲法を制定すれば分かりやすかったが、そこは手続き上の都合があったという次第。こういうことは法制上ではよくある話。実質的には新法なのだが、形式上は改正法。ということで明治憲法を起点にすれば、今年は憲政実施122年目になる。そのうち最初の47年間は一度も改正がなく、1947年に大改正が行われて、その後再び75年間改正がない。そろそろ部分改正しないと、必要事項がたまって、またまた全面改正しなければならなくなりますよ。
 
そんな雑な議論で論ずるのは不謹慎と憲法学者は言うだろうか。法律学には既存法令の解釈を論ずるものと、あるべき法制度を考究するものがある。現在の憲法学者はおおむね前者の立場だから、彼らからあるべき憲法条項を論じてもらうことはまず無理だ。
「憲法を暮らしの中に」という言葉がある。これも二つの意味があり、一つは憲法が理想を示しているものと捉え、そうなるように社会を変えていこうとする運動論である。もう一つは、国際関係を含む社会経済の状況を見据え、憲法との抵触の有無について常に確認し、解釈では対応できないと判断されるときは、国民投票を踏まえて所要の改正をしていく法制度論である。
 どこに差が出るか。例えば共同通信社が5月1日に実施したという世論調査。
https://www.chunichi.co.jp/article/463272
 報道によると9条について、改正の必要性は「ある」50%、「ない」48%で拮抗したとする。昨年同時期の調査では改正は必要「ある」51%、「ない」45%であった。今年2月のロシアのウクライナ侵攻を踏まえても改正を求める声は高まっていないというのが、記事の解説だ。
 ボクの見解では当然の結論。たびたびこのブログでも紹介するように、今の憲法は防衛戦争を否定していないとするのが素直な国語解釈。9条改正で口角泡を飛ばす前に、わが国が侵略されないよう実際の防衛力整備を進めることを国民は求めているのだから。各方面の世論調査で明らか。


 ただし国内には9条がいっさいの軍備や防衛戦争を否定しているとの解釈を強要する人がいる。そこで解釈について世論調査をする意味はあろう。その場合、質問を変える必要がある。9条を「変えるべきか否か」ではなく、9条は「改正不可の条項なのか否か」と問うべきなのか。
 いわゆる緊急事態条項も同じである。「新条項を設けるべきか否か」ではなく、「現行の公共の福祉概念を根拠とする緊急事態法制定の可否」を問うべきなのか。
 そして「不可」が国民の共通概念であることが明らかになったときには、現行憲法そのものの存否や全面改正を検討する。「可」となれば、課題の事項の改正や導入を国会で議論し、改正条項として発議して国民投票にかけるべきなのだ。
論理的に説明すれば、こういうことである。
①  現行憲法が説く「普遍の原理」に照らして、改正不可の事項であれば、国民がそれを必要とするときは、新憲法の制定あるいは1947年のように全面改正をすることになる。不可の事例として基本的人権保障などが明示されている(97条)。
②  ①以外であれば憲法96条に沿って粛々と改正の議論を進める。
③  ②の結果、国民投票で賛成が上回れば改正し、反対が上回れば改正しない。憲法制定権は国民にあるのだから、国会には国民投票を尊重する義務があり、いやしくも党利党略の低次元思惑で国民投票の機会を奪ってはならない。
 
 すでに述べたようにボクは、防衛軍備や緊急事態は憲法が容認、むしろ要請していると解釈しているから、これらについては憲法改正を必須とは考えない。国民の意思を対外的に明瞭にする意味で、改正したほうがメッセージ性あると考える程度のことだ。
 それよりも明白な違憲状態になっている条項の修正が急がれる。例を挙げれば、(A)内閣総理大臣の衆議院解散権。チェック&バランスの上で必要あるのは理解できる。しかし69条でこれを読むのは無理だ。可能になるよう改正すべきである。
(B)福祉法人、私学法人への補助金交付も89条では読めない。合憲化するには憲法条項を変えるしかない。
(C)同性同士を法律婚として承認すべきとの声があるが、憲法24条の文言では認められない。事実婚はかまわないが、法律婚とするには憲法の条項改正が必要だ。
 先の①②③に沿って整理し、必要ならばさっさと国民投票にかけて、憲法の条項整理をすべきだろう。違憲状態を放置しておいて、憲法条項に指一本触れるなというのは論理性ゼロ。子どもが駄々をこねているみたいである。


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