745正月ドラマ『相棒』で民主主義を考える
標題の元旦テレビドラマ、豪華役者の演技を楽しみました。見た人は多いでしょうね。頭脳脳明晰な右京さんの推理を楽しめます。とはいうものの民主主義国の公共電波を使っての放送です。その原則に照らしてどうかと思える筋書きはどうでしょう。
熟年探偵団という市民グループが登場します。昔、怪人二十面相に登場した少年探偵団のもじりであることは一定年齢層では説明の必要はないですね。冒頭に学生窃盗団のアジトが警察に踏み込まれる場面が出てきます。所轄警察署のお手柄ですが、それをめぐって警視庁最高幹部が緊急会議を開きます。論点は「民間人である熟年探偵団が持ち込んだ情報に頼っての摘発であったこと」でした。
「警察の支配下にない民間人が捜査に類する活動をすることは警察の権威に関わる」という怒りです。民間人に捜査依頼するとは何事かと署長処分を考えますが、熟年探偵団がまったくの無償ボランティア活動とわかると市民の反発を恐れて警視庁は方針変更します。ただし、いかなる方法を採っても民間人の捜査協力を許さない。犯人たちのアジトに忍び込んで盗み聞きした点を咎めて住居侵入罪で送検し、検察は起訴し、裁判所で有罪判決。熟年探偵団の面々は前科者になってしまいます。これは国民主権の原理に反すると考えますがいかがでしょう。治安維持も市民が主体であるべきで、警察はそれを助力する機関のはず。市民は何もしてはいけないというのでは封建時代の領主と領民の関係の復活です。
最後にもおかしな場面がありました。金塊の持ち主の政治家は右京さんといわくがあります。そのこともあって国会議員辞任を表明します。その際に右京の相棒の亀山薫が秘書である息子に言います。「キミは父親を超える政治家になれるよ」。政治家の息子が地盤を継いで国会議員になるのを当然とする発言です。民主主義国では主権者である国民が選挙で選ぶもの。世襲職業ではありません。ドラマ作者の”民主主義感”を聞いてきたくなります。
右京さんが追っている父親政治家の疑惑は殺人教唆事件。それを証明する音声データを警察は押さえたのですが、なぜか消失します。内閣情報室が警視庁のデータシステムにハッキングして抜き取ったのです。そして父親政治家を脅します。「政治理念を振り回さず、情報機関が命ずる通りに行動するならば殺人事件は不問になる」。民主主義国の国家機関が国民代表の議員を手駒にしようとする。天を恐れぬ所業というべきでしょう。民主主義反逆罪を作ってこの種のイカレた幹部公務員は終身雇用禁錮にすべきです。
右京さんは「引退しても犯罪は帳消しにならない。ボクはとことん追求する」と正論を述べます。時効がない殺人事件はもちろんですが、父親政治家が金塊の賄賂を受け取った昔の事件についてこそ追い詰める必要が有ります。政治家も1人の人間。殺人などでは一般人と公平に扱わなければなりません。しかし賄賂はいけません。民主主義の根本を壊す犯罪です。特に政治家では絶対にあってはならない犯罪です。最大jの重罪であるべきです。時効は認めるべきではないし、発見されれば親族すべて同罪として議席と公民権を剥奪する程度は当然でしょう。そのためには法改正が必要ですが、議員全体にその機運が見られないのが残念です。ひょっとしてドラマの脚本家はそれを言いたかったのかも。民主主義のあり方を考えさせるドラマでした。
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