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電動キックボード 走行の安全、十分とはいえぬ 中国新聞社説 2023.7.1

 電動キックボードの利用制限緩和に疑問を呈する論説。ボクはこの社説に基本的に賛成。規制は少ないほうがいいが、そうでない場合もある。。
 電動キックボードとは、「立った状態で乗り、電動モーターで走る二輪車のこと」。電動ではないキックボードは、こどもの乗り物として以前からある。ただしあくまでもおもちゃ。それに動力をつけ、楽に走らせることができるようになったものと思えばいいだろう。
 乗っては走らせれば楽しいと思う。ちょっとした距離を移動するには便利だと思う。だが、なぜそれを公道で走らせなければならないのか。
 車道をチョロチョ走っていれば、普通の車が追い抜きに神経を使う。接触すれば人身事故になり、車のドライバーは一生を棒に振りかねない。
 歩道を走ればもっと危ない。歩行中に後ろから自転車に追い抜かれる際に危険を感じた人は少なくないだろう。歩行者は通常、後ろを警戒していない。歩行者かキックボードか、どちらかがふらつけば事故になる。
 日本の道路はそもそも狭い。歩道も十分整備されていない。自転車専用道はほとんどない。自転車はどこを走るのか。都内では車道に自転車の絵を描いて、車道走行を指定する道路が増えている。だがそうではないところも多い。
 わが家の前の二車線道路は自転車の車道走行が指示されているが、親水公園に架かる橋の部分ではその表示がない。車道幅が狭く、逆に歩道部分が広くなっていることから、橋を渡る際は歩道を走れということらしい。
 だが、その指示がどれほど守られているか。車道を走ってきた自転車は橋の部分でも車道を走り、橋の部分で歩道を走った自転車は渡り切っても歩道を走っていく。
 社説は電動キックボードの転倒事故を紹介している。知りたいのは自転車、電動自転車と比べての、電動キックボードの事故確率。
 フランスのパリでは電動キックボードのシェアサービスが中止になったとも紹介されている。電動キックボードの無免許走行解禁がほんとうに必要なのか。
 免許返上後の高齢者などでは有効な移動手段であると社説は言う。それはよく分かる。障害者の一部は電動車いすで介助者なしに外出できるようになった。電動キックボードにも同様の社会的意味がある。利用適格者の範囲を定めるべきではないか。
 ところで電動車いすの場合は目的の場所、建物にも乗ったまま入っていくから、駐車スペース問題がないのだと思う。この点、キックボードはどうなのだろう。自動車は駐車取り締まり強化の成果で、違法駐車は減り、有料駐車場を利用するようになってきた。しかし自転車では駐輪場費用を惜しんで駅前などへの違法駐輪がなくならず、自治体の撤去作業とのイタチゴッコになっている。電動キックボードン利用者が大幅に増えた場合どうなるのだろう。キックボード有料駐輪場を作っても、料金を払ってまで利用しようとする人は多くないように思える。

社説本文
 電動キックボードと呼ばれる乗り物を、広島市街地などでも見かけるようになった。立った状態で乗り、電動モーターで走る二輪車のことだ。

 これまで「原動機付き自転車(原付き)」に分類されてきた。きょうから改正道交法が施行され、16歳以上は一部車両を運転免許なしで乗れるようになる。

 手軽な移動手段として普及が加速しそうだ。一方で、事故が相次いできた乗り物でもある。事故や交通違反を防ぐ対策が欠かせない。免許を持たない運転者に対し、交通ルールの徹底を急がねばならない。また車道や歩道を走行することから車のドライバーや歩行者に向けた注意喚起も求められる。

 法改正で新たに「特定小型原動機付き自転車(特定原付き)」と分類されるのは、最高速度が20キロを超えないなど、要件を満たした電動キックボードだ。

 16歳以上は免許不要で運転できる。車道の左側や自転車レーンを走る。ヘルメット着用は自転車と同様、努力義務となる。

 また最高時速を6キロ以下に設定すれば、自転車が通行可能な歩道を走ることもできる。

 規制緩和とも言うべき法改正によって、手軽さは一層増し、利用が広がりそうだ。

 免許を持たない人も、買い物など街中の移動や通勤・通学に重宝するのではないか。また、免許を返納した高齢者の需要を見込む声もあるという。

 ただ、運転者はもちろん歩行者の安全が十分に確保されているといえない面がある。

 というのも、普及が進むにつれ、事故が増えてきたためだ。低速車両に限るにしても、免許なしで公道走行を認めるのは、事故やトラブルの多発につながりはしないか。

 2022年は全国で41件の人身事故が起きている。昨年9月には東京都内で電動キックボードを運転中の男性が転倒し、死亡した。ことし2月にも男女が2人乗りして転倒。運転していた男性が自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)容疑で書類送検された。両事故ともヘルメットを着用していなかったという。

 特定原付きの電動キックボードも、違反は交通反則切符(青切符)と放置違反金制度の対象となる。信号無視のほか通行区分違反、酒気帯び運転、乗車中の携帯電話使用などを繰り返せば講習を受けることになる。

 しかし免許なしで乗るということは、交通ルールを十分に知らない人も運転するということではないのか。ウインカーなどの操作も不慣れなはずだ。

 これまでは「原付き」であり、ヘルメット着用が義務だったのを、「特定原付き」とする電動キックボードでは努力義務へ緩められることも理解できない。

 普及の進んだフランス・パリでも事故が増加。電動キックボードのシェアリングサービスの存続を問う住民投票で、反対が9割近くとなり、市はサービスを停止するという。海外では規制を強化する流れが見られる。

 今回の法改正で、国内の販売店やシェアリングサービス事業者には、購入者に試乗の機会を設けたり、交通ルールを丁寧に説明したりするところもある。

 だが民間頼みでは事故を防げまい。警察が交通ルールや安全な乗り方を講習する必要があるのではないか。適切な取り締まりや指導も行わねばなるまい。

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