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428なぜ外交で負けるのか

日本には外交がないとか、外交が下手だとか、しばしば言われる。それは譲れない一線の決意、覚悟がないからだ。
その一例が北方領土返還をめぐる外交交渉。鳩山一郎首相は世界地図を広げて「ソ連は領土が広いのだから島の一つや二つ」を譲ってくれと迫り、田中角栄首相は日本領有の根拠を述べ立てたが、ソ連・ロシアは相手にされなかった。先方には日本に返さなければまずいことになることが何もないから、当然だ。その後も、日本の対ロシア外交は、通用しない“ひとり相撲”を続けている。
ロシアは「返さずに日本をじらせる」ことでただ取りの利益を得ている状況にある。ロシア側に立って考えれば即座に理解できよう。領土を返せば、得られる利益が失われる。ただ損になる返還行為をした指導者は「祖国への裏切」として刑務所送りか銃殺刑になるだろう。今の日本外交は下策そのもの。
山本七平さんの『日本はなぜ外交で負けるのか』(さくら舎、2014年)を読んだが納得できる。大ベストセラー『日本人とユダヤ人』の真の著者だけあって、視点が鋭い。
自分なりにロシアの腹の内をさぐり、対策プランを考える。
プランA。ロシアは、領土を返してしまえば日本から経済支援を引きだせないと考えている。ロシアにとって困るのは、日本が領土返還の進捗と交換でなければ経済開発から手を引くと言い出すこと。シベリア以東は、人口流出と経済低迷が続いていて、中国人に占拠される危機にあると本音では思っている。中部シベリアを中国に侵奪されれば、そのさらに先にある極東シベリアや沿海州、樺太・千島はロシアの統制を離脱し、独立の道を探すしか生きる道はなくなる。
ロシアの本音がそうであれば、返還交渉を急がないことが正しい外交方策になる。我慢比べである。領有権をめぐる正論を国際社会に強烈に発信し、ロシアの非道(例えばウクライナやクリミア侵攻)を世界の最先端で主張することだ。国際的孤立や西側諸国の経済制裁圧力から、ロシアは外交的解決を求めて来るに違いない。
プランB。ロシアが極東区域の天然ガス等を日本に売らなくてもよい、日本の資本や市場は必要ない。むしろ中国や韓国に売り、両国を北方領土開発に引き込むつもりであったらどうするか。「日本は領土を諦めよ。そうすれば天然ガスを売ってやろう」と脅してくるであろう。対抗措置は、ロシアのガスがなくても困らないエネルギー計画を樹立することだ。エネルギー政策は国家戦略であり、情緒や感情に左右されてはならない。このプランで進む場合、脱炭素エネルギー政策を本気で進めることになる。再生可能エネルギーの開発促進のほか、原子力発電の増設も避けるべきではない。そしてロシア産天然ガス輸入ゼロを明確に打ち出すことだ。要は脱炭素の潮流を外交に利用することだ。
外交は日本国民の安全を確保するために存在する。脅しに屈して経済力を後先考えずに提供することではない。
何よりも重要なのは、外交姿勢がぶれないこと。日本は領土での“正論”を絶対に曲げないことを、国際社会にしつこく、しつこく発言することだ。「正義は我にあり」を1億国民の一つ覚えになるまで、国民総意で史実検証する。国民が腹の底から信じることが重要。ロシア(中国や韓国も同様)のように学校で嘘八百の歪曲歴史を覚えさせるのではない。国際法を学ばせるのだ。
日露戦争はなぜ起きたか。日本人を侮り、怒らせて、ロシアは何をしたいのか。日本人に復讐の火が点いたら、日本政府に抑えることはできないが、それがロシアの望むことなのか。民主主義国で国民世論が激昂すればどうなるかを独裁専制国家の指導者は心底恐れている。日本の政治家や外務省は、外よりも内側の国民の思いに身を置くべきだ。

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