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725新年の読書 盆暮れに何を学ぶか

 チキンを食べたり、プレゼント交換したり、あわただしくクリスマスを過ぎれば年末年始。今年はいい年だったかと振り返るには十分な時間がある。年末年始に何を読みますか。
ボクの場合はこれ。政府・文部省作成のその名も『民主主義』という書物。現行憲法の施行を受けて昭和23年に発行されている。昭和30年に角川書店によって文庫化されている。
奥付で内田環さんが次のように書いている。
「民主主義」―果たしてその意味を私たちは真に理解し、実践しているだろうか。昭和23年、文部省は新憲法の施行を受けて当代の経済学者や法学者を集め、中高生向けに教科書を敢行した。民主主義の根本精神と仕組み、歴史や各国の制度を平易に紹介しながら、戦後日本が歩む未来を厳しさと希望をもって若者に説く。普遍性と驚くべき示唆に満ちた本書はまさに読み継がれるべき名著といえる。全文収録する初の文庫本!
 
 ロシア・プーチンのウクライナへの侵略戦争、中国共産党によるウイグル・チベット・モンゴル人へのジェノサイド、ミャンマー軍事政権の暴政…。やりきれないできごとの本質は、専制主義者による民主主義弾圧として括れる。これにどう対抗し、打ち勝つか。
 中国の習近平は「民主主義にはいろいろな形態がある。中国には中国の民主主義がある」と主張しているが、そんなものはチャンチャラおかしい。文部省の『民主主義』を読めば、そのことがはっきり見えてくる。
『民主主義』のはしがき冒頭でこう言っている。
 今の世の中には、民主主義という言葉がはんらんしている。民主主義ということばならば、だれもが知っている。しかし、民主主義のほんとうの意味を知っている人がどれだけあるだろうか。その点になると、はなはだ心もとないといわなければならない。/では、民主主義とはいったいなんだろう。多くの人々は、民主主義とは政治のやり方であって、自分たちを代表して政治をする人々をみんなで選挙することだと答えるであろう。それも、民主主義の一つの表れであるには相違ない。しかし、民主主義を単なる政治のやり方だと思うのは、まちがいである。民主主義の根本は、もっと深いところにある。それは、みんなの心の中にある。すべての人間を個人として尊厳な価値を持つものとして取り扱おうとする心、それが民主主義である。
 
 次にはこういうくだりがある。
 すべての人間が、自分自分の才能や長所や美徳をじゅうぶんに発揮する平等の機会を持つことによって、みんなの努力で御互の幸福と繁栄とをもたらすようにするのが、政治の最高の目標であることをはっきりと悟るであろう。それが民主主義である。そうして、それ以外に民主主義はない
 
 そして民主主義と対置されるのが専制主義である。共産党独裁体制はそうした専制主義の一形態である。
 プーチン、習近平、金正恩などがいくら喚こうが、彼らが支配する地域に民主主義はない。ウクライナ人の敢闘を支援し、台湾の存続を支持するか。民主主義者であるかどうかのバロメーターであるわけだ。
『民主主義』では戦争をなくすにはどうすべきと書いているか。専制体制の国家の存在を認め、そうした国をも参加させる形で平和を保証する国際協定を結ぶのが一つの方法であるとする。それが国際連合であるが、機能不全であることが露呈されている。
 残される現実的方法は、「すべての国家が民主主義の制度を持つことである」という結論になる。これは現行憲法の前文とぴったり整合する。
われら(日本人)は、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている(民主主義陣営の)国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 
 中国内での人権抑圧に日本の国会が意見衣装とすると中国は「内政干渉」であると恫喝する。しかし民主主義(=個人の人権尊重)を世界に広めるのが日本国民の責務であるとわが憲法に明記されているのであるから、専制主義者の脅しに屈してはならないのである。
 護憲を声高に主張する国内の政党や政治家、さらに経済人、言論人の中に、専制主義国家の指導層にへつらうがごとき言説を吐く者が散見される。そうした人にこそ『民主主義』を読み込んでもらう必要がある。

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