焼肉の口

先日、友人と久しぶりに会い、2人で晩御飯を食べに行くことになりました。

当日になって店を決めることになり、友人が「昨日、テレビで焼肉屋さんの特集やってて、それ見てからずっと焼肉の口なんだよね」と言いました。

僕はすぐにGoogleマップを開き、待ち合わせした駅から徒歩で15分ほどの焼肉屋を見つけ、そこに2人で歩いて向かうことになりました。

他愛もない話をしながら歩いていると、スシローの前に差し掛かった時、友人が「うわー、スシローうまいよねー、寿司の口なってきたかも」と言いました。

たしかに、スシローうまいし寿司の口にもなるかぁと同情しつつも、焼肉と決めた手前、調べた焼肉屋さんに行くことにしました。

しばらく歩くと、次にファミリーマートが見えてきました。友人は「うわー、サラダチキンの口になってきたなぁ」と言いました。
いや、ファミマならファミチキが相場だろと思いながらも、焼肉と決めた手前、調べた焼肉屋さんに行くことにしました。

しばらく歩くと、セイコーの路面店がありました。友人は「うわー、時計の腕になってきたなぁ」と言いました。
時計の腕ってなんだよ、と思いながらも、まあ焼肉の口とは両立できるかと思い、焼肉と決めた手前、調べた焼肉屋さんに行くことにしました。

その後も友人は、ユニクロを見て「ヒートテックの上半身になってきた」薬局を見て「ビオフェルミンの胃になってきた」などと好き勝手言ってました。

またしばらく歩くと、国立演芸場の前にさしかかりました。中では講談をやっていたようで、友人は「うわー、神田松の丞になってきたかも」と言いました。いや、神田松之丞は真打昇進して、神田伯山になってるから反則だろ。と思いながらも、焼肉と決めた手前、調べた焼肉屋さんに行くことにしました。

なんだかんだ20分以上歩き、やっとの思いで焼肉屋につくと、なんと、焼肉屋は閉店しており、2人で落胆してしまい、友人は「うわー、骨折り損のくたびれ儲けになったかも」と言っていました。

長いことわざって実際使われると癪に触るな。と思いながらも、完全に焼肉の口になってしまっていた僕らは、帰宅の途に着いてしまいました。