たいしたことじゃないけど
実家に帰った。
実家の近くには怪しげな公園がある。
めちゃくちゃ見晴らしが悪く、なにかしらの犯罪行為が行われていても誰も気づかないであろう陰鬱な公園だ。そこから見えるのはコンクリ製の壁と薄暗い木々、そしてそれらが切り取った狭い空だけだ。
この公園を訪れると、この地域では珍しい痴漢注意の看板を拝むことが出来る。
いうまでもないが、痴漢注意の看板があるところは痴漢が発生しやすい場所だ。
禁煙の看板が立っているところほど吸い殻がめちゃくちゃ落ちてたり、ポイ捨て禁止の看板付近ほどごみが落ちておるのと同じロジックだ。
僕が小学生のときは、学校からその公園にはできるだけ行かないように先生から注意喚起されていた。
今日久しぶりにその付近を通ったら知らない間にその公園方向を指し示す矢印の看板が設置されていることに気づいた。
そして矢印の下には「あおぞら公園」という文字。
あの陰鬱な公園に新たに名前が付けられていたのだ。
なんとも皮肉である。名前を付けるにあたってコンクリートと森が作ったフレームに収まった僅かな青空がフィーチャーされたのだ。
青空もびっくりしただろう。
母から聞いた話、
もともとあった公園の名前を町内会が何故か変更しようとしたらしく、回覧板で名前を募集したところこの名前になったらしい。
しかし、母曰くこの「あおぞら公園」という名前は回覧板で応募されたもののなかには無かったらしい。うちは回覧板の回ってくる順番が最後なので、応募された案をすべて見ることが出来る。母はいくつかある案の中に「あおぞら公園」という名前はなかったという。
今、実家がある町の町内会は何人かのおっさんで牛耳られており、そのおっさんたちが餅つき大会などの催しを開いておっさん同士で楽しんでいるらしい。
そのおっさんたちがたぶんノリで公園の名前を変えようとして、回覧板で名前を募集し、何故か案にはなかった「あおぞら公園」という名前に変えた。
おそらく、人間は人生終盤になると「あおぞら」とか「かがやき」とか「ふれあい」とかを愛でなければならないようにプログラミングされている。
ともかく、これからも町内会はおっさんのノリでおっさん風に変えられていくっぽい。