葵の隠密(第二話シナリオ原稿)
【葵の隠密:第二話シナリオ原稿】
⑴第二話シナリオタイトル
藤堂高虎
⑵注意事項・略称記号一覧
◎ Ⓣ=テロップ
◎ Ⓝ=ナレーション
◎ Ⓜ=モノローグ
◎ Ⓡ=読みかた
⑶登場人物一覧表(順不同)
◎ 中根正寿丸(後の中根正盛)=本作主人公。徳川家臣(徳川秀忠小姓組)/十一歳(数え年、以下略)。
◎ 藤堂高吉=藤堂重臣(藤堂高虎養子)/二十歳
◎ 藤堂高虎=藤堂家当主(伊予国板島八万石大名)/四十三歳
◎ 島左近(島清興)=石田三成重臣(同家筆頭家老)/五十六歳頃?
◎ 島左近近習筆頭=石田三成家臣/年齢二十代頃と推定設定?
⑷原稿第二話本編
◇慶長三年(西暦一五九八年)六月二十四日/山城国・伏見藤堂大名屋敷正門前(正午頃・曇り)
曇り空の中、伏見城下町某通り。群衆の中を中根正寿丸が緊張した面持ちで歩いている。
Ⓣ「慶長三年(西暦一五九八年)六月二十四日、山城国・伏見城下・某大通り」
京都・伏見藤堂大名屋敷正門前、門扉には藤堂家の家紋「藤堂蔦」が描かれている。
Ⓣ「伏見・藤堂大名屋敷」
目的地である藤堂大名屋敷に着いた正寿丸だが、どう中に入ればよいか困惑する。
中根正寿丸Ⓜ「着いたのはよいものの」
本多正信から預かりし書状を懐から出してそれを見て思案する正寿丸。
中根正寿丸Ⓜ「先方には通してあるとは本多様が仰せられたが」
初仕事を不安に思い始めた正寿丸であったが、屋敷門前から供侍を数人連れた藤堂高吉が近づいてきて正寿丸にこう質問した。
藤堂高吉「つかぬことを聞くが、其方が、徳川家重臣・平岩親吉殿の孫で中根正寿丸なる使い走りか?」
高吉からの突然の問いかけに、心が安堵した正寿丸が受け答えをした。
中根正寿丸「おっしゃる通り、徳川家臣・中根正寿丸であります。あなたのお名前は?」
年上相手に子供ながら毅然と対応する正寿丸に好感を持った高吉が対応する。
藤堂高吉「藤堂高吉と申し上げる。文で書かれたように、律儀さが顔に出る若人よ」
Ⓣ「藤堂高吉 藤堂家重臣(藤堂高虎養子)」
藤堂高吉の誉め言葉に一礼する正寿丸。
後から来た供侍からの伝言を小耳に入れた高吉が、正寿丸との会話を打ち切り、伏見藤堂大名屋敷内へと招き入れる。
藤堂高吉「では、共に参ろうか、我が殿が直々にお待ちしておる」
高吉の誘いに正寿丸が神妙に頷いた後、屋敷内へ一緒に入っていく一行。
中根正寿丸「はい、お願い申し上げます」
◇見開き(背景図・時間・天候は任意とする)
向かい合う中根正寿丸と藤堂高虎のイメージ場面を背景描写の上で各自タイトルを挿入。
Ⓣ「葵の隠密」
Ⓣ「第二話:藤堂高虎」
◇西暦一五九八年(慶長三年)六月二十四日/山城国・京都・伏見藤堂大名屋敷・庭先(正午過ぎ・曇り)
庭先にて長槍の稽古をしている藤堂高虎と傍で見守って近侍している藤堂家家臣数名。
Ⓣ「藤堂高虎 伊予国板島八万石大名」
正寿丸を連れて廊下より庭先にいる高虎に面会を求める高吉ら一行。
藤堂高吉「義父上、徳川家より例の使いの者が参った次第であります」
長槍の稽古をやめて近侍する藤堂家小姓より、たらい皿を貰って顔を洗った上で正寿丸・高吉らを見る高虎。
藤堂高虎「よく来て下さった。さあ部屋へ共に参ろう。話は後程中で」
◇西暦一五九八年(慶長三年)六月二十四/山城国・京都・伏見藤堂大名屋敷・藤堂高虎執務室(正午過ぎ・曇り)
部屋で正座して待っている正寿丸と高吉ら。
襖を開ける形で部屋へ入ってくる高虎とその近侍達数名。
上座に座った高虎が正寿丸に口頭の挨拶の辞を述べる。
藤堂高虎「仔細は本多殿より聞いている。正寿丸とやら、書状をこちらへ渡してくれ」
高虎の発言を聞いた正寿丸が恐る恐る懐より取り出した書状を高虎に差し出す。
中根正寿丸「これでございます」
正寿丸から書状を渡された高虎は、一見して読んだ後、己の傍に置いてある季節外れの火鉢にその書状を投げ捨てて燃やした。
藤堂高虎「ふむ、左様の肚か。相分かった」
火鉢の中で書状が燃えていくのを見た正寿丸が、顔を変えて高虎に詰問する。
中根正寿丸「藤堂様、一体これはどういう御料簡か?」
この正寿丸の態度に不敵に笑い諭す高虎。
藤堂高虎「今の様子を見たところ、書状の中身は知らぬようだな。」
藤堂高虎「律儀一筋の人柄はよき宝なり」
高虎の予想外の反応に困惑する正寿丸。
中根正寿丸「それは如何なる意味ですか、藤堂様?」
藤堂高虎が上座から正寿丸の席に近づく形で、互いに相対する形で正寿丸にこう問いかけた。
藤堂高虎「未だ童の面影が顔に残る其方は未だ知る必要がない。お勤め御苦労、下がってよい」
高虎の人を喰ったかの様な対応に困惑しながら、止む無く引き下がって退出する正寿丸。
中根正寿丸「では、失礼いたします」
◇西暦一五九八年(慶長三年)六月二十四日/山城国・京都・伏見藤堂大名屋敷・某廊下(夕方前・曇り)
思案顔で廊下を歩いている中根仙千代。
傍で共に歩いている高吉が、正寿丸をからかうように次のように諭す。
藤堂高吉「正寿丸、気落ちする必要はないぞ」
中根正寿丸「えっ?」
高吉は、正寿丸の律儀な人柄を高虎が誉めた理由を述べる。
藤堂高吉「其方の前に来た使い走りは、三河武士にしては思慮が欠けた軽率者だった!」
高虎が、正寿丸の前任者の前で先述の如く密書を火鉢で燃やした際、血相を変えて高虎相手に抗議する前任者のイメージ図。
この前任者の対応に立腹して激怒する高虎のイメージ図。
藤堂高吉「共に大事を為さるのに、あんな不適合者はいないと、義父上もお怒りでさ!」
真剣に聞き入る正寿丸の顔色を見る高吉。
藤堂高吉「これに比べて、正寿丸の対応は合格点だよ。義父上もそう思っている」
不安顔から一転欣喜する正寿丸。
中根正寿丸「そうですか。それはよかった」
正寿丸の先述の反応に心を許した高吉が、からかった口調で、高虎が正寿丸に好印象を抱いた理由を示唆する。
藤堂高吉「正寿丸、使い走りたる其方は、己の身を弁え、無駄なしぐさを義父上の前で些かも振舞わなかったことがその証拠だ」
藤堂高吉が、さらに中根正寿丸にこう話す。
藤堂高吉「ましてや、大事な書状を、天下の徳川家が、其の方のような童を使い走りとして持参させるとは誰も思わんよ!」
中根正寿丸「よくはわかりませんが、褒められていたら自分としては嬉しいです」
◇西暦一五九八年(慶長三年)六月二十四日/山城国・京都・伏見藤堂大名屋敷・正門前(夕方・曇り)
伏見徳川大名屋敷へと帰宅する正寿丸とこれを見送る高吉とその近侍達。
中根正寿丸「では皆様、これにて失礼します。本日は大変ありがとうございました」
藤堂高吉「道中帰路に気をつけるように。今後ともよろしく頼む」
高吉の先の発言に深々と一礼して帰路に着く正寿丸。
◇西暦一五九八年(慶長三年)六月二十四日/山城国・京都・伏見城下町・某大通り(夕方・曇り)
時刻は夕方、スタスタと人だかりを回避しながら徳川伏見大名屋敷の帰路に急ぐ正寿丸。
その帰り道中において、伏見城下某大通りを横切ろうとした乗馬姿の島左近とその供回り数名の一行と鉢合わせした正寿丸。
島左近近習筆頭「おい小僧、前を見て歩け」
このトラブルを前に機転を利かして立ち去ろうとする正寿丸。
中根正寿丸「すいません、ではこれにて」
中根正寿丸を一目見た島左近近習筆頭が、正寿丸の服に葵の紋所を見て徳川家臣と見たのか、上司の島左近に直に報告する。
島左近近習筆頭「何だ、葵の紋所とは、徳川家の者か?島様、この者どうなさいますか」
島左近「所詮子供だ、小僧、以後は気をつけろよ」
Ⓣ「島左近(島清興)、近江国佐和山十九万石四千石大名・石田家筆頭家老、知行二万石」
乗馬状態で立ち去る左近に対して、その鋭い鷹の目の様な眼光に只ならぬ気配を察した正寿丸はその場を呆然と見送るしかなかった。
中根正寿丸「何者なのだ?あの鷹の目をした人は!」
Ⓣ「第二話:END」
あらすじ兼第一話URL葵の隠密(あらすじ兼第一話シナリオ原稿)|ssk2106 (note.com)
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