27/n シン・デプスゲージ チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解
ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。
SSJは当事業体の宣伝も兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。
デプスゲージ
たまにSSJでも「デプスゲージ」を「デプス」と説明無しに省略してたり、前提をすっ飛ばして説明しているかもしれませんが、デプスゲージとデプス、デプスの研ぎ方、使っているソーチェーンのモデル(23RMや21BPX、S85など)とコマ数、本体、枝切り、玉切り、突っ込み切りを含めて総合的に話をしないと、なかなか正体が掴みにくい存在になっています。
デプス=カッターとの高さギャップの設定
デプスは.025インチ(または0.65mm)と言われ、大多数のチェーンがそうなのですが、新品時から.030インチ(27や68)や0.45mm(71PM3)で設計されているモデルもあります。原理としては、小さいサイズのチェーンではギャップは低めに、大きいサイズのチェーンでは大きめに、となっています。これは使用される本体とのパワーバランスを加味しています(と、いうことは…)。インチをmm換算すると厳密には…というのはつまらない話ですが、スペック上は0.65mmの方が負荷が高いですし、シャシーやカッタープロフィールも加わると、ベストマッチが本体パワー1クラス分や、バーの長短±1サイズで微妙に変わることがあります。標準偏差や公差はさておき、デプスの治具も.025は.025、0.65mmは0.65mmを目指して作られているはずですので、治具とチェーンをごちゃまぜにしてると差を感じる方もいるかもしれません。
新品】デプスゲージとデプスとカッターの関係
新品時は、製造工程で研磨量のバラつきがメーカー問わずに出ます。つまりデプスが相対的に狂っていることになります。
が、「フレキシブルな刃物」ですので、新品時の出来の差が=で即不具合にはなりません(新品時の頂点の研ぎ直しとは別です。これももう一度記事にしたいところです。)。直したい人は新品でも直せば良い、という話です。ただ、左右のカッターや全てのカッターを揃えることに固執すると時間も掛かりますし、カッターの寿命も減っていき、思春期の前髪状態になってしまいます(髪の毛と違ってカッターは伸びません…)。また、カッターエンドの構造と頂点の位置関係上、正確にノギスを当てるのは困難です。挟み込む部分が金属製のノギスで、正確に測りたいからと強く閉めると、花粉の粒子より小さい大事な頂点の鋭さが消耗してしまいます。樹脂製でも閉める力で簡単に0.1mm~の測定の差が出るので、当ブログお決まりの「数値に囚われ過ぎることは禁物」です。
どれぐらいの差が出るのか気になる方は、直角三角形のサインコサインタンジェントで斜辺の角度=上刃の逃げ角は10度以下なので、底辺の長さを変化させると、一応「数値」は手に入ります。
デプスゲージと突っ込み切りの関係性
6/nの補完です。突っ込み切りの時にドライブリンクバンパー(以下DLBP)がデプスゲージの代わりに働くソーチェーンがあります(63PM3や80TXL)。見分け方はデプスゲージより後方にバンパーが伸びているか否かです。
63PM3のようなタイプでは、バンパーも削るぐらいデプスゲージを落とさない限り、突っ込み切りにデプスゲージは影響はしません(ノーズのRがDLBPが出てこないぐらい緩やかな場合は別)。DLBPがあるからデプスゲージをいつもより落としておこうとしても効果がありません。
デプスゲージの形状
カッターのセミチゼルやフルチゼル(丸刃や角刃)と同じぐらい、実はデプスゲージにも様々な形があります。それがキックバック防止=ノーズ上での抵抗であったり、チップフローに関わったり、カッターのジオメトリーとアタックアングル(6.x°)を考慮した結果であったりします。設計目的をどこに置き、チェーンの中の他の設計要素や本体パワー、バーのRも加え、トータルでどうするかで、形に微調整が加えられています。
この見出しの中に話を限ると、ショートカッターを除いて、ピッチあたりの体積が少なく、前方への傾斜がなるべく少ない方が、デプスゲージ単体でノーズ上での材との摩擦や、トータルのチップフローの観点で切削効率が良いわけです。
デプスゲージの2つのチルト
デプスゲージはトッププレート(上刃)とサイドプレート(横刃)の両方に対して、「無くては困るが、有り過ぎても困る」存在です。更に、ボディのチルトはガイドの役割をし切れ曲がりの抑制に、トップのチルトはアタック~ジャンプの間のカッターの横向きの動きの時に、材と当たる面積=摩擦が切削効率に影響します。トップ&サイドそれぞれのギャップは切削効率と目立て精度の許容度に関わります。
画像は18HXと19HXを例にした差の比較ですが、スチールとオレゴンのデプスゲージでも同様の違いがあります。
コンスタントとプログレッシブ
どちらを選択するかは、4/nのとおりに総合的に決めなければなりません。コンスタントも自分の中で目立ての基準が確立されていない内は、体感や現象から定量的に逆算しやすいという利点があります。SSJの目立てサービスでは、誤解を防ぐために、デプスゲージはコンスタントで処理します。
マル秘の目立て: スライディングデプスゲージ
デプスゲージそのもので木を切るわけではありませんが、デプスゲージを画像のように仕上げることによって、材との摩擦がグンと減り、摩擦の分のロスがカッターの働きに変換されます。つまり、デプスを落とすのとは別で速く切れます。招待を受けた目立て講習会で1度だけ披露したことがあり、特に突っ込み切りの時の評判は上々でした。このスライディングデプスゲージはガレット目立てと一緒で、一度行ってしまえば次回の研ぎ後も、ある程度の効果が持続します。スライディングデプスゲージはSSJの目立てサービスには含まれませんので注意してください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?