23/n シン・縦挽きチェーン チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解
ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。
SSJは当事業体(2024年2月スタート予定)の宣伝も兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。
縦挽きチェーン
木目に沿って切る為のチェーンです。垂直視点角(≒上刃目立角)は10度ですが、水平視点角(ダウンアングル)も付いてるので、上刃仕上角は10度以下に設定されています。通常のソーチェーンのカッターとの違いはこれだけです。F&Q方式で解説します。
通常のチェーンで縦挽きするとどうなるか
A.
縦挽きチェーンに比べて切り進みが遅く、材の切り口が波打ったりガサつきが多くなります。エンジンを高回転で回す時間が増えるので、チェンソー本体への負荷が高くなるのと、材の表面処理を行う場合はその手間が増加します。
Why.
上刃仕上角が鋭角であると、鈍角の場合に比べて繊維の切れがワンテンポ遅れ、離れ切れていない材の繊維が「私も連れて行って~」とカッターを後方に引っ張るようになります。繊維はその過程で掻きむしられます。
通常のソーチェーンでも通常作業より長い切子(切り屑)=切れ味が良い証拠が出ていますが
A.
木材に対して画像の向きでソーを入れると、切子が長くなります。切子が長いのでチェンソーへの負荷が高く、詰まってストールする確率が高くなります。縦挽きチェーンにすると切子は短く切り刻まれ、負荷を弱める為にソーを浮かす必要が少なくなります。
Why.
前項の内容に加えて、材の向き=繊維の向きに対して切り込む角度で切子の長さが自然と変わります。明確な基準や境界線はありませんが、英語では「縦挽き=Ripping」とは別で、切子の様から「Noodle(麺)」から派生して「Noodling (Cut)」と呼ばれています。日本語ではRippingとNoodlingで区別する言葉がありません。日本語にすると「麺挽き」が適当かと思いますが、口頭だと「麺」か「面」かで混乱が起きそうです。
縦挽きだと目立ての頻度が増えたような気がします
A. 繊維の強度が高いからです。
Why.
1本の材でも繊維の方向で繊維強度が変わります。縦挽きは最も強度が高い向きなので仕方ありません。
縦挽きチェーンで通常作業をするとどうなるか
A.
切れ曲がりや波打ちが起き辛くなりますが、切り進みが遅く、チェーンからの反発(≒キックバック)が頻度、程度と共に増加します。
Why.
上刃仕上角が鈍角であると、鋭角の場合に比べて上刃全体がワンテンポ早く材と接触するからです。
フルチゼルの縦引きチェーンが無いのはなぜ?
A.
上刃仕上角を縦挽きチェーンに合わせたとしても、切り口表面の仕上がりがセミチゼルやマイクロチゼルと比べて荒れるからです。縦挽きでは節に当たる確率も高く、カッターの頂点が弱いフルチゼルには不向きです。
Why.
フルチゼルはカッターを上から見た時のワーキングコーナーが無い分、カッターが横ブレしやすくなります。カッターの横ブレは頂点の摩耗も早めます。また、節は繊維が入り組んでいる為、縦挽きor横挽き(横切り、クロスカット)やカッター形状を問わず、カッターのジャンプ中の軌道が安定しないので、これもまた頂点の摩耗を早めます。
縦挽きチェーンは3/8や404しかないのはなぜ?1/4や3/8LP、325で行うとどうなるの?
A.
縦挽きは負荷が高いので大きなパワーサイズのチェンソーで行った方がメリットがあります。
Why.
小さなパワーサイズのチェンソーでも縦挽きはできますが、業界全体で小さいチェンソーに対するバーの展開やドライブスプロケットの展開が絞られています。たとえ長いバーがあったとしても高回転で長時間回すことになるので本体の冷却が追い付きません(チェンソーは空冷のみで、オートバイと比べて走行風による冷却も無い為)。そんなわけで縦挽き用チェーンの展開も絞られています。
縦挽きのスキップチェーンが404しかないのはなぜ?通常のチェーンでは404以外でもあるのに…
A.
チェンソー本体を守る為+スキップチェーンは切り口の表面が荒れる為です。
Why.
前項の内容に加え、カッターの間のリベットの数が多い分だけ、カッターは左右に横ブレするようになります。
スキップチェーンは表面が荒れるのに、縦挽き用の404スキップチェーンやハイパースキップがあるのはなぜ?
A.
1回で効率よく切る為のパワーサイズが、現行の本体のラインナップ=排気量では足りないからです。
Why.
バーを長くして1回で切り出して歩留まりを向上させる為です。左右からバーを入れると水平面を合わせることが困難になり、作業時間も増えます。また、製材用器具の構造は設計段階から2度切りを想定していません。それであれば作業全体の効率を優先して、バー長あたりの切削効率を落としても良いという考えです。通常チェーンのスキップチェーンと違いチップフローの向上ではなく長いバーで1回で切れることを優先しています。
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