【読書】『三つの石で地球がわかる』藤岡換太郎 著
地球の地殻を構成する大事な石3つに関する入門書。中学校でも習う3つの石「橄欖石」、「玄武岩」、「花崗岩」のプロフィールを詳しく解説してくれている。「世界の鉱物50」という鉱物のカラー図鑑で挫折したわたしには、3つだけ覚えればいいという提案は魅力だったので飛びついた。
まず、「橄欖石」はマントルをつくる石だ。よって地中深くにあるのでなかなか見ることはできないが、日高山脈の「アポイ岳」などプレートの衝突によって地表に露出したものを見ることができる。ロバート・ハイゼンの「炭素物語」にも登場したオマーンの世界最大(550kmに渡る)オフィオライトについても触れられている。
次に「玄武岩」ついて触れ、海洋プレートを組成する大事な石である説明をしている。陸上においては薄く広がる特質があり「富士山」の美しいフォルムはこの玄武岩の性質によるものだということだ。なるほど。
3つ目の「花崗岩」。地球の構成比では上記の2つより圧倒的に少ないが地上であるだけに我々が多く目にする石である。花崗岩マグマはゆっくりと冷えて地下水に熱を伝えるため、花崗岩を源とする温泉が多数存在する。たとえば、六甲山の花崗岩は有馬温泉を生み出した。そういえば、わたしの大好きな中房温泉は山体がほぼ花崗岩から構成されている燕岳の麓であった。
さて、3つの石について学んだ後は、3つの石をつくっている造岩鉱物、密度、結晶構造などの説明。
橄欖石=橄欖石・輝石
玄武岩=橄欖石・輝石・斜長石・磁鉄鉱
花崗岩=石英・斜長石・正長石・角閃石・雲母
中学校の授業で習ったこの結晶文化なので懐かしさを覚えるが、このボーエンの分類方法は古くなってしまったために今の中学校では教えていないそうな。古い人間の自分にはショックである。『ファクトフルネス』で世界の見方や知識のアップデートは必要だよというのはこういうことなのだ。
最終章では地球の誕生した46億年からの3つの石を絡めた壮大な歴史物語で締めくくられる。このあたりのスケール感は、日本が真っ二つに大分断されて結合していく大地溝帯の凄まじさを描いた「フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体」の著者である藤岡先生の真骨頂というべきか。
目次
序章 そもそも、石とは何だろうか
第1章 マントルをつくる緑の石―橄欖岩のプロフィール
第2章 海洋をつくる黒い石―玄武岩のプロフィール
第3章 大陸をつくる白い石―花崗岩のプロフィール
第4章 石のサイエンス—鉱物と結晶からわかること
第5章 三つの石と家族たち—火成岩ファミリーの面々
第6章 三つの石から見た地球の進化—地球の骨格ができるまで