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【読書】Tencent 知られざる中国デジタル革命トップランナーの全貌[著]呉 暁波

米中メガテック覇権の争いが顕在化しニュースで目にするようになった2020年。その渦中にあるGoogle、Apple、Facebook、AmazoneのいわゆるGAFAには馴染みがあっても、中国のBATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)は知らないという人は多いのではなかろうか。そんなBATHの中でもTencent(テンセント)に特化した形で記録された珍しい本が本著だ。

今年の8月に米津玄師がEpic Games社の「Fortnite」というゲーム内でライブしたことが話題になり、その親会社がテンセントだと知った人も多いだろう。あとは、松屋の券売機で微信支付(ウィーチャットペイ)を目にしてる人にはお馴染みかも(笑)。自分はゲーマーということもあり、Riot Gamesの「League Of Legends」が好きでプレイしていることもあって、Riot Gamesの親会社だということだけは知っていた。しかし、その親会社であるテンセントがどういった事業をしていて実績を積んできたのか、経営者である馬化腾(マ・フアテン)=ポニー・マーがどういった人物なのか知らなかった。

ジェフ・ベゾズ、スティーブ・ジョブスといった名前を聞いたら顔が思い浮かぶけれど「ポニー・マーって一体誰なんだ?」といった自分の疑問に答えてくれたのがこの本だった。ポニー・マーのルーツである潮汕人という貿易集団の歴史から、少年時代、創業メンバーとなる級友たちとの青春時代等が微に入り細にわたるまで描かれている。

今でこそ世界の時価総額ランキングTOP10に入るほどの巨大企業となったテンセントだが、創立当初の1998年にオワコン化していたポケベル事業を始めて会社が潰れる寸前になるなど驚きの(笑える?)スタートを切っている。その後は中国でユーザーが爆発的に増えたもののサーバーを購入する資金もないほど行き詰まり、さらには2000年に起きたITバブルの崩壊が追い打ちをかけてくる。そのような生存をかけた熾烈な創業ドラマが読んでいて面白い。

テンセントは今も世界に根を張る勢いで多分野に進出している。今後も目を離せないデジタルテック企業であることは間違いない。

目次

第1部 創業 1998~2004年
第1章 少年―天文好きの掲示板サイト管理人ポニー
第2章 試合開始―先の見えないスタート
第3章 生死―はじけるバブル中でのあがき
第4章 モンターネット―意外な救世主
第5章 QQショー―現実世界の倒影
第6章 上場―挟み撃ちの中での「成人式」
第2部 出撃 2005~2009年
第7章 調整―ワンストップ型オンラインライフ
第8章 MSNとの戦い―栄誉と運命と
第9章 Qゾーン―フェイスブックとは異なるソーシャルモデル
第10章 金鉱―「キング・オブ・ゲーム」の誕生
第11章 広告―ソーシャルプラットフォームの逆襲
第3部 巨頭 2010~2016
第12章 ユーザー―ポニーのプロダクト哲学
第13章 転機―3Q対戦
第14章 オープン化―新たな挑戦と能力
第15章 ウィーチャット―モバイルインタラクティブ時代の入場券
第16章 若さ―モバイルQQの自己変革
第17章 インターネットブラス―多量域エンターテイメントのループ型生態
第18章 アウト・オブ・コントロール―大自然化するインターネット

感想とメモ

・テンセントの社史としての一冊であるとともに、世界のインターネット史を振り返りつつ数多の中国ネット企業が勃興隆起しつつ争う過程が描かれた三国志的な面白味がある。

・WeChatに割かれたのが第15章のみだが、WeChatの父である華南の伝説的プログラマー張小竜がいかにプロダクトを構築していったかがインタビューも交えて書かれている。(張小竜については第8章でテンセントに買収されて以降は主流からは外れて悶々としていた)


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