2021.9.28
夜よりは昼の方が好きだ。
夜は余計なことばかり考えてしまうから、
昼の方がよっぽど精神的に健やかに過ごせる。
でも、部活で遅くなった日の夜の学校とか
深夜のコンビニまでの住宅街の路地とか
昔住んでた寮の、夜中のランドリースペースとか
そういうのは秘密が生まれそうで悪くない。
寮生活をしていた頃、洗濯機を回しに
深夜のランドリースペースへ向かうと
大概そこには誰もいない。
数分差で入れ違ったであろう誰かの洗濯物が
ぐるんぐるんと音を立てて回っている。
夜は誰にも会いたくないのに、誰かに会うかもと少し期待もする。
本当にたまにばったり同じ寮生に出会すと、
今日あったことや、バイト先の愚痴や、
今度行きたい服屋の話なんかを
ランドリースペースの隅の丸椅子に座って、
こそこそと話す。
洗濯の終わる電子音がする。
私たちは短いおしゃべりを終えて、
「おやすみなさい」と別れる。
たまたま同じ寮で暮らす、
友達というより家族に少し近い関係。
家族に近い関係なのに、寮を出た今では連絡先も知らない。
たまたま同じ時期に同じ屋根の下に住み、
同じような生活をして、
深夜のランドリースペースで世間話をして、
「おやすみなさい」と声を掛け合うだけの関係。
それなのに、誰にも言えなかったような秘密が
そこではサラッと言えてしまうこともある。
深夜の秘密が、いつのまにか私たちを家族のような距離感にする。
でも、寮を出たら他人になるんだから、
寮生活は不思議な体験だったなと思う。