『ゾンビ・オブ・ザ・ドット』から考える「カジュアルなゲーマーを相手にする難しさ」
スマホ向けに発売されている『ゾンビ・オブ・ザ・ドット』のプロモーションコードをケムコからいただいたので、本作に関して軽く記事を残しておきます。
結論を先に書くと、「気軽に遊べていいよね」の10文字で終わります。
『ゾンビ・オブ・ザ・ドット』は、『428 〜封鎖された渋谷で〜』などを手掛けたイシイジロウ氏が企画・原案・監修しているRPG。開発は『ねこあつめ』などのヒットポイントが担当しています。
ケムコのスマホ向けRPGということからわかるように、本作は極めてカジュアルなゲームです。ゾンビものだけあって限られた物資で生き残る要素があるものの、難しさはないに等しくものすごい簡単。世界観もわかりやすさを重視しています。
◆オマージュいろいろ、バトルは超かんたん
物語の舞台は70年代のアメリカ。『ゾンビ・オブ・ザ・ドット』はゾンビものから多大な影響を受けており、たとえば
・主人公のベンは警察官
・事故で入院して「28日」経って気づく
・周囲はゾンビだらけで「DO NOT OPEN」と書かれたドアがある
・ショッピングモールが出てくる
など、『ウォーキング・デッド』や『28日後…』といった有名作に対する明らかなオマージュやゾンビあるあるが入っています。
バトルはコマンド選択式のターン制で、ターンが経過するごとにゾンビが迫ってくる仕組み。とはいえ、バトルは銃を撃っていれば終わる非常に簡単なものです。
プレイヤーが絶対に先制をとれる、回復アイテムである血清はターン消費なしでいくらでも使用可能、銃弾は外れないなど、かなりイージーな仕組み。装備を更新していればボス戦なども苦戦することはなく、気軽に遊べるRPGになっています。
このカジュアルに遊べる部分はかなりの美点です。全体のテンポも良いですし、戦闘は倍速機能あり。次々とシチュエーションが変化するので、飽きにくいです。一部のマップ(ショッピングモール)などで移動先がわかりづらく、そこで足止めになってしまうのが惜しいくらいですね。
◆何がどうゾンビものなの?
問題はゾンビものとしての薄さです。「ゾンビあるある」を水で10倍くらい薄めた内容で、特に思うところがありません。
世の中にゾンビものの作品はいろいろあり、ベタなゾンビを描こうとしたものもあれば、単にゾンビを舞台装置として使ったものもあり、あるいはゾンビの新たな一面を描こうしたものもあるわけです。
では、『ゾンビ・オブ・ザ・ドット』はどうかというと、ちょっとゾンビものへのオマージュがある程度なんですよね。
簡単なRPGで、かつスマホ向けなので、遊ぶ層はかなりカジュアルなプレイヤーと思われます。ゾンビものとして気合を入れすぎてもよくないのはわかりますし、深いオマージュや文脈を理解していないとわからない要素も不要なのかもしれません。
さまざまなRPGを制作しているケムコからすれば、カジュアルなゲーマーを相手にするのは慣れていることでしょう。なので、この判断は間違ってはいないのかもしれません。
とはいえ、カジュアルなゲーマーもそこそこの刺激を求めて遊んでいるわけで、もう少し世界設定やストーリーにこだわりがあっていいのではと思ってしまいます。というか、世界設定・ストーリーに関しては何もなさすぎて語ることがないんですよね。
話すことがあるとすれば問題くらい。会話劇は奇妙なところが多いですし(ゾンビを殺すのは躊躇しないのに車を盗むのを嫌がったりする)、核ミサイルの発射を止めるパスコードのセキュリティ意識があまりにも低いのにも驚きました。
せっかくプロモーションコードをいただいたのでどこかのメディアで記事を載せてもらおうかと思ったのですが、思った以上にゾンビの味がしなくて特に書くことがありません。というわけで、「気軽に遊べていいよね」というゲームでした。