意識が生まれるとき
人の意識は、どのように生まれるのか(その5)
人の意識が生まれる前に、胎内の経験がある。
その多くは、触覚や聴覚によるものだろう。
胎内で耳は聞こえている。
母親の心臓の鼓動も毎秒、規則正しく感じている。
触覚も全身の皮膚で感じ始めている。
目覚めと眠りの周期もきちんとあるだろう。
意識が目覚めるのは誕生以後。
赤ちゃんは、生後数日で
母の匂いを識別できるという。
臭覚の発育は早い。
視覚の発達には、かなり時間がかかる。
初めは、すべておぼろ。
モノの輪郭が鮮明になるには時間がかかる。
母親の顔を認識する前に、
声や匂いや肌感覚の方が先。
味覚の発達も早い。
声を聞き取る能力は、生後すぐだろう。
5感の発達の他、
体内感覚もある。
満腹や空腹も感じる。
寒さ熱さや痛みも感じる。
一番、大きな刺激は、
自分の声を知覚することだろう。
大きな泣き声。
泣き声がどこから出ているのか、
それが漠然と分かるようになれば、
まさに意識が生まれることになる。
自分の肉体を感じるようになれば、
意識がより鮮明となる。
手や足をばたつかせて、
自分の身体に触ったり、押し付けたり、
その過程で、意識が誕生していく。
外界と自分の境界が少しづつ明らかになる。
意識の誕生前夜。
意識が生まれるのは、
個体として一つにまとまった動きをするため。
だから、鳥や動物も意識を持っている。
赤ちゃんの各部は、最初ばらばらに動く、
手足の協働はない。
視覚や触覚や聴覚など5感の発達で、
全身の筋肉の協働が可能となる。
さらに、外部の人々が、多様な仕方で
赤ちゃんに働きかけることで、
意識の一体化が進んでいく。
意識の成熟には、
記憶能力の成長が不可欠。
記憶は、脳神経ネットワークが豊かになること。
5感などの感覚系と筋肉系の連鎖が精巧になること。
つまり、無数のつながりが生まれることだ。
例えば、視覚の映像など5感の情報が、筋肉系などと
緊密につながり、記憶のエピソードを作っていく。
それが無数に積み重なるのが記憶。
体験の記憶は動物固有の能力。
すべての高等動物は記憶力を持つ。
カラスなどは特に有能。
記憶された情報と、今まさに入力された現在の情報を
合わせて、総合的に判断するのが意識の働き。
ネコなら、これから、どこに行くのか、を決める判断。
それができるには、総合された情報が元になる。
意識はこのためにある。
5歳頃までの幼児は特に、記憶力が優れている。
毎日、毎時間、体験したすべての情報を
意識下にストックしているとも言われている。
ただし、使われない記憶は、
時間経過と共に薄れていく。
つづく
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