死を待つ人生
私の父は享年94歳。
死ぬ半年前まで元気。
ピンコロリの見本のような人。
健康については全く無関心。
好きなものを食べ、飲んで、
現役時代には、二日酔いで仕事を休むのが常態。
そういう人生。
楽しみは、酒、タバコ、パチンコ(現役のとき)、テレビで野球や相撲観戦。
ごく普通の庶民の生き方。
家事も育児もお金の管理も何もしない。
自分の好きなことだけをしてきた人生。
しかし、80過ぎて、健康で元気だけど、
することがないようで退屈そうだった。
良い人生とは言えないだろう。
同級に50代で膀胱がんになった人がいる。
発病時、すでに進行していたのだろう。
治療を拒否して、気ままに生きた。
その頃、家庭料理を提供する居酒屋で
少し離れて隣席したことがある。
一人で毅然と食べていた。
親しい友人はいなかったのだろう。
孤独な生き方が似合っている感じ。
私も何度か接触しようとしたが、
親しくなれなかった。
私ではおもしろくなかったのだろう。
常に死を見つめて、
落ち着いていた。
ある意味、偉人かもしれない。
私のレベルを超える境地にいたのかも。
若者たちは、健康を気にすることはない。
健康で当たり前。私もそうだった。
老人になると、いくらか健康を気にする。
しかし、健康よりも大事なことがある。
生きがい、やりがい、生活の中身や充実。
昔の社会、老人には明確な役割があった。
子守りや手間のかかる手仕事や家事の分担。
しかし、今の社会、老人たちに生きがいはない。
できることは、公園の草取りくらい。
私の近所の老人たちを見ても、
生きがいのある人は、非常に稀。
多くは、家族との付き合い、買物だけ。
たまに、路上でおしゃべり。
生活の充実は、ないだろう。
気晴らしはたくさんあるが。
テレビ、カラオケ、旅行、外食、健康教室などなど。
老人に一番大事なのは、生きがい。
しかし、現役の頃から続けていないと、
老人で始めるのは難しいだろう。
水彩、俳句、カメラ、パソコンで日記など、
色々な趣味があるが、
気晴らし以上にはならないだろう。
中には、人生は暇つぶしだと豪語する人さえいる。
老後の人生で、大事なのは、
気晴らしではない。健康管理でもない。
健康でなくても、病気があっても、
老後は充実できる。
人生は長さではないのだ。
むしろ、長さに執着すると何も見えなくなる。
健康しかみえなくなる。
何もすることがなく、路上で押し車に座っている老人たち。また公園のベンチで。
多くは、テレビの前で。
健康で元気な老人は多い。
多くは、死を待つだけの人生となっている。
死を待つだけの若者はいないだろうに。
ガンになれば、普通、人生はより充実する。
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