人を知る

Aさんは、私より一歳上。

しかし、外見は老人。

背骨が変形。

動作も緩慢。

公務員を定年後、独り暮らし。

食事は外食。

自転車で動いている。

少し神経質な様子。

例えば、玄関の鍵も何度も点検。

今朝、ゴミ出しで、朝の挨拶。

いつも短い会話。

長い会話をしたことがない。

近隣に住む息子さんが、最近たびたび来ている。

身体の調子が悪いのかと思い。

「お元気ですか、どこか悪いところでもあるのですか」

と尋ねても。返事に、私の体調を尋ねる。

自分のことは言いたくないようだ。

私のことを

「元気いっぱい」と言う。

人は外見では分からないのに。


Aさんが働いている時、

一度、何かの用で、出向いたことがある。

課長の席にいた。

私は遠くから見ただけ。

Aさんとは、いろいろな場所で顔を合わせる。

回数は少ないが。

例えば、図書館で、スーパーで。

しかし、会話は進まない。

生活感覚が、私とはまるで違う。

Aさんの生活は、ほぼ同じやり方。

定年後、同じペースで生きている。

違うことは、全くしない。

人との付き合いもない。

自治会も籍があるだけ。

行事に誘っても、来ない。

私の亡き親父と似ている。

自炊はしないようだ。

楽しみはテレビの懐かしの歌や、

新聞を見ること。

家の掃除などは、こまめな様子。

相当に神経質。

外聞は気にする。

たとえ、私が何か話しても、

こちらの言うことを理解できないだろうと感じる。

世界がまるで違う。

同じ日本語だけど、別の言葉のようだ。

人を知るのは、

こんなに難しい。

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