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無限の飽食

1.

自己の深層に広がる空は、無限の青をたたえ、思考の風が冷たく揺れ動いている。この世界には、あらゆる欲望がただの想念から瞬時に形を得る現実が無慈悲に支配している。かつて、自己は何かを得るために内なる努力を必要とし、その過程においてのみ価値を見出していた。

だが今や、その記憶は遠い過去の影のように霞み、ただ指先一つで欲望が具現化する不条理な現実があるのみだ。

欲望が形を成した瞬間、その輝きは失われ、無味乾燥な物質として虚ろに佇む。内面には満たされることのない空虚感が広がり、心の底に冷たく沈み込んでいく。その感覚は、どれほど多くを求めようとも癒されることのない渇きを伴い、自己を苛む。

無限に欲望を満たすことが可能なこの領域において、自己はその無限の飢えに蝕まれ、次第に自己の輪郭が揺らぎ始める。

2.

自己の構造は、静かに崩壊のプロセスを歩み始めている。すべてが供給されるという保障が与えられたその瞬間、内なる営みの意義は失われ、自己はその行為を放棄していく。

かつて自己を形作っていた内的な努力の意味は消え去り、無気力と虚無が広がっていく。かつて燃えていた創造の火も、冷たく沈む虚無の淵へと呑まれ、自己はただその消滅を見つめるしかない。

「何を得ても満たされない」という感覚が、自己の表層に影を落とし、その影は心の奥深くに染み込んでいく。自己が築き上げた構造が揺らぎ始めるとともに、時間の概念さえも虚無に引きずり込まれ、崩壊の静かな音が耳をつんざく。

無為に繰り返される日々の中で、自己は漂い続け、何を求めているのかさえも見失っていく。希望も、逃避の道も見つからない。ただ、自己の奥底に潜む罪悪感が静かに膨れ上がり、自己を飲み込もうとする。

3.

自己の宇宙は、自らが築き上げたユートピアという幻想の内部で、音もなく崩れ去っていく。無限に物質を手に入れることが可能なこの世界では、絶え間ない欲望が自己を侵食し、満たされることのない渇望が底知れぬ虚無の深淵へと自己を引きずり込んでいく。

現実からの逃避を選んだ自己は、自己欺瞞の甘い毒に浸り、その虚無を覆い隠そうと試みるが、それはさらに深い絶望へと至る道である。

すべての形を得たものが瞬く間に無価値となり、自己の興味は霧のように散り、無限の空虚だけが心の中に残る。物質的な豊かさが約束されたこの世界において、自己はもはや何を追い求めるべきかすらも分からなくなる。欲望を追求するたびに、自己の内部には空虚が広がり、底知れぬ虚無が自己を覆い尽くしていく。

「これが望んでいた世界なのか?」という問いが、自己全体を覆い尽くし、その答えはどこにも見つからない。答えを求める力も次第に消え失せ、自己はその問いの中で迷い、虚無の中で揺れ続ける。だが、その問い自体が、自己の存在を抑えつける重荷となり、自己は逃れることのできない罠に囚われていく。

4.

欲望からの解放という名の虚無が、さらに深い内的な空虚を呼び覚ましている。自己は何を求めるべきかを見失い、無限に反響する問いが心の中で響き渡る。

その問いに答える術を失い、自己は無限の虚無の中で漂い続け、内面の空虚さが限りなく広がっていく。

自己の内に響く反響音は、無限の虚無へと続く果てしない旅路を暗示している。そして、その旅は終わりなき道を進み続け、自己は自らの存在を問い続けるだけの存在へと変わり果てる。自己はついに、自らの虚無と対峙し、無限の中で自己を見失い、ただ空虚だけが残された世界をさまようだろう。どんなに欲望を追い求めても、そこには救済はなく、ただ無限の苦悩が続くのみだ。

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