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小川哲 『ゲームの王国』

緊急事態宣言の期間が継ぎ足され続け帰省も諦めたお盆の終わり、気分転換にと学生時代からずっとお世話になっている美容院に行った。思い切ったピンクメッシュが入った帰り際、レジ横の本棚に『ゲームの王国』がささっていたのが目に止まった。前から題名は見聞きして気になってはいたけどなぜこんなところに、とよく分からない縁を感じて勢いのままに借りてきた。 良かった。 舞台は1970年代のカンボジア、クメールルージュによるクーデターと強硬支配という国の動乱の中で一市民にとっての現実がどのよう

    • Sun Yuan and Peng Yu "Can't Help Myself"

      近年知った現代アートの中で、これが圧倒的に強く印象に残っている。 Sun Yuan(孙原)とPeng Yu(彭禹)は中国の二人組現代美術家。この作品は2016年にグッゲンハイム美術館とのコミッションワークとして制作されたインスタレーションで、2019年にはヴェネツィアビエンナーレのメインパビリオンに出展された。 真ん中に据え付けられているのは車の製造などに使われる産業用ロボットアームを改造したもの。視覚認識センサーを搭載していて、赤黒い液体が一定の領域を超えて広がると、は

      • ボルタンスキーのこと

        昨年東京でクリスチャン・ボルタンスキーの大規模な回顧展があり、その展示を思い返しつつ図録を読んでいる。彼の経歴と作品の変遷を追っていくうちに、自分がこの数年ぼやぼや考えるようになったこととリンクする部分が多くある気がした。突き詰めていけば、育った時代背景の違いからか少し違和感を覚える部分もある。無名の人々の、歴史に埋もれていく死をどう捉えるか。 旅をしていたとき、幅広くヨーロッパ(キリスト教圏)において、顔のイメージを並べたがる傾向があることに気がついた。教会には一般人の小

      小川哲 『ゲームの王国』