感想「知性の限界」

コンテンツ消費のモチベが異常に高まり、図書館で適当にタイトルだけで見繕った1冊。
サブタイトルにあるように、不可測性・不確実性・不可知性の3テーマに合わせて、様々な哲学上の問題やその理論を解説しています。

まあまあ面白かったです。

良かったところ

新書ではありますが、大学生や運動選手、哲学史家などの様々な登場人物が設定され彼らがシンポジウム形式で雑談を行っているという体で進行するため、めちゃくちゃ読みやすかったです。
最近「ゆっくり解説」が異様な流行りを見せていますが、流行の原因のひとつに「掛け合い形式」というものがあると思います。
問題について疑問をぶつける。それについて平易な語りで解説する。聞き手が咀嚼し、応答する。という一連の流れを言語化することで読み手の漠然とした疑問を明確にすることができ、腑に落ちるという感覚に繋がっているのだと思います。
これは読み手の疑問と語り手が呈する疑問が一致していないとモヤモヤ感が残る、というデメリットもありますが、本書では(あんまり)なかったです。

扱う哲学のテーマもかなり広範に渡り、知識の整理と確認という点ではかなり有用でした。

良くないところ

なんと言ってもその特徴である雑談形式がハマらなかった!
私はよっぽど難解な文章でない限り読めるという自負があるため、逆にここまで丁寧に解説を進められると少し退屈に感じられました。

またいくつかのレトリックもひっかかりポイントでした。例えば扱っている問題の解説についてはですます調なのに(おそらく)筆者の意見でないものについては「!」や、だである調の語り、論理の飛躍など、恣意的に過激と捉えられるようになっていると感じました。
さっきまでは、だである調で批判していた反証主義者が、テーマがヘンペルのパラドックスになった途端に、ですます調で話し始めたのにはウケました。
また、カント主義者は本文最終部で僅かに、急進派フェミニストに至っては全く自らの意見を表明する隙が与えられず、そこら辺の非対称性も気になりました。意見できないなら出てくる意味あったか?

解説本なので特に目新しい知見が得られたわけではないのも非評価ポイントです。過激でも良いので何らかの新しい見地を与えてくれるものが好きなので…

哲学に関する様々な問題や視点について整理する、という点で言えば読みやすく目的にも適う1冊ではあると思います。

良くも悪くも新書という印象です。これをきっかけとして専門的知識への学びを深めていけ、という感じがあります。その点では参考資料などを当たるのも良さそうです。

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