No.004 悲しみよこんにちは フランソワーズ・サガン

今回は久里さんオススメの『悲しみよこんにちは』の感想です!
作者のフランソワーズ・サガンが十九歳の時に書いた小説ということで、若干緊張しつつ読みましたが、凄かったですね……。読み終えた直後は「は……!?え、やば、まじですご!」としか言えなかったので少し時間を置いてみました。衝撃的な小説を読むと語彙力が死ぬんですね、勉強になりました(笑)

セシルはもうすぐ18歳。プレイボーイ肌のレイモン、その恋人のエルザと、南仏の海辺の別荘でヴァカンスを過ごすことになる。そこで大学生のシリルとの恋も芽生えるが、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌが合流。父が彼女との再婚に走り始めたことを察知したセシルは、葛藤の末にある計画を思い立つ……。20世紀仏文学界が生んだ少女小説の聖典、半世紀を経て新訳成る。

出典 新潮文庫 あらすじ より

今回もネタバレだらけなので、これから読むよって方はブラウザバックすることを強く推奨します。


〇衝撃的な読後感

あらすじと被る部分も多いですが、ざっくりとストーリーを紹介します。
主人公のセシルは十七歳で、プレイボーイ気質の父レイモン、そしてレイモンの恋人のエルザと海辺の別荘でバカンスを過ごしていました。
セシルは別荘の近くで出会ったシリルとの恋を楽しみますが、そこにセシルの亡き母の旧友、アンヌ・ラルセンがくることに。彼女はとても美人ですが、どこか超然としていて取り付く島もないような印象の女性でした。

加えてレイモンのように恋愛における貞操や厳粛さや誓いといった概念を否定し、くだらないことや気晴らしばかりをしていたセシルたちをアンヌはどこか馬鹿にしているような節もありました。考え方の異なるレイモンやセシルと彼女を結び付けていたのは、仕事や亡き母の思い出だけだと思っていたセシルは、余計にアンヌの突然の来訪に驚きます。

しかも、驚いたことにレイモンとアンヌは結婚すると言い出したのです。

始めはセシルもその提案を受け入れますが、シリルと会うことを禁じられたその日、セシルはアンヌが父と自分の自由気ままな生活を壊して、完璧で幸福な物に作り替えようとしていることにぞっとします。

アンヌのせいで自分が自分を愛せなくなってしまうのではないかという不安、この先のアンヌとの生活への恐怖、そして、父を取られたような複雑な気持ち。

それらに背中を押されるように、セシルはレイモンとアンヌの結婚を阻止しようと動き出します。

セシルは結果として捨てられてしまったエルザと恋人になったシリルを使って、父の恋愛感情をアンヌからエルザに移そうとします。


この過程は読んでるだけで、血の気が引いていくような高揚感に襲われて、うまく言葉にできませんでした。ここだけ詳しく書けないのもあれですが、すみません。心が震えるっていったらいいのかな、でもそんな感じです。

そして、セシルの計画は最悪の結末を迎えます。
レイモンはセシルの誘導に見事に嵌り、エルザにキスをして、それをアンヌに見られてしまいました。怒って帰ってしまったアンヌに謝ろうとセシルの提案でレイモンが手紙を書こうとしたその時、アンヌが事故を起こし、崖から車で転落したとの一報が入ります。


本当に鳥肌が立ちました。
どんでん返しとは少し違うけれど、この驚愕と恐怖はうまく言葉にできないです。セシルの心情の移ろいが細かく描写されているので、若さ故の感情の激しい起伏みたいなのがすごく刺さって、衝撃的でした。

最後のセシルとレイモンが元の自由気ままな何にも縛られない恋愛を生きているのはそれ以外考えられないラストだったと思います。


きっとこの先の人生でもう二回くらいは読み返す気がします。
オススメしてくださった久里さん、ありがとうございました!

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