フリーランスになったことだし、ちょっと今までの自分について語ってみる(中編)
前回からずいぶん間があいてしまいましたが、続きを書きます。
前編はこちら
そう、2019年4月21日、この日は私の覚悟が決まった日。人の感情とは浮き沈みがあったり、ときに長続きしなかったりで、それを忘れそうになることもありますが、「スリランカのために何かしたい、せねばならない」という覚悟は、今もスリランカ旅行業という形で続いています。
副業でスリランカ専門の旅行業をはじめる
2019~2020年頃、スリランカに行きたい日本人観光客向けに、旅行サービスを提供する準備を始め、その後しばらく副業として行っていくことになります。事業をはじめた理由をお話しましょう。
なぜスリランカか?
1.スリランカが好きだから
スリランカの好きなところを具体的に言葉にすると陳腐になってしまうので、うまく伝えるのが難しいといつも思うのですが、肌に合う、という言葉が一番しっくりきます。(ほかのスリランカ好きの方々もそう言われる人は多いです)
あとは、①文化、②自然、③ごはん、何より④あったかい人たち、というのが4要素です。直接聞きたい(知りたい)人はご連絡ください。まずは現地に行くのがおすすめです!
2.好きではないことを10年間仕事にしてきた苦しさ
「好き」というシンプルな理由で旅行業をはじめた背景には、生きるために好きでもない職業や仕事内容を選び、10年間働いてきた苦しさがありました。お金は安定的に入ってくるし、周りの人たちにそこそこ恵まれてもいる。でも、極論、「何のために生きているんだろう?」というモヤモヤした自分への問いかけを、30歳くらいからずっと持っていました。これだ!と思ったことを、好きなことを仕事にしたらどうなるだろう?そのとき自分は何を思うのだろう?という実験をしてみたくなったのです。
今書いていて気づきましたが、会計関係でも、もしかするとスリランカに関する仕事はできたかもしれませんね。これからはそういうことも視野に入れてみるのもいいかな。
なぜ旅行業だったか?
1.既存サービスへの疑問
私が初めてスリランカに行ったときは、とあるドライバーの紹介業者を使いました。
何度かスリランカを訪れるうちに、おおよその物価水準というものがわかってきます。そしてどうも私が支払っていた料金では、彼らドライバーの生活をまかなうのに十分ではないのではないか?果たして彼らは労働に見合う適正な対価を得ているのだろうか?という疑問が大きくなりました。そこから生まれたのが私たちのミッションです。
なので、ジャスミンツアーズは旅行者と、ドライバーを同じくらい大事にしています。
他にも、自分たちならもっと良い旅行サービスができるんじゃないか、と素人ながら(素人だからこそ)思うことがありました。お客様一人ひとりの興味に可能な限り寄ることです。
私は、お客様の今までの旅のしかたやお好みから、120%頭を働かせて、スリランカでの滞在が最も充実した体験になるように旅程をつくっています。もちろん、無理のない移動となるよう、スリランカ側とも必ず相談します。担当ドライバーにもお客様のお好みはわかる範囲で伝えます。なので、私たちにはモデルプランはあっても、パッケージプランはありません。
このような仕事の仕方をしていると、今の体制では数を多くこなすことが難しいのですが、それなりの金額はかかるけれども、満足いただけるサービスを提供していると自負しています。
私たちらしい仕事に評価をいただいたお客様の声はこちらです。
2.サービス業ならば自分でもできる気がした
1.のような前提なので、正直なところ、スリランカにお金が落ちるものであればなんでもよかったです。
スリランカ関係で日本人で起業している方も多くいます。一般的に、ものづくりは国の安定的な経済発展には最も効果的と理解しています。スリランカでスポーツウェアを作って日本で販売しているアパレル会社を立ち上げた方もいらっしゃり、私はその方をとても尊敬しています。
ですが、ものを作って売るとなると、人数も先行投資もかかります。サプライチェーンも長く、その分関係者も増えます。一度走ってしまったら、途中で簡単にやめることもできない。
他方、自分のキャリアである監査・ITはいずれもサービス業、いわゆる虚業でした。自分のバイタリティと体力のキャパシティを考えても、ものづくりをできる気がどうしてもしなかった。なので自分と現地のドライバーさえいればできる旅行業にしました。
スリランカでものづくりをしている企業さんは規模にかかわらず、とても尊敬します。
3.信頼できるビジネスパートナーに会えた
スリランカ現地の代表で、多くの案件をこなしてくれるタリンダの存在も、旅行業を選んだきっかけです。経営という意味では、むしろ彼のほうが起業家精神に富み、私はサポート役です。ドライバーたたき上げで実務をよく知るタリンダと、旅行はもっぱらする側だったけど経営の知識やお金の計算ができる私たち2人の共同経営(今書きながら共同経営であることに気づいた)で成り立っているのがジャスミンツアーズです。
ミッションやサービスコンセプトの実現についても、折に触れて会話しながら確認しています。
なお、当たり前ではありますが、私たちはドライバーの質にはこだわっています。彼らは単なる運転手ではなく、ジャスミンツアーズのサービスコンセプト「スリランカにいる友人が案内してくれるような旅」を実現できるような、スリランカのあるがままの姿を語れるストーリテラーの役割を担っています。
テロの後のスリランカ
テロが起きて、観光客ががくっと減ったスリランカ。少しずつ回復していたところに追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスのパンデミック。スリランカの観光業のGDPへの貢献は6%程度ですが、外貨の獲得の重要な役割を担っていました。観光業が打撃を受けたことや海外在住者からの送金が減少したこと等が直接的な引き金となり、2021~2022年の経済危機に陥ります。その後のIMFの支援や、中国や日本などの国からの資金投入もあり、現在は回復傾向にあります。それでも資源や有力な製造業を持たないスリランカの経済は、もろい地盤の上に成り立っています。
驚くべきことに、現地の物価水準はコロナ前の2~3倍に上がり、以前はふつうに暮らせていたいわゆる中流家庭でも生活が苦しくなってきていると聞きます。将来のみえない若者の多くは、コロナが明けて海外に出稼ぎに行きました。私がお世話になったドライバーたちも、有能で若い人ほど、海外への活躍の場を求めて出て行ってしまう傾向にあります。
以下は私が書いたスリランカ物価水準の推移についての記事です。
コロナ禍で、副業の準備と本業の両立、そして学生に
さて、パンデミックの間、私は何をしていたかというと、旅行業開業のための資格(総合旅行業務取扱管理者)を取得したり、旅行業登録をしたり、有り余った時間とエネルギーを消費するためにとある経営大学院に入ったりもしました。
副業をはじめることもあり、仕事は稼働の読めない社内ベンチャーから、隣の部署に移動しました。ポジティブな理由だけではなく、マーケティング・営業の仕事内容がパンデミックで大きく変わり、心身ともに疲弊していたのも一因です。
移動後は、クラウド型の会計システム開発や運用の技術者や管理者が所属する部署で、内部統制の構築支援を行っていました。具体的には、SOCレポートを取得するための外部監査の対応や、情報セキュリティに関するISO27000番台の認証取得のための事務局の仕事がメインでした。
SOC(受託業務に関する内部統制)レポートは耳慣れない方が多いと思います。おおむねIT監査の領域に位置するのですが、どのようなもので、世の中にどのように役立っているのかなかなか説明が難しいです。最近は特に会計監査の手続上でも取得が推奨されており、世の中のニーズは高まってきています。当時、広報担当者と苦労しながら書いたプレスリリースがこちらです。
この部署でも上司に恵まれました。私がスリランカ好きであることを知っている方で、その片手間でもいいから、と(直接的には言っていないが暗黙に)いうことで、会社員としては破格なほど自由に働かせてもらいました。(もしかすると完全自営業の今より自由だったかも・・)仕事の進め方なども話のわかる上司で、とても感謝しています。これから旅行業が大きくなるとして、人をマネジメントする壁に当たったときにはこの方を思い出し、相談すると思います。
経営大学院も入った価値は大いにありました。会計士の知り合いからは「なにを今更」と鼻で笑われましたが・・まあ確かに会計士や税理士はあまりいなかった。士業で多かったのは医療関係者。
自分がやりたいことを言い続ければ、誰かは反応を返してくれること
旅行業の頼れる先輩を見つけたこと
この2つが大学院に行って最も価値のあったことです。座学で学んだことも各所で役立っていますが・・ちなみにアカウンティングとファイナンスの成績は(も)よくなかったです。
自分がやりたいことを言い続ければ、誰かは反応を返してくれる
パンデミックのさなか、旅行業登録はしたものの、実績はゼロ。いつ海外旅行が再開されるかもわからない。その中でも、自己紹介でスリランカ旅行業について発言し続けたところ、興味をもってくれて、個別で話を聞いてくれる学友が何人もいました。とりあえず面白がってくれるだけでもありがたかったし、アドバイスもくれてとてもありがたかったです。「やめるのはいつでもできるから、とにかく考え続けてやってみよう」と打ち合わせで言葉をくれた人がいました。それは今もお守りになっています。
旅行業の頼れる先輩を見つけた
観光業の人たちは土日や夜間に仕事があることが多いからなのか、大学院には少なかったですが、その中でも頼れる人を見つけて、開業前から今に至るまで、困ったことがあるたびに相談しています。深夜や、3日連続で通話して相談に乗ってもらったこともあります。先輩方の協力なしでは、未経験の旅行業をこれまで到底続けてこられなかったと思います。
お手間をかけているのにもかかわらず、成長を喜んでくださっている面もあるようで、その方々のためにも続けられる限りは続けたいです。
またまた長くなってしまいました。次で終わると思います。
後編はこちら
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