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睡眠を解き明かす 〜Solving for sleep〜

SRIのヒューマンスリープリサーチプログラム、現代の「睡眠問題」に対処する画期的研究を実施

「不安を感じている人がいたら、すぐに『食事と睡眠が必要よ』と言います。この2つは健康的な生活のための大切な要素です。」 — Francesca Annis

現代は、まさに「睡眠不足社会」です。米国では成人の35%超、高校生の68.8%が、推奨とされている睡眠時間の7時間を毎晩下回っています(参考リンク:下部1)。

「不十分な睡眠」は、記憶障害、神経過敏、肥満、糖尿病、うつ病に至るまで、様々な症状の原因であることがわかっています(参考リンク:下部2)。そして、睡眠不足の原因については、ストレス、テクノロジー、カフェイン、アルコール、睡眠の質を下げる習慣など、ますます詳しくわかってきました。しかし、「睡眠不足」の結果と原因について多くのことがわかった今でも、これまでの20年間で睡眠問題の影響を受ける人々の数は増え続けています(参考リンク:下部3)。

その理由は何でしょうか?

1番目の理由は、「睡眠」は研究が非常に困難です。研究者はここ数十年で睡眠の背景にある科学的知識を劇的に進歩させましたが、私たちがまだ知らないことは数多くあります。2番目は、私たちの文化が進化を遂げるにつれて、「不十分な睡眠」に寄与する要因(ソーシャルメディア、労働時間の長期化、ストレスレベルの上昇など)も進化しています。そして3番目は、さまざまな新技術が睡眠問題の解決に役立つ可能性を示していますが、その用途と有用性を完全に理解するにはさらなる研究が必要なのです。

「睡眠研究」はSRI Internationalが重視している分野です。当社のヒューマンスリープリサーチプログラム(Human Sleep Research Program)の科学者は、多くのさまざまな集団と諸条件の元で実証研究を行っています。その例としては、青年期における睡眠と脳の発達的変化に関する画期的研究、中年女性の睡眠障害におけるホットフラッシュとホルモンの役割、不適切なアルコール摂取における睡眠障害、不眠症の病態生理学などがあります。これらの研究の成果は100を超える査読論文に掲載されています。
当社は現在、健康において「睡眠」が果たす役割と「不十分な睡眠」に寄与する要因や、さまざまなグループ(若者、閉経期の女性、高齢者など)の睡眠改善に役立つ複数のテクノロジーについて調べています。

以下は、当社のチームが発表した最新の睡眠に関する発見と提言の一例です。

ストレスが青少年の睡眠にどのように影響するか(Sleep Health、2020年7月)

• 概要:当社のチームは、「女性」であることが青年期からの不眠症発症の強力な危険因子である理由を特定するための調査を実施した。SRIのNational Consortium on Alcohol and Neurodevleopment in Adolescence(NCANDA:青年期のアルコールと神経発達に関する全国コンソーシアム)の睡眠研究に参加している106名の健康な青年と協力し、女子対男子でストレスが睡眠をどのように妨げるかを調査した。男子と女子の両方でストレスが睡眠と自律神経系(ANS)の活動に影響を与えている一方、女子は自律神経系(ANS:Autonomic Nervous System)の変化が大きく、男子よりも睡眠特有のストレス因子に対して脆弱である可能性があると分かった。

• 結果:これらの知見は、不眠症の心理生理学的根拠を判断し、その誘発・促進要因の特徴をつかみ、最終的に対象を絞った治療方法を開発するのに役立つ可能性がある。

仮想現実ツール(VR機器)と呼吸法は青少年の睡眠改善に寄与するか(Sleep、2020年8月)

• 概要: この研究では、没入型の仮想現実テクノロジー(VR)とゆったりとした呼吸が、高校生の睡眠改善に寄与するかどうかを評価した。29人の生徒にこのような方法を適用した後、眠気の増進、覚醒の低下、個人が眠りにつくまでの時間短縮に役立つことが分かった。これは、すでに不眠症に陥っている学生と、そうでない学生の両方に当てはまった。

• 結果: これらの結果は、VRテクノロジーと呼吸リラクゼーション法の組み合わせが、10代の不眠症やその他の睡眠障害を治療する新たなツール(家庭での利用に適したツール)となる可能性を示唆している。

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夜間の飲酒は成人の睡眠関連の心血管機能にどう影響するか(Sleep、2020年7月)

• 概要:アルコールが睡眠に負の影響を与えることは知られている。この研究では、就寝前の適度な(中程度の)アルコール摂取が睡眠中の心血管機能に影響を与えるかどうか(および、影響の程度)の明確化を試みた。26人の健康な成人を、それぞれに「アルコールを与えない」、「1~2杯のスタンダードドリンク」、「3~4杯のスタンダードドリンク」を与えた後に評価した(スタンダードドリンク:純アルコール12.5ml)。研究結果によると、就寝前のアルコール摂取は(中程度の量であっても)、睡眠中の心血管機能にさまざまな方法で影響を及ぼすことが分かった。

• 結果:夜間のアルコール摂取が有する潜在的な心血管リスクの評価にはさらなる研究が必要だが、この研究は「中程度の」飲酒でさえ睡眠中の心血管回復に悪影響を与える可能性があることを示唆している。これらの知見により、「中程度」に分類される男性のアルコール摂取量を減らすことを推奨する事は、最近の2020年食生活指針諮問委員会の科学的報告書(2020 Dietary Guidelines Advisory Committee’s Scientific Report)で特に重要性が高いとされた。

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消費者向けの睡眠テクノロジー(Consumer Sleep Technologies)を利用した睡眠研究の方法について(Sleep、2020年9月)

• 概要:新しい睡眠追跡デバイス、特にフィットネスウォッチなどの消費者向け睡眠テクノロジー(CSTs: Consumer Sleep Technologies)は研究や医療の現場でますます利用が進み、睡眠の研究を向上させる大きな可能性を持っている。しかしながら、これらの技術の精度と信頼性はほとんど未知数である。SRIの科学者は、研究者が特定のCSTのパフォーマンス評価に活用できる標準化された段階的なガイドラインを開発し、オープンソースコードを通じてこれらのガイドラインを幅広く利用できるようにした。

• 結果:新たな指針は、睡眠研究におけるCSTの利用を評価する研究を標準化・向上させ、CSTが有益であることを証明した状況でのCST採用の加速に寄与する。

当社はいつか「睡眠の問題」を解決し、何百万もの人々がより健康で幸福な生活を送る手助けをしたいと思っています。SRIのチームは、世界中での実現を支援するべく尽力しています。

当社の取り組みについて、詳しくはこちら(https://www.sri.com/ja)をご覧ください。

SRIのヒューマンスリープリサーチプログラムはFiona C. Baker博士の主導でMassimiliano de Zambotti博士(睡眠技術リーダー)、Devin Prouty博士(臨床リーダー)、Ian Colrain博士(エキスパートアドバイザー)が参加し、博士研究員(Dilara Yuksel、Elisabet Alzueta、Orsolya Kis)と研究助手チームの支援を受けています。

Massimiliano de Zambotti博士は、同氏とヒューマンスリープラボの研究である「没入型VRとゆったりとした呼吸法を組み合わせて就寝時のリラクゼーションを促し、青少年の総合的な睡眠の質を改善する」という研究についてMedscape Medical Newsに語っています

本文の内容は著者が単独で責任を負うものであり、必ずしも国立衛生研究所の公式見解を表すものではありません。

[本文中の参考リンクについて」

1. https://www.cdc.gov/sleep/data_statistics.html
2. https://www.nichd.nih.gov/health/topics/sleep/conditioninfo/inadequate-sleep
3. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4763609/

著者:Fiona C Baker(シニアプログラムディレクター、ヒューマンスリープリサーチプログラム)、Massimiliano de Zambotti(リサーチサイエンティスト、ヒューマンスリープリサーチプログラム)[SRI Biosciences、Center for Health Sciences]

編集/管理:熊谷 訓果/ SRIインターナショナル日本支社

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