組織風土改革日報№.2_終わりと始まり
①前回のあらすじ
某電子部品メーカーで、プロセスエンジニアとして働く私(キタ/北)。
業務上の思いがけないトラブルが原因で、不安障害となってしまうが、コーチングに出会い、少しづつ自分を取り戻しつつ、さらに、キャリアコンサルタントとのセッションで、完全覚醒!
自らもキャリコンを目指す事を決意しつつ、職場へのキャリコン制度を提案したところ、自律分散型組織の企画リーダーを任されることに。
どうなる。わたし。
②それぞれの異動
『キタさん、異動先決まったから。』
だまだまだ寒い2021年3月。
日本の建築構造なら、全てのドア枠に頭をぶつけそうなほどノッポな男が、高いのか低いのか良く分からない声で言った。
ハスキーな声質が、かなり低い地声の上辺を擦って、細かく空気振動した分高音として伝わってきた様な感覚もあった。
「そうなんだ、どこなんですか?」
『んーー。』
答えを直ぐに言わないこの男は、私の後期プロセスエンジニア時代、上司(係長)を務めくれた男。デカくて、ごきげん。簡単に言うとそんな人となり。同い年だった。
(彼のおかげでちょっと元気になったといっても過言ではない。)
「人事課じゃないよね。自律分散型組織は製造部の企画なんだから。さては新設の課?組織風土を取り扱う課なんてあったっけ。。。」
『んーーーー。』
引っ張るねぇ。。。
隙あらばボケる。という彼のおかしな特性を理解していた私は、てっきり飛び切りのジョークを考えあぐねているのだろうと高を括っていた。
『生産技術課だわ。』
「・・・え?」
生産技術課。平たく言えば、製造現場で稼働する機械系のメンテナンスや設備の導入開発を行う役割。
「人じゃなくて機械じゃないか。」
『そう。不思議だよな。なんだか、そういうことなんだよね。』
えーーー。。。
それから数日もしないうちに、社内メールが届く。
『管理職異動のお知らせ。』
そこには、この異動のキッカケを作った部長の名前が書かれていた。
は?
慌ててメールをしてみる。
お忙しいとされる割には、すぐに返事が返ってきた。
『異動する事になりました。後はあなたの異動先の課長と詰めて下さい。』
・・・
えーーーー!!!
何が起こってるのか良く分からなかった。
全てが想定外の流れだった。
ただ、
わー。なんか、、、
しっちゃかめっちゃかで楽しい✨
本来のポジティブさを、私は完全に取り戻していた。
ふとクランボルツの計画的偶発性理論を思い浮かべた。
「キャリアの8割が予期しない出来事や偶然の出会いによって決定される」
予期しない出来事を、自ら行動によって創り出し、ポジティブに受け止め、偶然を意図的・計画的にステップアップの機会へと変えていけよ、行けばわかるさ。
という理論であり、必要なスキルは以下5つと言われている。
好奇心:新しい学習機会を模索し続ける
持続性:失敗しても、努力し続ける
楽観性:新しい機会は必ず実現すると、ポジティブに考える
柔軟性:従来の信念や思考行動にこだわらない
冒険心:結果が不確実でも、行動を起こす
正直この理論はピンとは来ていなかったが、ここまでの私の経験を鑑みるに、どうやら正しい。
思わずキャリア理論と自己整合性を内省しつつ、
そんなドタバタの幕間であった。
③チーム結成!
『北君、宜しくなぁ』
そう声を書けてきたのは、新しい組織で私の上司となる、林課長だった。
「はい、こちらこそ宜しくお願い致します。」
『部にクリエイティブさがもっと欲しいねん。期待してますぅ。』
挨拶がてらビジョンを伝える。ゴリゴリの関西弁だと何故か違和感が無い。
『チームメンバーと顔合わせしよか。』
組織風土改革。さぞバリエーションを備えた組織になるんだろう。
さぁ、どんな人たちかな?
そうやって、会議室に入ってきたメンバーは、、、4人。
私も含め全員おじさんだった。初老の私が一番若かった。一回りも。
ドアから吸い込まれたおじさん達は、適切なディスタンスを取りながら集合し、瞬く間に低密度のおじさんの塊が出来上がった。
課長:林さん(メガネでスラリとしたスタイルの、アイデアマン)
係長:南さん(メガネでスラリとしたスタイルの、マネジャー)
同僚:山下さん(色黒ハッキリの顔立ちで、製造経験豊富)
私 :キタ
『とりあえず自己紹介しよかぁ』
林さんの一声で、おじさん塊の一部づつが、順番に喋り始めた。もちろん私も。
「北と申します。色々あって今ここに立っております。キャリアコンサルタントの養成講座に通っておりますので、そういった対人支援のスキルや知識を活かしていこうと思っています。宜しくお願い致します。」
『あぁ』
拍手ではなく吐息での歓迎だった。
私は思わず吹き出しそうになるのを堪えるのに必死だった。
私は兼ねてから気になっていた事を問いかけた。
「ところで、なぜ生産技術に組織風土の機能を持ったんですか?」
『あぁ、それはな・・・』
林さんの説明によると、概ね以下2つの理由であった。
・自律分散型組織の企画は、異動となった部長から林さんに委ねられた為、便宜上、林さんが管理している組織下に置いた。
・かつてIT系の新組織を立ち上げた際、南さんがリーダーとして担い、実績があった。
なるほど。そういう経緯があったのか。とまぁ概ね予想通りではあったが。
『ところで、山下さんはどんな経緯やったん?』
『いや、よくわかりません。』
一瞬ザワッとした反応が塊の中心に生じたが、元々部長付で活動されていた流れがあるのだろうという事で、一旦全員が腹落ちした。
そうやって、一通り暗黙知を形式知化したところで、おじさんの塊は分解した。
実にシュールな時間だったな。
実際には普通の事をしただけなのに、あまりにも全員が組織風土に関して無知だったため、そんな印象があったのかもしれない。
水を飲んでから、自席に腰を据えた。
さぁ、何から始めようか。
日報③へ続く。
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