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組織風土改革日報№.7_教えて嘉村賢州さん。

①前回のあらすじ

2021年4月から自律分散型組織の企画運営リーダーとしてアサインされた私(キタ/北)
組織管理メンバーとの組織開発議論から、課員メンバーとのセッション企画を実施し、何となく、自律分散型組織の重要性と実現の難しさを実感。
そんな最中、コーチング講師としての依頼が上長によってもたらされる。
まるで運命の歯車が回りだしたかのようだった。
ただ、私は一抹の不安が拭えないでいた。
まだ、大事な事に、自分なりの答えが出ていない。。

②はや1カ月。未だ答えは出ず。

自律分散型組織の企画推進リーダーにアサインされ、組織異動から1カ月たった2021年5月。

学習、整理、議論、入院、対話と、濃密な1カ月で、組織開発の何たるやが、徐々に見えつつあった。

けれども、ずっと不安を感じていた。

実際には、未だ以下の問いに自信を持って答えれる準備が出来ていないのだ。
『自律分散型組織って結局どんな組織なのだろうか。』
私はマダマダ偉そうに語れる立場にはない。
その事を肝に銘じた。

ティール組織から学べたこと。
ウェビナー参加で得た情報。
過去の経験を掘り起こして、見えている事柄。
将来のありたい姿。

その上で、

組織風土って何だろう。
組織開発はどうやるのか。
自律分散型組織って製造に必要なのか。

この辺りに自分なりの解を求め、今日もウェビナーに参加する。

そこで、想いもよらない出会いが訪れる。
(日報③末文の回収となります。)

③その人の名は。

仕事が終わり、帰宅後のtoDOを済ませ、PCに向かった。

忘れかけていた『ティール組織』というタイトルのウェビナー(雑談会)に参加する為である。

定刻、PCモニタには男女各2名の計4名が、均等なサイズに割り付けられて映し出された。
私から見て左上の女性が、軽快に喋り出す。

『はい!皆さんお集り頂き有難う御座います!今日はティール組織という事でえー、このメンバーと雑談?ははっ、お話します~。皆さんも一緒どうぞ~』

どうやら、リスナー参加型で、ティール組織というお題でアイデアを伝え合う会の様だ。

画面の4人が順繰り自己紹介を始めた。皆さん何かしらのエグゼクティブだった。私は心の中で、自己紹介した。
ペコリ。こんばんは。

左上さんが、さらに喋る。
『えー、本日はなんと!素晴らしいゲストが来てくださってます!!ミスターティール組織、タムラテンシューさんです!!』

よく聞き取れなかった。

「いや、誰やねん。」

地元知名度100%の、無名の芸人を、自信満々に紹介された感覚だった。

画面に5人目の男性が映し出される。
若干神経質そうな、生真面目そうな男性が、日本語で挨拶をした。
ひらがなで”@かむら”と書かれていた。
カムラさんか。タムラさんかと思ったぜ。
ペコリ。こんばんは。

ボクシングは、強者がリングの中心に立ち、弱者がその強者を中心にリングをセカセカと動き回る。確か”はじめの一歩”か何かで読んだ事がある。

リングネームを呼ばれて登場した5人目の、その人を中心に、伺うように最初の4人が問いかけを行っていた。多分この@かむらは、なかなか凄い人なんだろう。

その内に@かむらさんが言った。

『先日ラルーと久しぶりに会って、、、』
ラルー?あぁティール組織の著者である、フレデリック・ラルーさんね。
ラルーさんと繋がりのある人なんだ!すげぇ~。。。
そう思いながら、ティール組織の本を手に取り、フレデリック・ラルーという文字を確認した。

ん?

んん?

嘉村賢州 解説

えーーーー!!

まさか!!
かむらって、嘉村?カムラケンシュー??
この嘉村賢州!?

良く分からないが、胸が高鳴った。
中庸が私の特性とはいえ、興奮を抑える事は出来なかった。
この高揚感は、映画『君の名は』で三葉と瀧が異なる電車ですれ違った、あの名シーンぶりだ。

私は画面の嘉村さんに向けて、深々とお辞儀をした。
カメラはOFFだった。


④崩落と再建。

嘉村さんは、4名のリスナーに変わり果てた主要メンバーの問いに、実体験を交えながら、しなやかにお答えしていた。

私は、キャリコンの勉強で使ったキャンパスノートの余りページに、汚い字で山ほどメモをした。

嘉村さんの言葉は、逐次私の胸を打った。

『ティール組織って、成ろうとして成れるものではないんですよ。気付いたらなっているものなんですね。10年掛かります。10年後振り返った時に、いや~我々ってティールだったよね~。という姿が、正しい姿なんです。』

『ティール組織や自律分散って、HPに大々的に謳っている企業さんって、いるじゃないですか。ラルーが本を出したのは2014年なので、まだ10年経ってない。だからどの企業も本当の意味で、実現できてないんじゃないかなぁと思います。なので、日本では達成率ゼロの組織論だと私は思ってます。』

わーーー。
この1カ月間のINPUTが、自分の中で崩れていく。
しかし、同時に彼の言葉を具に拾いながら、脳内で組み立てを始めた私は、30分ほど彼の話を傾聴しつつ、何となく一つの解を導いた。

『自律分散型組織への変革は、一つのアイデアであり、動機に過ぎない。
結局は自分達が”どうありたいのか”を共有し合って、自分達で組織の形を作って行く活動だ。という事。
自律分散型組織そのものを目指した瞬間に、意味が変わってしまうもの。』

一通り組み立て終わった、この新しいアイデアが、嘉村さんと同じ理解であるかを、確かめたくなった。

ついに私がカメラをONにし、自己開示する時が来たのである。

⑤教えて嘉村さん。

順次色んな方への質問とアイデアが繰り返されている中、ちょうど質問が途切れた。
今こそ!
マイクとカメラをONにする。

「質問宜しいでしょうか?キタと申します。」
『はい~キタさん。えーっと、あ、はいキタさん、どうぞ~』
左上さんが、私を捉えた。

「本日は素晴らしいディスカッションを有難う御座います。私は製造現場で働いておりまして、上司から自律分散型組織を作れ!!と言わまして、何とかならないかという想いで、この場に参加しております。」

渾身のボケだったが、なかなかにスベったと思う。
嘉村さんは冷笑している様に見えた。
もっと端的に伝える工夫が必要だった気がする。まぁいい。

流れで3つ質問させて頂いた。
①「1000~2000人規模の製造現場に、自律分散型組織は有効なのか?」
②「現場メンバーが乗り気ではない場合、この組織風土改革はやはり難しいのか?」
③「乗り気ではないメンバーを、その気にさせるコツはあるのか?」


一つずつの回答は概ねこういった感じだった。

①「1000~2000人規模の製造現場に、自律分散型組織は有効なのか?」
→彼曰く

『むしろティール組織の事例を読んでもらえると分かるが、大規模である方が効果的な場合もあります。規模の大小は阻害要因ではありません。おそらく机を囲んで話せる人数で、チームを組まれているかと思いますが、しっかりとチームメンバーの信念を共有し合う事が大切だと思います。』

なるほど。確かにトータルで大規模化していても、一つのチームは確かに10~20人の規模感だ。組織風土はその規模からスタートするという事なのだろう。

②「現場メンバーが乗り気ではない場合、この組織風土改革はやはり難しいのでしょうか?」
→彼曰く

『ムリです。』

ガビーーン。。。

シンプルな答えだけに、より効いた。
そりゃそうだよね。。。

だったら、、、
③「乗り気ではないメンバーを、その気にさせるコツはありますか?」
→彼曰く

『その人次第ですね。』
良く考えると、聴くまでもないな。少し恥ずかしい気持ちになった。
そんな私を慮ってか、嘉村さんは、一つお話を添えてくれた。

『オプションBで汗をかくといいです。』
「オプションB、、、」
『そう。オプションAってのは最良の選択肢。オプションAが出来なくって悲観する事もあるけど、そんな時はオプションB、次善の選択肢を、一生懸命やると良いです。汗をかくまでやる。そうすると楽しくなる。動機が生まれる。オプションAも近づいてくる。そういうのもアイデアではないでしょうか。』

何となく、武器を受け取った気がした。

「なるほど。伝わりました。有難う御座います。」
『はい。頑張って下さい。』

脳みそがグルグル回っていた。
彼の答えは非常に端的だったし、言い切りだったが、自然と正しさは伝わった。
私自身が得たい答えは何一つなかったが、真摯にお答え頂けた事はしっかり伝わったので、逆に清々しかった。

その後も、彼に向けられる無理難題を、相変わらずしなやかに捌いていた。
対話を楽しんでいる様に見えた。

それを見つめながら、私は先ほどのセッションについて内省を深め、一つのアイデアを持った。

情熱。

シンプルだが、自律分散型組織がもたらしてくれる効果は、従業員一人一人の情熱だったらいいなぁ。
私の中に湧いた動機であった。

その時、嘉村さんが別の方の質問に答えていた言葉も、相まった。
『組織の人たちや自分が、健康かどうか。それが大切じゃないでしょうか。』

健康と情熱。

私が何のために自律分散型組織を行うのか。
それは従業員一人一人が『健康』であり『情熱』を持てる会社にする為。


これだ。


世界中の人に伝える事が出来る、一生に一回しか使えないSNSツールがあるとしたら、私は今使っていたかも知れない。

漸く出会った。
自分なりの意味付け。


!!

その時、私は思い出した。つい舞い上がってしまって、すっ飛ばしてしまっていた、カメラをONにして質問したかった本当の問いを。
多少強引に再度嘉村さんに向けて投げかけた。
自分への問いかけでもあった。

「自律分散型組織への変革は、一つのアイデアであり、動機に過ぎなくって、結局は自分達が”どうありたいのか”を共有し合って、自分達で組織の形を作って行く活動だ。と私は理解しましたが、足りてますでしょうか。。。」
『はい。その理解で足りていると思います。』

決まりだ。
漸く自律分散型組織という言葉が、腑に落ちた。
まさに機械めいた存在が、生命体の様にイキイキと自律的に動き出した感覚を得た瞬間だった。

このタイミングで嘉村さんに出会えた事に感謝しつつ、喜びを胸に、私は今宵、泥の様に酔った。

ケンシュウ、サンキュウ👍

日報⑧へ続く

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