いつでも願いは届かない1

★前回続き!今回はSIDE Bです!★ 
この頃のまりなは、中高一貫の女子校に通っていた。中学受験はせず途中からの転入だ。きっかけは公立の中学で、人間関係的にも成績的にも躓いたことだ。成績も悪く、学校で人間関係をまともに築けぬ娘の将来を憂いた両親の、中高一貫で自分のペースで大学受験を見据え、勉強するのはどうだ?という勧めに深く考えずに乗っかったのだ。5:30に起こされ、7:00前の電車に乗る生活に怠惰なまりなは3日で嫌気が差した。母に毎朝「ホントにもう!」と呆れられながら車で駅まで送ってもらう。ちなみに、家から駅は歩けば15分。本当に呆れるほど根性がない。

「知念くんカワイイ!!最高!!」
「圭人くんのこれも見てよー!!」
「山田くんって、地元近いんだよね〜」
転校先のクラスメイトたちは、雑誌か何かの切り抜きを見ながら騒いでいる。知念?圭人??山田??誰だよ…とまりなは去年までいた公立との環境の違いに目眩を覚える。おまけに転校したてなので、移動教室で理科室に向かって歩いていれば隣のクラスの名前も知らない子が
まりなを見て言う。  
「あ!!山野さんって、サキちゃんと小学校一緒なんだってー!」 果てしなく調子が悪い。聞こえてますけど…??ってか、、え?山野さんってなんだよ…今まで先生にも友達にも、苗字にさん付けで呼ばれたことないぞ…どんなに距離感があっても下の名前にちゃん付けがデフォルトだと思ってきたのに…ほんとによそ者じゃん…とまりなは、今までと勝手が違うらしい世界にどうも上手く馴染めない。

なんとかお弁当を食べるグループには入れたものの、違和感が拭えない中学生活。ついにまりなは思い切って、お昼にメールアドレスを教えてくれた大竹さんに聞いてみる。「あ、あのさ…皆が雑誌の切り抜きとか持ってたり話したりしてるのって誰なの??」
「あ、あれはねHey!Say!JUMPだよ。
とくに、ゆりちゃんは山田涼介が好きなの。
うちの学校はジャニーズ好きな子がほんとに多いね。私はアニメだけど。山野さんは何が好きなの?」
「アイドルもアニメも、詳しくないなぁ。
私はね、、うーん強いて言えばサザンかな…」
「サザン、ママがすごく好きだよ。」
まりなが絶対サザンとか言って変なやつと思われたよね?と勝手にたじろぐお陰で会話はここで終わる。でもみんなが騒いでいるのが、ジャニーズのアイドルだってことがわかった。大竹さん、ありがとう。まりなはアイドルにはあまり興味がなく、ますますこの場で自分が居場所を得ることは困難な気がしつつ、帰宅して系列の女子校に通っていた母に聞く。公立にはあまり見受けられなかったが、女子校はアイドル好きの巣窟なのか?と。母は呑気に「ママの頃もアイドルが好きな子は、うちの学校に沢山いたよ〜!きっとみんなが持ってるのも、Myojoとか平凡とかアイドル雑誌の切り抜きね。ママは郷ひろみの下敷きを持ち歩いてた。」と返してきた。母が郷ひろみが好きだったというプチ情報を得たまりなは、興味本位で本屋に走る。