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後宮小説|伝説アニメ「雲のように風のように」原作のこれまた伝説小説

アニメ版「雲のように風のように」が、スタジオぴえろのYouTubeサイトで期間限定無料配信しており、ちょっと話題になっていました。

原作小説は「後宮小説」というらしいので、さっそく図書館で手配しました。


色々と伝説扱いされている本だということを読んで初めて知りました。

 

伝説の理由

こちらは第一回日本ファンタジーノベル大賞の受賞作です。
伝説の理由は1989年当時、日本にファンタジー小説を定義するものがまだなかったなかで、一つの定義付けに大貢献した作品だから。

借りた本の最後に、選考委員のコメントがありましたが、大賞受賞は満場一致かつ即決で決まったよう。

素乾朝といわれる1600年代に存在したらしい王朝が舞台ですが、すべてが嘘。架空です。

この架空が架空じゃないように書いていく筆者の腕前がものすごい!!

歴史に存在したかのように書く

語り口がなかなかおもしろいです。
後世の人間が、歴史書を読み解きながら、当時の王朝であったできごとを語っていく、というスタイルです。

だから、要所要所
「◯◯についての記載はここでとだえるが」
「歴史書××にはかかれているが、実際のところ〜」
「のちの研究で〜」
なんて筆者目線のコメントがはいってきます。
歴史書からの出典記号ちゃんと書いてあります。

でも、これ全部嘘!

嘘の王朝だから、そんな人物は存在しない。
嘘の王朝だから、そんな場所存在しない。
嘘の王朝だから、そんな歴史書存在しない。
嘘の王朝だから、書かれた内容すべて起きていない。

なのに、すべて真実と思わせるテクニック。
これぞファンタジー!!

中国の王朝と後宮を思わせる雰囲気の中描かれているがぜーーーんぶフィクション。

今は珍しいものでもないですが、当時、これほどまでに嘘が作り込まれている作品が表に出ているのは少なかったのでしょう。

審査員たちがファンタジーの定義づけの作品としてこちらを選んだのは納得です。

アニメ「雲のように風のように」との違い

アニメは、1990年にノーカットで一度だけテレビ放映されたそうです。
当時見た人たちの記憶に強烈に残ったという、伝説として扱われるアニメです。
制作会社のスタジオぴえろの45周年記念配信で2025年1月5日までの限定無料配信がされています。


アニメを見る前に、小説を読みました。
小説は、宮女教育が中盤以降のメイン。
アダルトな指南内容もたくさん描かれています。
宮女候補生が通る「たると」や「後宮」が、子宮に見立てられていることからもお察しください。

主人公「銀河」が、宮女候補となり正妃となり、女性となる。
この過程がわりとストレートに書かれています。

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あと、大きな違いはタミューンの立ち位置。

アニメ→弟(新皇帝)の護衛のために宮女教育の場所に紛れている。いざというときは前面に出て戦う武闘派お姉さん

小説→弟ラブ。弟の正妃になるのもいとわない。本気で正妃になるために宮女教育に参加

と、かなり違います。

タミューンのそのままの設定も面白いけれど、子供も見るアニメ放映ではなかなか難しかったことでしょう。

アニメのタミューン、きれいでかっこよくて声優の高畑淳子さんが最高です!

まとめ

後宮小説のストーリーは、儚いものですが、宮女教育にかける熱量と、史実っぽく書く作者のこだわりの文体がとにかくおもしろい!
架空の歴史にのっかる心地よさを感じられます。

アニメ版は期間限定配信なので次いつ見られるかはわかりませんが、小説もおもしろいのでぜひご覧ください。

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