「今こそ取り入れたい!多様な正社員制度で人材確保と職場の魅力アップを実現」
社会保険労務士の山地です。
私は社会保険労務士の業務に加え、キャリアコンサルタントとしても活動しています。三重県からの委託を受けて、高齢者の介護、障害者の日常生活のサポートや就労支援、生活に困っている方の自立支援や保育などの「福祉の仕事」を探している、または関心がある方の職業相談を月に一度、ハローワークで行っています。
最近特に増えているのが、「家庭と両立できる働き方がしたい」という相談です。
相談者は女性が圧倒的に多く20~30代で育児中の方や、40代後半以降で介護が必要な家族を抱えている方たちです。どの方も一定の実務経験があり、事業所が求めている保育士や介護福祉士などの資格のある能力の高い方ばかりです。自分のキャリアについて真剣に考えていて家庭と仕事の両立が叶えば、職場で大きな戦力になると感じています。
彼女たちが希望する条件は主に次のようなものです。
・基本的に残業がない(あっても月に数時間程度)
・短時間勤務である
・休暇が取りやすい
しかし、こうした条件を満たす正職員の求人はなかなか見つからず、パートタイマーでしか働けないという悩みを抱えています。パートタイマーでは責任のある仕事は任されにくく、正職員と比べると処遇も劣ってしまいます。
こういう相談を受けるたびに非常にもったいないと思います。労働条件や環境さえ整えば、彼女たちは持てる能力を存分に発揮して活躍できるのに。採用する側にとっては、きっと喉から手が出るくらい欲しい人材に違いありません。優秀な労働者が市場にいるにも関わらず、採用のチャンスを逃してしまっています。
人材確保に悩む事業所にとって、解決のためのひとつの選択肢となり得るのが「多様な正社員制度」です。これは従来の正社員と比べて勤務時間、職務、勤務地を限定する働き方を選べる制度です。大手企業を中心に少しずつ導入が進んでいます。
事例をひとつご紹介しましょう。
正職員121名、パート50名の介護施設(社会福祉法人)が短時間正職員制度を導入しました。
制度概要
適用事由:育児・介護または年齢50歳以上であること
適用期間: (育児)小学校卒業まで。(介護)期間の定めなし
週の所定労働時間:32時間、30時間、35時間など、夜勤の有無を選択可
職務内容:正職員と同じ
基本給:時間あたりの賃金は正職員と同額
賞与・退職金:基本給を基に正職員と同一基準で算定
人事評価:正職員と同一基準
導入の経緯と効果
家庭の事情や体力的に不安な職員は有期契約の臨時職員になるか、退職せざるを得ない。50歳以上の正職員が全体の40%を超え、体力的にフルタイム勤務が難しい職員が増えていた。このままだと経験豊富でスキルもあるベテラン職員の離職が進み、サービスの質の低下を招く恐れがある。そこで、短時間正職員制度を導入し、育児や介護と両立しながらも正職員として働き続けられる環境を整えた。
その結果、フルタイム勤務が難しい職員が短時間正職員として働き続けられるようになり、人材の定着に成功。もし制度を導入していなかったら、退職していたかもしれない職員が短時間正職員として活躍しており、人材を確保できた。働き方の選択肢が増えたことにより、職場全体に「何かあっても短時間正職員として働ける」という安心感が生まれている。
事業所にとってのメリット
・人材確保・定着
・モチベーションの向上
・働きやすい職場をアピール
・採用競争力の強化
労働者にとってのメリット
・ワークライフバランスの実現
・(長期的な視点から)キャリア形成の実現
「多様な正社員制度」を導入することで、これまで取りこぼしていた優秀な人材を採用できる可能性が高くなります。また、家庭の事情で退職してしまうリスクも低減できます。
でも、うまくいくのか? どうやって導入すればいいかわからない、という方も多いと思います。そんな方のために厚生労働省が、
「多様な正社員」制度導入支援等事業を実施しています。
社労士等の導入支援員が1社につき最大6回まで無料でコンサルティングを行います。私も今年度、導入支援員として活動しています。
お申し込みはこちらから
https://tayounaseishainseido.mhlw.go.jp/entry
皆さんのお役に立てれば幸いです。(*^_^*)
出典:これで解決!人材確保と定着 「短時間正社員制度」導入・運用支援マニュアル