「ちょっと残念? な特別休暇、取得に疑問を感じたことはありませんか?」
社会保険労務士の山地です。
10月になりました。
厚生労働省では年次有給休暇を取得しやすい環境整備を推進するため、10月を「年次有給休暇取得促進期間」として広報活動しています。
実は今日お話したいのは有給休暇ではありません。(^_^;)
会社によって、ある会社もあればない会社もある、「特別休暇」のお話です。
先月、知り合いの女性のお父様がお亡くなりになりました。彼女は嘱託社員として勤務しています。就業規則によると、「一親等以内の親族が亡くなった場合は特別休暇のうちのひとつである、忌引休暇が3日間取得できる」と記載されています。
さて、この3日間はいつから始まると思いますか?
A. 死亡日当日から
B. 死亡日の翌日から
人がいつ亡くなるのか、その日時を事前に正確に知ることはおそらく不可能です。
1日24時間のうち、いつ亡くなるかは誰にもわかりません。
4:00のような早朝に亡くなることもあれば、夜遅くたとえば日付が変わる24:00の直前かもしれません。
A.の死亡日当日からだと、早朝に亡くなったのならその日1日が休みになるのでいいような気がします。しかし、日付が変わる直前だとずいぶん損した気分になりませんか?
就業規則にはいつから休みが取れるのか、起算日についての記載がありませんでした。
人事担当者に確認すると、B.の死亡日の翌日からという回答でした。これを聞いて彼女はひと安心しました。
しかし、まだ問題がありました。
彼女のお父様が亡くなったのは土曜日の夜でした。彼女の所定休日は土、日、祝日のいわゆる完全週休2日制です。
ここで問題になるのは日曜日です。
所定休日である日曜日を含めて日、月、火の3日間なのか?
それとも
日曜日は所定休日なのだから、日曜日を除いて月、火、水の3日間なのか?
所定休日を含むのか、含まないのか、についても就業規則には記載がありませんでした。
これまた確認したところ、この点については日曜日を含めて3日間という回答でした。
せっかく特別休暇があるのに、彼女の会社の就業規則は「ちょっと残念な就業規則」になってしまっているのでした。
休暇の起算日が翌日で忌引休暇の日数に所定休日を含むのであれば、
仮に死亡日が金曜日の場合、忌引休暇は土、日、月の3日間になります。土日祝が所定休日なのでもし月曜日がハッピーマンデーで祝日にあたっていた場合は、正味の特別休暇はなしと考えることもできます。
一方、死亡日が日曜日の場合は、月、火、水の3日間になり、まるまる休めるとも考えられます。
所定休日を含めていると、このように死亡日によって取得できる正味の休暇日数に差がでてしまうのですが、その是非については一概に、良いとも悪いとも言えません。
その理由は、このような特別休暇は法に定める休暇ではないからです。
皆さんにとって、もっともなじみのある「年次有給休暇」は労働基準法第39条に使用者(事業主)は一定要件を満たした労働者に有給休暇を与えなければならない旨が定められています。
しかし、忌引休暇や結婚休暇のような特別休暇を与えなければならないという義務は事業主にはありません。
自社に特別休暇の制度を設けるか設けないかは事業主さん次第なのです。
制度を設けるのであれば就業規則にきちんと記載しておかないと、トラブルになる可能性があります。
従業員規模が1,000人も2,000人もいるような大企業なら従業員が結婚したり、家族に不幸があったりしてこのような休暇を取得することがよくあることであれば、誰に対しても同じ取り扱いで、一定程度の公平性を保つこともできるでしょう。
しかし、中小企業さんだと従業員規模が小さいために、このようなことはそんなに頻回には起こらないかもしれません。
以前休暇を取得した人のときには忌引休暇に所定休日を含まない有利な扱いをしていたのに、それを忘れてしまって、新たに取得する人が発生した時には所定休日を含む不利な扱いをしてしまうかもしれません。
退職などで人事担当者が変わってしまいきちんと引き継ぎがされていないと、これまた前任者とは違う扱いをされてしまうかもしれません。
就業規則に記載がないために判断が異なり対応が違う、というのでは休暇を取得しようとする従業員さんにとっては自分が不利に扱われれば、過去に有利に扱われた人をえこひいきしているのではないか?と誤解したり、会社に対して不信感を持ったりすることになるでしょう。また従業員さんの間に軋轢が生じるかもしれません。
その結果、職場の雰囲気が悪くなり全体としてモチベーションの低下にもつながりかねません。
そしてもうひとつ、時々見受けられるのが
特別休暇は有給なのか、無給なのか、についても就業規則に記載されていないことがあります。
皆さんの会社に特別休暇はありますか?
1.休暇の起算日はいつなのか
2.休暇に所定休日が含まれるときの取り扱いはどうなるのか
3.休暇は有給なのか、無給なのか
就業規則に記載はありますか?
一度確認してみましょう。
事業主の皆さんは点検してぜひ未然にトラブルを防止していただきたいと思います。
休暇にまつわる話はまだまだあるのですが、続きはまた次回お話したいと思います。