見出し画像

老後4000万円問題の発端から調べた最も有効な究極の対策

鹿児島で社労士をしています原田です。

老後2000万円から始まって、すでに4000万円問題と呼ばれています。
これが始まった経緯から、何が原因なのかを考えていきます。

まず2000万円問題とは

 老後2000万円問題の発端は、2019年(平成31年)4月24日に行われた金融庁の第21回市場ワーキンググループの中で使用された、金融庁が作成した「人生100年時代における資産形成」と副題に掲げる事務局資料から始まっています。

この回のワーキンググループテーマは、
「高齢社会における金融サービスのあり方 等」
となっており、21人前後のグループメンバーのうち、
ざっくり5%単位の割合で言うと
・45%が大学教授等
・60%投資系企業関係者(投資雑誌編集者を含む)
・5%がその他
の構成で、まさに金融商品の為の会合です。

 これらの会合を繰り返した結果、2020年(令和元年)6月3日に発表された
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書
「高齢社会における資産形成・管理」
が、大きく報道されるきっかけとなったものです。

その部分がこちらです。

市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」16ページより抜粋

この5万円の根拠となる(2)の文書とは、こちらです。

市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」10ページより抜粋

 
 この報告書でこれより前の文章や記載事項を読んでも、このグラフを見ても、5万円になる根拠は見当たりません。と、思いきや、上記の文章の下に図が書いてあります。
 これは、21回市場ワーキング・グループで厚労省が出した資料から来ています。

21回市場WG 厚労省資料「iDeCoを始めとした私的年金の現状と課題」より抜粋

 この元データは、記載している通り「総務省の家計調査」から来ています。あくまで調査上の平均の数値です。

 263,718円の支出に対して、209,198円の収入なので、54,520円が不足となります。しかし、この時点でおかしいと認識しなければなりません。

 毎月5.4万円足りなくて、老後資金を減らして不安に駆られながら生活している方が、
・教育娯楽費 25,077円
・その他の消費支出 54,028円(使途不明金、仕送り、交際費等)
というのは、あまりに多過ぎます。

2部門だけで79,105円も遣っているので、ここから54,520円節約すればいいのです。

 実はこの2部門の節約だけで、2000万円問題は完全に解決するのです

老後2000万円問題とは、「収入より支出が多い時は節約しましょう」ということができない、どうしようもないダメな浪費老人に限定して、2000万円の貯蓄が必要という話なのです。浪費家なのに、事前に貯蓄できるなら、既に浪費家では無いような気がするのですが。


なぜこうしたことが起こるのか?

 これは、家計調査のデータを都合よく解釈したために起こっているものです。家計調査で出るデータは、平均的な金額なので、個別の家庭の実態を示しているものではありません。

 そもそも「家計調査」とは、総務省が全国9千世帯に毎月調査を行っているデータで、世帯主の年齢別に集計されています。

家計調査のデータは、
・景気動向の把握
・生活保護基準の検討
・消費者物価指数の品目選定及びウエイト作成
をが中心的に利用されており、全体傾向を知るにはいいデータです。

 しかし、今回のような使い方をすると
1.高齢者で高所得者のデータも含まれる。
2.高齢者の資産家のデータも含まれる。

という環境下の平均的数字に過ぎないものなので、個別の家計の感覚とはどうしても乖離します。

 また、このデータの特徴として、
「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯」に限定しています。
無職世帯なのに、事業収入や勤め先収入があります。
会長職とか、企業オーナーは無職扱いかもしれません。
(その他収入もありますね。資産運用とかでしょうか)

 正しいデータにするなら、夫婦とも65歳以上にすべきです。
また、一人老人のパターンも提示しないとおかしいでしょう。


この目的は何なのかを知る

 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書
「高齢社会における資産形成・管理」では、上記で「5.4万円足りない」と結論付けた次では、

・別のアンケートで「老後に対する不安がある」と答えた比率が高い傾向
・約3割の者は「若いうちから少しずつ資産形成に取り組む」を挙げて いる。

という調査から、
「高齢社会における金融サービスに関して、個々人及び金融サービス提供者の双方が共に認識することが望ましい事項が導き出される」
と方向性を決定している。

 そして最適解として
「こうした長期に亘 る資産形成を支援する制度として、税制面で一定の優遇が行われている「つみたて NISA」と「iDeCo」がある。」
と、制度へ導く結論に至るのです。

 これで終わりではなく、その次に来るのは、
「個々人に的確なアドバイスができるアドバイザーの存在が重要である。」

 この結論を受けて、「金融経済教育推進機構」が2024年1月に発足し、2024年8月から本格稼働を開始することになったのです。
設立予算は、国が10億強、日銀が2.5千万、全銀が1.25千万、日証協が1.25千万円
年間予算は、国が2億円、民間が18億円の予定です。

 毎月が足りない前提があるから、ここまでいく話であり、足りない前提が崩れたら、その後の話は無くなってしまいます。そのために必要なデータとして提示しているのです。


老後4000万円まで発展する、この問題の最大の対策

 老後2000万円は、別の目的のために使用した単なるデータ上のトリックであることが実態なのですが、既に「老後に2000万円が必要」自体が事実あるかのように定着してしまい、現在は更に飛躍して、
「物価が上がっているから4000万円必要」
という話まで成長しています。

 更には、どうしても浪費癖が止まらないから、貯蓄するのではなく、iDecoやNISAで儲けましょうって話まで飛んでいく話であり、そのiDecoやNISAも、不況になったら元本割れもあり得るリスク商品です(比較的低リスクにする方法もありますが銀行預金よりはリスクがある)。

 ということで、老後2000万円問題の最大の対策は、
「老人になる前に浪費癖を止めれるように努力しましょう」
です。収入に応じた生活ができれば、困ることはありません。

面白いとか、役に立ったとか、おまえは何を言っているんだとか思って頂けたら、ハートをお願いします。ツイートやFBで拡散して頂けると、とってもうれしいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?