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社労士的就業規則の作り方 25

鹿児島で社労士をしています原田です。

貯まってうれしいのはお金ですが、溜まって嫌なのは仕事です。
溜まらないように心がけたいですが、世の中そううまくはいかないから、そこを面白いと思う方が世の中過ごしやすいと思う今日この頃です。

ここでは厚労省モデルを使って、社労士が就業規則に対してどうアプローチするかを案内しています。


第7章 定年、退職及び解雇 第53条 その1

解雇

(解雇)
第53条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
① 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。
② 勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。
③ 業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、労働者が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打ち切り補償を支払ったときを含む。)。
④ 精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき。
⑤ 試用期間における作業能率又は勤務態度が著しく不良で、労働者として不適格であると認められたとき。
⑥ 第68条第2項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。
⑦ 事業の運営上又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により、事業の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、かつ他の職務への転換が困難なとき。
⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。
2 前項の規定により労働者を解雇する場合は、少なくとも30日前に予告をする。予告しないときは、平均賃金の30日分以上の手当を解雇予告手当として支払う。ただし、予告の日数については、解雇予告手当を支払った日数だけ短縮することができる。
3 前項の規定は、労働基準監督署長の認定を受けて労働者を第67条第1項第4号に定める懲戒解雇にする場合又は次の各号のいずれかに該当する労働者を解雇する場合は適用しない。
① 日々雇い入れられる労働者(ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
② 2か月以内の期間を定めて使用する労働者(ただし、その期間を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
③ 試用期間中の労働者(ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
4 第1項の規定による労働者の解雇に際して労働者から請求のあった場合は、解雇の理由を記載した証明書を交付する。

令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課

さすがに長くなるので、2回に分けます。

 数ある相談案件の中で、最も深刻で最も悩む解雇です。
モデルの解説にもある通り「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」の事由であれば解雇可能ですが、どうすれば合理的とか相当だとかに明確な線が引かれているわけではありません。

 普通解雇・整理解雇・雇止め・懲戒解雇等があり、整理解雇の4要件や雇止め法理のような判例やそれに基づく労契法等で道筋が照らしているものは、まだ方向性が定めやすいのですが、普通解雇や懲戒解雇に関しては、明らかな犯罪行為以外は、全ての人が同意するような理由とするには難しいものが非常に多いものです。

 解雇における就業規則には、想定されるものを全て書けと言われる方もいます。いわゆる限定列挙説です。逆に例示すれば足りると言われる例示列挙説もありますが、現実の裁判判決では「列挙されてないからセーフ」もあるし、「列挙してなくてもアウト」もあるので、明確に絶対にどちらかが正しいと断言できるものはありません。

 社労士的には、就業規則を作ってお金をもらう立場として、「列挙されてないからセーフ」を言われたら最悪なので、できるだけ想定して書くという結論しかありえません

 ただし、規則違反や企業への損害等による解雇の多くは、処罰のひとつとなる懲戒解雇であり、本条の解雇要件については限定的な部分を列挙している場合が多くなります

ということで本文に入ります。

第1項で、上に書いたような事由の列挙になります。本文で「解雇することがある」と書いているので、該当=解雇にはなりません。
むしろ該当=解雇の書き方にした場合に、実際の該当者を解雇にしていない状態が続いていると、本条は実質上無効と司法に判断される場合がありますので要注意です。

①では、勤務状況が不良な人の話です。 「勤務状況が著しく不良」とは欠勤や遅刻が常習的にあるとか、早退があまりに多いとかのいわゆる勤怠不良のことです。「改善の見込みがない」ことも重要です。当然注意や遅刻届等も証拠書類として有効です。
 本条の普通解雇の要件にも該当しますが、同時に懲戒の事由にも該当する案件になります。

②では、いわゆる能力不足。当然ですが能力不足は罰則には該当しません。本人の資質の問題か、入社させた人事が悪いのか、ちゃんと育成しない職場が悪いのか。こちらも「著しく不良」なので、そう簡単に発動させるのは難しいですが、時々本当に該当してしまう不幸な事例はあります。

③は労基法第19条の通り。以前地裁・高裁で打切補償を払っても解雇できない判決が出て騒動になりましたが、最高裁で判決破棄差戻になりました。

労働基準法 第19条
(解雇制限)
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。(以下打切補償の話)

労働基準法

④では、業務に耐えられない程度の障害ですから、入社時には無かった障害が発生し、症状固定や回復の見込みが乏しい場合が多い案件です。
第9条の休職と両面から検討される部分です。ある意味非情な話ですが、企業運営の面からみると難しい問題です。
第9条(休職)については↓
https://note.com/sr_harada/n/n9f2cb28effe0

⑤は試用期間中の解雇。この詳細については、試用期間の部分を見ていただきましょう。
https://note.com/sr_harada/n/n96676904c35f

⑥は懲戒解雇。懲戒解雇の時にお話しします。

⑦は天変地異による解雇。これについては従業員の方にもやむを得ないと感じて欲しい部分です。無理な時は無理なので。

⑧がいわゆる包括規定。想定していなくて書いてないから発動させないわけでは無いという規定です。
 ①~⑦以外で起こりうる懲戒以外の事由は、私も思いつきませんが、念のため書いておく必要はあるでしょう。

ということで、第2項以下は次回に続きます。


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一回目はこちらです。

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