コロナ禍における制作のおしごと
現在私は、主宰を務める公演に、役者と制作として関わっています。
そして今回は、制作として『コロナ禍における制作のおしごと』記事を書いていきます。
おそらく、業務の内容や大変さを詳細に記録している方は、私以外にもたくさんいらっしゃいます。
そこでこの記事では、演劇をあまり観ない知らない人にも向けて、制作って何?というところから、それぞれの感染対策の意図までを書こうと思います。
なぜこの記事を書いているのか
私がなぜこの記事を書いているかというと
ひとつは、ハラハラしないで公演を観て欲しい、ということが一番の理由にあります。
しっかりと対策を講じているということを明らかにすることで、少しでも舞台の中身に集中して欲しいからです。
なので、正直かなりシビアな側面があり、危機感も強くありますが、文章として読み易いように、軽めの口調でいきます。
お許しください。
制作って何?
まず演劇公演における制作が担う仕事は、公演ごと、団体ごとによって割と異なります。
よってその定義はかなり曖昧。
あまり何をやっているのかわからない、と思われがち、な気がします。
私が今までにやってきた制作の業務は
1.稽古場や劇場など場所の管理
2.予算やチケットなどお金の管理
3.宣伝や当日の対応などお客様との接点の管理
といった感じのことが多かったです。
もっと他のことをやっている方も、この中の一部をやっている方も、制作にはいらっしゃると思います。
なぜ制作が感染対策?
それでも、このコロナ禍において、「感染対策」はおそらく多くの制作の方の主な業務の1つなのではないでしょうか。
もしかすると舞台監督の方がメインの公演もあるのかもしれませんが。
人をたくさん集められない状況でまずどこでやるのか、感染対策にかかる費用はどれくらいか、お客様に安全に観劇していただくにはどうしたらいいか。
こういった、コロナ禍の状況で演劇をやる上で考えねばならないことの多くが、制作の業務の範疇に多くあるからです。
私たちの感染対策
というわけで私たちも、コロナ禍における制作のおしごと、をしていくことになりました。
結論から言うと、仕事が2倍以上に増えたと言えます。
とりあえず、人手が足りるように、4人体制にしました。
私と、歴戦の後輩 髙橋、技術班 松橋、そして私の妹。加えて演出も手伝ってくれています。
妹以外は皆、他のセクションと兼任。
「本番直前、感染対策を徹底できる余裕がある人間」を確実に確保したいという思いが強く、妹を誘いました。彼女のためになる機会になればな、という姉心ももちろんあります。姉心ついでに妹のnoteも貼ってお来ます。
ガイドライン作成
まず基本方針をさだめました。以下の通りです。
【基本方針】
1,できるだけ対面で会わない。
2,対面時はマスク、手洗い、消毒、換気。3密回避。
3,いつも以上に、報告連絡相談。
4,体調管理が最優先。無理な仕事、スケジュール禁物。
本当はいつでも気をつけねばいけないことなのかもしれないな、とこれを作成しながら思っていました。これまでも、インフルエンザが流行って役者がほぼ全滅、みたいなことは起きていたからです。これからは当たり前の方針になっていくのかもしれません。
さらに企画の段階から会場に入るまで、その時々で行うべき対策を記載しました。
消毒と換気をこまめにする、ということは当たり前のこと。ですが、稽古や作業に没頭していたり本番が近くなると、忘れがちになってしまいそうということで、細かく状況を考えて記載しました。
演劇ならではのものだと、「小道具や衣装は、誰が何を消毒・洗濯するか明確に。」などでしょうか。
対策フロー作成
また、感染や濃厚接触者認定がメンバーで起きた場合の稽古や準備の中断、公演中止などのケースを列挙し、その対応を考えました。
想定されるケースと対応の一つとしては、「役者の家族が濃厚接触者になった場合は、役者はPCR検査を受けて陰性なら会場に」が挙げられます。
やはりこれも、余裕のあるうちに細かく決めておかないと、バタバタしてうやむやになってしまうといけない、という考えが強くありました。
ありがたいことに、様々な団体や劇場がガイドラインを既に発表しており、多いに参考にさせていただきました。また直接、制作のプロである方にもお話を聞かせていただきました。こういった知見みたいなものがすぐに見つかること聞けることは、良いことだなと思っています。
対策グッズ購入
そして、感染対策に必要なものを購入しました。
消毒液、ゴム手袋、飛沫予防のシート、フェイスシールド、など。
少なめに見積もっても、どう考えても、いつもより制作の予算がかさんでしまいました。
とはいえ、どうしても削れるところではないので、全て多めに発注しました。
忘れた!とか、なくなった!とかが許されないのは、今までにない緊張感だなと思います。
メンバーと共有
最後に公演メンバーと、会場主の方に、ガイドラインと講じる対策を共有しました。
作成したガイドラインの内容とともに、それぞれの対策の意図も話しました。
ただ「これやって!」と言うよりも、「こういう考えがあるから、こうして欲しい」と言った方が、言われる方もきちんとやってくれるかなという心持ちからです。
幸い、迎え撃つ姿勢というか、危機感というか、そういうものに大差がなかったのですんなりと理解を得られました。
会場入りをしてから
会場に入り、感染対策に使うものを設置しました。
動線を考えて配置しなければ、効果がありません。消毒液は入室してすぐ使えるよう玄関に置き、家の内部にウイルスを持ち込まないようにコートかけは玄関近くに置きました。
チェックシートを作り、体温や換気の時刻などを記録していきました。
やはり視覚化しないと、人間は忘れがちになってしまうので、アナログですが紙に印刷しました。
現在は、決めたことをしっかり守っていく、メンバーが守るよう声がけを行うということに徹しています。
まとめ
今回は演者と観客が同じ場所にはいないので、ざっとこのような業務内容です。
劇場で行う場合、観客が会場にいる場合は、さらにやるべきことが多くなることと思われます。
以上が、コロナ禍における制作のおしごと、です。
冒頭に戻りますが、ただただ、知って欲しいという気持ちでこの文章を書きました。
この記事を読むことで、お客様が安心して、公演そのものに集中できることが一番の狙いです。
実は世の中にはこうまでしても、演劇をやりたい人々がいます。
そこには往々にして、その演劇を観たいと思っている人々もいらっしゃいます。
私や公演を作るメンバーたちも、その一人です。
制作はその、演劇をやりたい人と、観たい人と、それぞれ同士の間にいる立場です。
感染がそこに広がらないように、砦として機能するように動かなければと思っています。