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私が格闘ゲームを愛するたった一つの理由

「社会に出たらお前の努力が100%報われることは、残念だけど少ない。でも、学校の勉強なら、頑張っただけ成績に反映されるから、今が頑張りどきだぞ」

これは、僕がまだ学校に通っていた時に父がよく掛けてくれた言葉だ。

幼い(比較的)ころの僕は、「まあなんとなく、感覚的に一理ありそうだな」とか思っていた気がする。
社会人としての経験も長い父がそういうのだからきっとそうなんだろう。
でも、だからと言って勉強に熱中した青春時代かというと、全然そんなことはなかった。

勉強の成績は100%上がると言い切れない。先生によって内申点の付け方が異なるのでは?先生からの人間的評価は?卒業してからは結局関係ないんじゃないのか?幼いながらに違和感を拭いきれず、あと単純に面倒で。やる気は出なかった。

ただ、僕の世界には一つだけ、本当に「頑張ったら頑張っただけ報われる」物があった。
ご存じテレビゲームである。
画面の中のキャラクターは、僕が頑張って操作すれば軽やかに攻撃を避け、重たい一撃を叩き込む。
僕が頑張って時間を掛けさえすれば、勇者は強力な剣技と魔法を覚え、敵を薙ぎ倒す。
僕が頑張ってエイムを鍛えれば、銃弾は素早く敵の頭を捉える。

そんな中でも、僕が一際大好きなのは格闘ゲームだ。理由は簡単で、「努力したやつが偉い、強い」から。

近年のゲーム、特に対戦要素が強いものは意図的に運の要素を持ち込むことが多い。カードゲームやポケモンの対戦ほど強くないにしても、リコイルパターン、命中率、エンカウント率…どこかしらに運の要素を持ち込んでいることが多い。「味方運」なんて言葉も最近はある。
理由は簡単で、「負けた時に辛すぎるから」。

だって、考えても見てほしい。
日常生活で「はい、あなたの負けです。あなたは相手より完全に劣っていて、たまたま、偶然負けたわけではなく、しっかり実力で敗北しています。」なんて言われる機会があるだろうか?
たぶん、そうそうない。だからこそ受験や就活の時にそれを突きつけられると絶望的な気持ちになるし、受け止めきれない人も多いと思う。

そんな時に人が拠り所にできるのが「運」なのだ。「初手が悪くて」「パターンが」「30%で外してしまっている」「噛み合ってしまって」「味方が弱くて」。
完全に自分のせいではない部分に負けた理由を求めることができれば、少しは心を楽に休めることができるだろう。

でも、格闘ゲームにはそれがない。
もちろん、多くの人が遊ぶインターネット対戦程度であれば「ラグ」「キャラ差」「マッチ格差」などと言った要素も残されているだろうが、競技レベルにたどり着くとその言い訳はルール単位で完全に排除される。
その、真剣勝負の場での生死を分けるのは、ただただプレイヤーの「努力」のみなのである。

私は、ストリートファイターリーグ(SFL)にも出場している、現crazy raccoon所属の"どぐら"選手のファンである。
これもまた理由は単純明快で、「たくさん努力するから」。
本人も配信の中で幾度となく「サボらないやつが偉いゲームだから格ゲーはいい」と述べており、正直このnoteもそれに感化された感が否めないが、人間とはそういう生き物なので一旦置いておく。

どぐら選手自身はかなりキャラ対策を詰めるタイプという印象があり、「この状況は毎回この技を出すべき」「必ずこの場面ではこのようにガードすべき」という細かい知識を沢山仕入れている。
そうした取り組みが結実した時のどぐら選手の試合は「相手の攻撃は全てガードし、相手の僅かな隙は見逃さずに反撃を叩き込む」、まさに対戦相手からしたら悪夢のような展開に。
これは自称なので悪口には当たらないと思うが、どぐら選手自身はめちゃくちゃ反射神経に優れるとか、すごい勝負勘があるとか、そういうタイプではないらしい。ただ、それでも真面目に頑張った人が国内最強ベガの座に君臨してるのは純粋に嬉しいし、応援したくなる。

もちろんどぐら選手のパーソナリティとか、そういった諸々含めてファンだけど、やっはり「カピバラが象に勝つ」から格ゲーは面白い。

誰が呼んだか、「その勝ち方、悪魔的」。


曲がりなりにも社会に出てみて「あー、これは自分が頑張るとか頑張ってないとか、そういうやつじゃないな」と察する機会も増えてきた。父が言っていたことが身をもって理解できるようになったのである。

「努力が100%報われることは少ない」というのは、単に現実は厳しいぞ、と言いたかったわけではなく、「100%報われる場所では全力を尽くす価値がある」というメッセージだったのかもしれない。

ゲームの中でしか「努力が100%報われる」感覚を味わえなかった僕だが、その経験は「努力するのって意外と楽しいよな」というexpを残していってくれた。

社会では確かに、自分の努力だけではどうにもならないことがある。でも、格ゲーマーたちが示してくれた「自分にできる限りの準備をして全力を尽くす」という姿勢だけは、どこに行っても僕を支えてくれる気がしている。 

取り止めもなく綴りすぎて結局何が言いたかったのかはちょっと怪しいのだけど、結局格ゲーが好きだって話をしたかっただけなのかもしれない。

どぐら選手、プレイオフ応援してます。


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