vol.035 人と縁と時間と
ここ1週間ほど、出会いと再会の日々を送っている。
先週は仕事で竹富島から沖縄島へと行っていた。撮影の依頼主とは何と20年ぶりの再会だった。
私をSNSのInstagramから見つけだしてくれての撮影依頼だった。
私には20年前の記憶はあまり残っておらず、撮影を依頼してくれた本人と再会するまでは初対面の気分でいた。再会後にようやく当時のことを少し思い出すことができた。お互いにコツコツと続けてきた自分たちの仕事で繋がれたこと、そして何よりも私のことをずっと記憶していてくれたことが嬉しかった。この時の撮影のことなどは、またの機会に詳しく書きたいと思っている。
沖縄島には1泊2日と短い滞在だったのだが、飛行機に乗って帰る前に行っておきたいお店があった。このコラムの連載を提案して声をかけてくれたセソコ・マサユキさんがディレクターを務める、沖縄のおおらかで気持ちの良い作品や商品などを扱うお店「島の装い。STORE」だ。
新しくオープンしたばかりのお店は、まだ少しよそいきの顔をしていた。これからたくさんのご近所さんや島々から訪れる人や観光の人たちが、お店にそれぞれの風を吹き込み、「みんなの場所」となっていくのだろうなと思った。そしてこの始まったばかりの時期に、セソコさんに再会できて良かった。
沖縄島から竹富島に帰って来たその日の夕方には、伊平屋島から来島していた民具デザイナーの是枝麻紗美さんと会う。お互いに離島暮らしであること、島の手仕事に携っていることなど、共通の話題で以前からメッセージを送りあう仲だったが、今回初めて会うことができた。
麻紗美さんが竹富島を訪れるのは10年ぶりで、前回はちょうど娘さんがお腹にいる時で新たな暮らしへと一歩を踏み出した頃だった。現在は、伊平屋島のアトリエ件住居の古民家を改装している。前回の竹富島訪問から10年の月日がたち、再び新たな挑戦へと一歩を踏み出したところだ。
短い時間ではあったが、奥行きのある心温まる時間を共に過ごすことができて、まるで昔から知っている友人と再会したような感覚になる出会いだった。まだまだ話し足りない中での別れ際、私も必ず伊平屋島へ会いに行きたいと思った。
今回の再会や出会いから感じた共通のことは、新たなスタートを切って歩みを始めようとしている人は、新鮮な空気をまとっているということ。そして努力することを惜しまず、当たり前のように好きなことへ情熱を注いでいるということ。
人との出会いは不思議なもので、すべてが最初から仕組まれていたのではないかと思う時がある。ひょんな巡り合わせから繋がりが生まれ、時とともに形を変え、途切れたり再び繋がりあったりする。そんな上でも下でもないちょうど良い真ん中のあたりで、ゆるりと繋がり続けていくことを大切にしていきたい。
種水土花(しゅみどか)
「島の装い。STORE」
【水野暁子 プロフィール】
写真家。竹富島暮らし。千葉県で生まれ、東京の郊外で育ち、13歳の時にアメリカへ家族で渡米。School of Visual Arts (N.Y.) を卒業後フリーランスの写真家として活動をスタート。1999年に祖父の出身地沖縄を訪問。亜熱帯の自然とそこに暮らす人々に魅せられてその年の冬、ニューヨークから竹富島に移住。現在子育てをしながら撮影活動中。八重山のローカル誌「月刊やいま」にて島の人々を撮影したポートレートシリーズ「南のひと」を連載中。