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「リクルーティング・イネーブルメント」という役割〜スクラム採用の実現に向けて〜

ナイルで採用人事マネージャーをやっている渡邉です。ナイルでは採用大絶賛強化中でして、今年70職種・120名採用に向けてなんとかやっています。

ここ最近、HR領域の盛り上がりがすごいですね。「採用マーケティング」「採用広報」「オウンドメディアリクルーティング」「CHRO」「戦略人事」などをバズワードのように、よく耳にします。

もちろん、そういったバズワードから皆さんの興味関心が高まって、採用マーケットが盛り上がるのもいいとは思うのですが、個人的には「リクルーターとして、経営者や現場が求める人材を採用することにコミットする」ことにこだわる人がもっと増えるといいのになーと思っていたりします。

さて、今回お話したいテーマは「スクラム採用を実現するために必要なリクルーティング・イネーブルメント」という考え方について。

採用にフルコミットするようになってからはや1年、採用人事の力だけでは全然うまくいかず、現場社員や外部パートナーの協力をえながらなんとか採用体制を作ってきました。色々取り組んでいくなかで結果的に、いわゆる「スクラム採用」体制に近づいてきたので、これを機に本格的にスクラム採用体制を構築していこうと決めました。

スクラム採用を実現していくにあたり、「リクルーティング・イネーブルメント」という考え方と役割とちゃんと考えておいた方がいいなと思ったので今回記事にしてみます(まだ自分の中でも曖昧なとところもありますがそこは大目に見てやってください笑)。

前提背景:これからの時代に必要な「スクラム採用」とは

「リクルーティング・イネーブルメント」について語る前に、まずはスクラム採用について説明しておく必要があります。色々参考になる記事があったので、そこに書かれている内容を引用してまとめます。

スクラム採用が必要な背景

①採用チャネルの多角化
SNS採用、副業経由、リファラルなどチャネルが多角化している中で、各特性を理解して職種に応じた施策を選択する必要がある。
②優秀な人ほど「リファレンス」が必要
転職者は氷山の一角に過ぎない、リファラルやSNSなど人事以外の社員一人ひとりが潜在層にアプローチして、企業としての「面」を増やしていくことで採用力が高まる。
③現場が人材要件やポジションを一番理解している
募集ポジションの人物要件や職務内容は現場社員が一番理解しているため、現場社員がいかに採用に関わるかが重要。
参考:https://seleck.cc/1307

スクラム採用の4つのメリット

①転職活動の変化への対応
②最適な採用チャネルの発見
③社員のエンゲージメント向上
④企業の文化形成

引用:https://findjob.ferret-plus.com/blog/05_04

スクラム採用に必要な5つの要素

①経営層のコミットメント
②現場への権限移譲
③採用情報のオープン化
④オフラインでの接点づくり
⑤動きやすくなる制度設計

引用:https://findjob.ferret-plus.com/blog/05_04

その他 参考記事

自分が考える「スクラム採用体制」について

自分の中でのスクラム採用の理解は「全社員で取り組むジョブ型採用」です。スクラム採用の要素は3つあると考えています。

スクラム採用の要素

①ジョブ型(ポジションマッチ)採用
②現場社員主体の採用活動
③人事のPM化

①ジョブ型(ポジションマッチ)採用
「営業職」「開発職」みたいなざっくりなくくりではなく、「(サービス名)のインサイドセールス」「(サービス名)開発のサーバーサイドエンジニア(Ruby)」といったいようにポジション別のジョブ・ディスクリプションを細かく定義して、ポジション別に採用するケースが増えています。

ジョブ・ディスクリプションを細かく定義している会社でいうと、LINE、メルカリ、DeNAあたりが参考になります。ナイルでもポジション別に作成しています。

・LINE:https://linecorp.com/ja/career/ja/all
・メルカリ:https://careers.mercari.com/jp/search-jobs
・DeNA:https://career.dena.jp/job.phtml
・ナイル:https://herp.careers/v1/nyle/

②現場社員主体の採用活動

ジョブ型採用となると、各事業、組織、サービスの特性を理解した上で、各ポジションの採用要件(人物要件、職務内容)を理解しなければいけません。また、これまではエージェント頼り、媒体集客力頼りで良かったのが、どんなに優秀な人材でも”ポジションミスマッチ”となってしまうことが増えるため、ダイレクトリクルーティング(スカウトやリファラルなど)でポジションマッチした人を能動的に採用していかないといけません。

となると、現場実務経験があるわけではない人事がそれをすべて理解して採用するのは難しいため、現場社員が自ら採用のフロントに立って面接したり、スカウトを送るケースが必然的に増えてきます。

また、上述したようにTwitter経由などSNS採用やリファラルなどの人事管理下以外のチャネルが多角化してきたため、現場社員がいかに採用に関心をもっているか、SNSやメディア、イベントなどで社外発信しているか、外部交流をもっているかということも重要になってきます。

③人事のPM化

これまの人事は、採用のフロントマンとして「面接で候補者をアトラクトする、見極める」「人材紹介エージェントと関係性を築く」といったことが業務の割合の比較的多くを占めていましたが、「施策の取捨選択や優先順位決定」「社内を巻き込む」「オペレーション運用管理」…といった、いわゆるプロジェクトマネジメント的な業務比重が高まっていきます。

スクラム採用体制確立のために必要なこと

スクラム採用体制を確立するためには3つのことが必要になると考えます。

①オペレーションの構築と効率化
②データやナレッジの集積/共有/分析/活用
③社員の採用力強化/育成、エンゲージメント向上

①オペレーションの構築と効率化

ジョブ・ディスクリプション作成、選考プロセス設計、現場社員によるスカウト体制、媒体管理、エージェント・リレーションズ…などなど、採用に関わるオペレーション全体をいかに構築するか、個別のタスクを整理/細分化をして、そこから最適化(アウトソーシング、現場への移管、RPAのによる自動化など)していくことで、人事のオペレーション工数を削減し、PM業に集中する環境を作っていく必要があります。

②データやナレッジの集積/共有/分析/活用

手法が増え、管理する媒体やツールが増え…となると、折衝コストや管理コストが増えるため、とにかくDoDoDoという状況に陥ってしまいます。PDCAなんてまわせたもんじゃありません。

候補者の歩留まりデータ管理、候補者情報の関係者への引き継ぎ、面接マニュアル・構造化質問集の作成など、データやナレッジを集積し、それをもとに採用手法を選択していったり、採用オペレーションを改善していく必要があります。

③社員の採用力強化/育成、エンゲージメント向上

採用に関わる人が増えていくと、どうしても属人的になり、一定の選考体験クオリティを担保することができなくなったり、「それ先に知りたかった!そしたらもっと上手くやれたのに!」といった二度手間、三度手間が発生しがちです。面接マニュアル・構造化質問集作成、定期的な勉強会開催など、現場社員の採用力を強化していく取り組みが必要です。

また、人事の立場としては「社員がリファラル採用に積極的じゃない!」「早く採用してと言われるばかりで全然協力してくれない!」と思いがちですが、「それ以前に人事側からどれだけ情報提供できているんだっけ?」というのは考えてみた方がいいです。”わからないから、何をしていいかわからない”という状態な場合も多く、人事側から情報提供、発信、協力を仰ぐなどやらないと採用へのエンゲージメントが高まるはずもありません。

※偉そうに書きましたが、②と③については自分も最近まで全然うまくやれておらず、ようやく最近ちょっとずつ取り組んでいる状況です。

こういった状況のなかで「リクルーティング・イネーブルメント」という役割について考える機会が増えてきました。

あまり聞き慣れないワードだと思いますが、最近SaaSの文脈で「セールス・イネーブルメント」という考え方が広まってきているので、その考え方を採用に応用したものが「リクルーティング・イネーブルメント」です(ワンキャリア寺口さんと飲んでいる時に話していて「これだ!」となりました。寺口さんありがとうございます笑)。(追記:LINE青田さんに教えてもらいましたが、海外ではすでに「リクルーティング・イネーブルメント」という考えはあるそうです。)

リクルーティング・イネーブルメントについて話す前に、セールス・イネーブルメントについてもふれておきます。

前提知識:SaaSビジネスにおけるセールス・イネーブルメントの役割重要性

セールス・イネーブルメントに関する考え方も参考に記事がたくさんあったので引用してま。

セールス・イネーブルメントとは

セールスイネーブルメントは、トレーニング・コーチングや各種ツール、アプローチ方法などの営業施策をトータルで設計し、それぞれの施策がどれだけの成果に繋がっているのかを数値化して、その数値を用いて次の施策を分析し、効率化・最適化を図る方法です。
引用:https://product-senses.mazrica.com/senseslab/business-efficiency/sales-enablement

セールス・イネーブルメントが重要になった背景

・SaaS、サブスクリプションビジネスの伸長→売り切りではなくチャーンレート(解約率)を重要指標におくケースが増えてきた
・フィールドセールス、インサイドセールス、マーケティング、プロダクト、カスタマーサクセスなどの役割分担
・セールスのプロである営業だと全体設計をしたり、オペレーションを最適化するのは専門外
・プロダクト開発やマーケティング、CSを理解したうえで、営業活動を最適化していく必要がでてきた
参考:https://bell-face.com/sales-tech-hub/sales-knowledge/sales-enablement/

セールス・イネーブルメントの目的/メリット/ポイント

<目的>
・営業教育
・顧客獲得
・ツールへの投資の視点

引用:https://product-senses.mazrica.com/senseslab/business-efficiency/sales-enablement
<メリット>
・営業力向上と平準化
・施策毎の貢献度の可視化

引用:https://www.innovation.co.jp/urumo/sales_enablement/
<ポイント>
・全体設計
営業組織内だけでなく営業が関わる領域全てを視野に入れ、施策を設計する
・数値の可視化
施策に対してどれだけ効果があったか、あるいは無かったかを把握して、最適化につなげていく
参考:https://www.innovation.co.jp/urumo/sales_enablement/

セールス・イネーブルメント実現にむけて

<含まれる範囲>
・営業支援とコーチング
・営業プロセス
・営業メソッド
・技術・営業支援ツール・リソース
引用:https://bizhint.jp/keyword/271630
<SFAによる営業情報の蓄積の一例>
・売上実績や予測
・受注率
・営業案件の進捗率
 →営業活動の成果を定量的に把握
・トレーニング履歴
・フィールドコーチング履歴
・活用したコンテンツの履歴
 →人材開発支援を活用した情報
引用:https://product-senses.mazrica.com/senseslab/business-efficiency/sales-enablement#i-4

といった内容です。

さて…
・スクラム採用
・セールス・イネーブルメント
について述べてきました。

前置きがめちゃくちゃ長くなりましたが、いよいよ本題の「リクルーティング・イネーブルメント」について書いていくので、もう少しお付き合いください。

スクラム採用を実現するための「リクルーティング・イネーブルメント」

改めて、スクラム採用についておさらいです。

<スクラム採用の3つの要素>
①ジョブ型(ポジションマッチ)採用
②現場社員による採用活動
③人事のPM化

<スクラム採用実現のための3つの取り組み>
①オペレーションの構築と効率化
②データやナレッジの集積/共有/分析/活用
③社員の採用力強化/育成、エンゲージメント向上

スクラム採用では、ジョブ型(ポジションマッチ)採用が前提となるため、ポジション理解をしている現場社員主体の採用体制を作ったり、人事がPMの役割を担ってオペレーション構築したり、プロジェクトを推進していくことが必要になります。そういった中で「リクルーティング・イネーブルメント」という役割が重要になってきます。

この前提条件や背景を踏まえて、前述のセールス・イネーブルメントの情報を参考にまとめてみます。

リクルーティング・イネーブルメントの定義

ジョブ・ディスクリプション作成、選考プロセス設計、媒体選択、ダイレクト・リクルーティング、エージェント・リレーションズ、採用広報、選考官のトレーニング・コーチ、各種ツール・手法の導入など、採用活動やオペレーションを全体設計したうえで、各施策を数値化して、その数値を用いて次の施策を分析し、効率化・最適化を図る方法です。

リクルーティング・イネーブルメントの目的

・候補者の採用成功
ジョブマッチ、カルチャーマッチした人材を採用することが主目的。
・採用に関わる人の採用力強化/育成
現場社員や人事など、採用に関わる人の採用活動への理解促進、面接力向上、スカウト精度向上などを行う。
・リファラル採用活性
全社員が一丸となって採用活動に取り組む雰囲気醸成、募集中のポジションの社内アナウンス、社員の発信や外部交流の活性化によってリファラル採用を増やす。
・ツールや媒体、手法への投資の視点
採用媒体、エージェント、HR系ツールなど、どこにどれだけコストをかけていて、投資対効果は合っているのかなどを数値をもとに分析、見直し、取捨選択を行っていく。

メリットとポイント

メリット
・採用力向上と平準化
・施策毎の貢献度の可視化
ポイント
・全体設計
・数値の可視化

含まれる範囲

・採用計画作成
・ジョブ・ディスクリプション作成
・選考プロセス
・採用手法:自社採用サイト応募、採用媒体、スカウト、エージェント、リファラル、SNS、etc
・現場社員の育成とコーチング
・技術、採用支援ツール・リソース

蓄積する情報の一例

・ジョブ・ディスクリプション情報
・候補者情報
・選考歩留まり管理(ポジション別、チャネル別、etc)
・スカウト情報(送付数、返信率、内定率、etc)
・人事や社員の採用力、面接力スコア化
・各業務にかけている工数管理
・面接マニュアル、構造化質問集

以上です。

まとめると

スクラム採用体制とリクルーティング・イネーブルメントの役割

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セールス・イネーブルメントとリクルーティング・イネーブルメントの比較

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最近考えるようになったのでまだちゃんと思考整理しきれていないのと、まだ自分自身が全部実現しているわけではないので、すでに同様の取り組みをされている方がいたら、ぜひフィードバックを頂きたいです。

実際自分が採用人事になってから取り組んできたことを振り返ってみて、今回考えを記事としてアウトプットしてみて思うのは、

・採用人事に求められることが複雑化/高度化しているため、これまでの採用人事スキルや経験”だけ”ではうまくいかない。というか1人に全部を求めるのは間違っていて、人事の中でも役割分担したほうが良さそう。

・”人事だけが頑張る”、”現場社員に採用に協力してもらう”といった考え方ではダメで、”現場社員が採用しやすい体制をつくって全力支援する”のが当たり前というように、採用に対する価値観の根本を変える必要がある。

・とはいえ、現場任せの采配役に終止するのではなく、「採用のプロフェッショナルとして、的確・迅速に経営や現場のニーズに応える、採用にコミットする」というところに、採用人事としての誇りと責任を持つ。

といったところでしょうか。

スクラム採用体制に切り替えていくと決めて、ようやく少しずつ動き出したところなのでまた色々取り組んでいくなかで、思考整理されたり、実績として出せるものができたらまた記事にしようと思います。

最後に:HRBP募集してます

デジタルマーケティング(BtoB)、スマートフォンメディア(BtoCメディア)、モビリティサービス(BtoCサービス)という異なる3つのドメイン・ビジネスモデルで事業展開をしているので、より人事が各事業戦略にそって機動的に動けるようにするため、「HRBP体制」を作っていくことにしました。

事業部所属の人事として、事業戦略の達成のために必要な採用/組織周りに関する業務を遂行する。事業責任者や各マネージャーとやりとりをしながら、事業全体のパフォーマンスを最大化するのがミッションです。

興味ある方はぜひお話しましょう。それではまた。

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