服を着るとは
服を着るのが恥ずかしい
恥ずかしいと言って
服を着ないのは当然の論外だ
でも服を着るのが恥ずかしい
流行りも好めず
なんとなくこなれた服もろくに着れず
可愛いと思った派手な服を着るのは
人からの目が気になり
結局
人の目につかないであろう
茶色や白の気に入らぬ服を
着ては捨てる
ファッションは自己表現だと誰が言った
ファッションは自己表現だと思うから
好きな服を着るのが恥ずかしいのだ
だって
誰が私を知っている
言葉が通じず
心が伝えられず
もがいていた私を
好きな色も
好きな音楽も
好きな本も
知られるのが恥ずかしい
本当の私を
だから
服を着るのが恥ずかしいのだ
好きなものを着なければ楽しめないなんて
ファッションってなんて難しいんだろう
ああでも、
ファッションが自己表現だと思うから恥ずかしいのだ
好きなものを晒すと思うから恥ずかしいのだ
そんな概念など捨てて
ただ裸体を晒さないための覆いとして
機能に集中すればいいのだ
「女性らしい」服を着るのが
何かを意味する必要もないし
派手な色を着るのも
何かを意味する必要も
さらさらない
今日はずっとウィンドウ越しに見ていた
あの服を買いに行こう
ただのワンピース
何の変哲もないワンピース
でも自己表現だと思えば
買えなかった服
それを着た私に何かを見出すやつなんかには
「あなたの頭ん中の幻想でしょ?」と
心の中で言ってやればいい