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定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第六十四回〉
二〇二四年一二月一〇日
去年のこの時期は韓国にいた。去年の韓国はあまり寒くもなかったし、デモもそんなに多くなく、政治的混乱もここまでではなかった。一年経てば色んなことが様変わりする。
去年のこの時期には韓国の寿司屋でアルバイトをしていた。まともに新人教育をしてもらえず、二回聞けば怒られるような高圧的な職場で心身ともに崩れて連絡一本だけで辞めた。ばあちゃんが亡くなってから全然日も経っていない頃でもあった。よく聴いていたのが君島大空「no public sounds」。本当に最高のアルバムで、何度も何度も聴いたなあ!レコードだったらとっくに擦り切れてしまっているほど聴いた!バイト終わり、泣きながら家に帰るときも、公園で訳もなくしょんぼりしているときも、国立中央図書館からの帰り道も、寒空の下ずっっと聴いていた。
つらい思い出と寄り添ってくれた音楽は聴けなくなるとよく言うが、このアルバムも例に漏れることなくしばらく聴けなくなっていた。全部思い出して脳みそが痒くなってしまう感じがする。気分も落ち込む。好きなのに聴けないのだ。
でも最近になって、また君島大空がすごくいい曲を出していて、それを聴いてみたくなって聴いた。最初は痛みに耐える感じで聴いていたが、冬の朝に料理をしていたら冷たさを超えて手の感覚を失うのと同じように、すべての曲を聴けるようになった。去年のこの時期のように、ただ単に救われるような気持ちで聴くことはもう2度とできないにしても、聴きたいと思えば聴けるようにはなった。
以下、大好きなのに聴くたびに心臓が潰れるような気持ちになる素晴らしき楽曲たち。特にバクバクな2曲。でも支えになってくれてありがとう〜。
二〇二四年一二月一五日
10月から通信制大学に通い始めた。一年間だけだが頑張る。短期バイトを一日でやめ、その後アルバイトを始めた。忙しいし、眠いし、本もいっぱい借りちゃって、どこに作業する時間があるってんだよ。
でも一週間に2日分は絶対作業すると決めている。それはなんとなく守れている。ただ、もっと頑張る必要がある。日誌もまたまたサボりまくっている。なのに映画だけは定期的にちゃんと観ている。韓国で映画館に通い詰めた癖を抜けないようにする方がいいかなと思って、月に2、3度は必ず映画館で観るようにしている。
作業は進めています。本当に。亀の歩みより遅いけれど進めています。
跪いて叫ぶような気持ちでこう書いている。誰に向かって?
二〇二四年一二月一九日
そうだ、作業進捗報告をしよう!
▼テキストデータ作成_終わった作業▼
『朝鮮と建築』掲載テキスト
・《異常ナ可逆反應》他6篇テキストデータ作成
(《破片ノ景色——》、《▽ノ遊戯》、《ひげ——》、《BOITEUX・BOITEUSE》《空腹——》)
・《鳥瞰図》テキストデータ作成
・《三次角設計図》テキストデータ完成
・《建築無限六面角体》テキストデータ完成
▼テキストデータ作成_未完作業▼
なし
▼形態批判_注釈作業_終わった作業▼
・《鳥瞰図》形態批判作業(3周完了)
▼形態批判_注釈作業_未完作業▼
・《異常ナ可逆反應》他6篇 形態批判作業(現在2周目)
・《三次角設計図》形態批判作業(未着手)
・《建築無限六面角体》形態批判作業(未着手)
▼注釈批判_注釈作業_終わった作業▼
・《鳥瞰図》注釈批判作業(3周完了)
▼注釈批判_注釈作業_未完作業▼
・《異常ナ可逆反應》他6篇 形態批判作業(現在2周目)
・《三次角設計図》注釈批判作業(未着手)
・《建築無限六面角体》注釈批判作業(未着手)
これに加えて、コツコツではあるが校勘学や書物学、編集文献学の本を読んだりしている。返却期限が2週間(延長してもプラス2週間)なのでなかなか読み進められていない。
あと趣味で映画史の勉強をしたり、小説も読んだりすることを考えれば、人生の短さを嘆かざるを得ない。そろそろまた遺言書を作成しなおさなければいけない。
たいへんな、たいへんな作業だなあ。
キム先生にもそろそろ連絡しなくてはいけない。