「ピクニック・アット・ハンギングロック」4Kレストア版鑑賞。「原作も映画も、映画も原作も!」
2月、バレンタインの日にあわせて「ピクニック・アット・ハンギングロック」の記事を書いたが、今月上旬から4Kレストア版が公開中であるということをまったく知らなかったため、さっそく見に出かけた。
この映画は、テレビとDVD、そして、古書店で購入したパンフレットでしか知らなかったため、一度スクリーンで見てみたい、と思っていた。
つまり、今回、夢が叶ったということだ。
パンフレットを購入し、特典のポストカード(白い服、黒い靴下、黒の編み上げ靴のミランダが、岩山にたたずんでいる)とチラシも手に入れて、帰宅した。
では、大きなスクリーンで鑑賞してどうだったか、というと、パンフレットに金原瑞人が書いているように、「原作も映画も、映画も原作も!」という感想を抱いた。
ミランダ演じるアン=ルイーズ・ランバートの美しさ、少女たちの生活の描写に恍惚となりつつも、今回、映画を見て最も印象に残ったのは、「音」であった。
風の音、鳥の声など自然の音が聞こえるのは当然として、何よりも印象的なのは、映画の大部分で、地鳴りのような音がずっと、聞こえ続けていることである。
今回購入したパンフレットによると、ピーター・ウィアー監督は、「スローにした地震の音を使用した」とのことで、「あの低い囁きをを聞いたなら不安な気持ちを覚えるでしょう」と言っている。
その音は、岩山そのものから聞こえてくる太古からのメッセージのようにも思えるし、自然からの警告のようにも聞こえる。
メッセージ?警告?どんな?
オーストラリアで、英国人たちは、「優雅」にティーパーティーをひらいていている。しかし、自分たちのルールや生活そのものを強引に別の国に移植しても、その土地を、自然を、本当に征服することなどできないのだ、というような?
とにかく、この地鳴りのような音が鑑賞者の心になんらかのかたちで働きかけていることは、たしかである。
このように、映画を見ることでしかできない体験もあるわけだが、やはり、原作も読まなければジョーン・リンジーという作家の創りあげた世界の本当の美しさは堪能できない、と思った。
ジョーン・リンジーの書いた文章は、読んでいるだけで、映像がありありと浮かんでくるし、音を聞こえてくるし、また、木々や草花、少女たちが口にする飲み物やケーキの香りまで嗅ぐことができるような気がするくらいに、素晴らしいのだ。
また、アップルヤード学院の教師や使用人がずっと後になってこの少女失踪事件のことをふっと思い出すという、原作でしか味わえない、美しいシーンもある。
もし、原作を読んでいないなら、読むことをおすすめする。
映画も見て、原作も読んで、の繰り返しによって、「ピクニック・アット・ハンギングロック」という作品はその人の中でますます美しいものになってゆくだろう、と思っている。