メアリー・ポピンズと、クリスマスのお買い物。
この時期になるとやはり、クリスマス関連のものが読みたくなる。
そういえば、「風にのってきたメアリー・ポピンズ」に、ジェインとマイケルがクリスマスの買い物をする話があったはず、と思い出し、再読してみた。
この買い物には、もちろん、メアリー・ポピンズも一緒。
三人は、「世界じゅうで一ばん大きな店」へやってくる。
ジェインもマイケルもわくわくしている。
もちろん、メアリー・ポピンズも。(表情には出さないが、店のウィンドウにうつっている自分の姿にうっとりしているし、彼女なりにこの外出を楽しんでいるのがわかる。
ジェインとマイケルの買い物の内容が、めちゃくちゃでおもしろい。
ジェインは、おかあさんに小さな人形の乳母車、そして、ふたごの赤ちゃんジョンとバーバラには、ロビンソン・クルーソーの本。
前者に関しては、たしかおかあさんが欲しがっていた、そして後者に関しては、ふたごが大きくなったら読める、というのがジェインの言い分なのだが・・・。
要するに、ジェインよ、あなたが、それを「貸してもらって」、使いたい、読みたいだけなのよね?と聞きたくなるような、お買い物。
そして、マイケル。
おとうさんには、ぜんまいじかけの汽車。おかあさんには鉄の組立おもちゃ。(やはり、ジェインと同じ動機?)
それからふたごに、ヘアピンのたば。まだ小さい赤ちゃんたちにヘアピン!
いつも部屋ばきを履いているブリルばあやに編みあげのくつひも・・・。
さて、この楽しいお買い物が終わって、帰ろうとしたとき、店の回転ドアのところで、ぐるぐるまわっている女の子を発見する。
「空からひきさいてきたかと思うような、ふんわりした、細長い青いもの」を身につけただけのこの不思議な女の子は、回転ドアから脱出するとジェインとマイケルのところへやってきて、わたしに会ってうれしいでしょ?と声をかけてくる。
彼女の名前はマイア、「プレアディスの星のきょうだいの二ばんめ」の娘で、きょうだいのためにクリスマスプレゼントを買いに、空から地上へと、やってきたのだ。
当然、メアリー・ポピンズとは知り合い。
そのため、ジェインとマイケルは彼女のお買い物につきあうことになる。
マイアは、きょうだい全員のことをよく考えて、そして店員のアドバイスも聴いて、素敵なプレゼントを選んでいく。
普段、空にいるくせに、なかなか、買い物上手なのだ。
しかし、お代は、払わない。
「はらう?だれもはらわないわ。はらわなくていいんでしょ?どう?」とキラキラした目で言うマイアに店員は、「けっこうでございます。」と答える。
この「クリスマスの買い物」を読んでいていちばん楽しいと思うのは、やはり、街や店の中の描写だ。
どこもかしこもクリスマスの雰囲気に満ちていて、ジェインやマイケルでなくても、わくわくする。
岩波少年文庫の269ページには、空へと帰ってゆくマイアを見送るメアリー・ポピンズ、ジェイン、マイケル、そして、大騒ぎしている街の人々や警官の様子が、描かれているのが、私はこの挿絵がとても好きだ。
しかし、はるか上のほうからは、マイアの笑い声が聞こえてくるのみ・・・。
ここで騒いでいる人々はみんな、クリスマスの買い物にやってきたのだろう。
彼らは用事をすませて家に帰ってから、「今日、とんでもないものを見たよ・・・」と家族に話すに違いない。
その人は家族の誰かから、夢でも見たんじゃない?と言われ、そうかな?と答え、そしてすべて忘れて、みんなで楽しく夕食を食べるのだ。
この「事件」を目撃した人々、空に帰ったマイア、ジェイン、マイケル、メアリー・ポピンズ、それぞれ、どんなクリスマスを過ごすのだろう?
読み終えたあとも、あれこれと想像してしまう。