紫陽花が咲く頃に
紫陽花が咲く季節にソロライブをするようになって、もうどれくらい経つだろう。今思えば、これを始めた頃からソロで全国を回るようになった気もする。私にとって紫陽花の季節になれば思い出す、毎年楽しみにしているライブだ。
今回も映像から始まったライブ。静かなピアノの音に合わせて、てっちゃんが切り取った一瞬一動がゆっくりと流れていく。電車からの風景、満開の紫陽花、風の音、光、笑い声、祈り、風鈴、別れのとき、じゃれ合った日々、遺されたもの。それは一つ一つを丁寧に集めていくような感覚だった。
数年前からピアノのサポートが入り、それぞれの色をもったピアニストが彩りを添えてくれている。今回のONYさんは同い年ということもあり、容赦なく切り開いていくような感じがとても新鮮で、正直最初の2曲が終わるくらいまで「今日は、、本多哲郎ソロライブだよね、、?」と疑いそうになるほど、新たな一面を見せてもらった気がする。ギターとピアノと声のシンプルな音が融合するとこんなにも鮮やかな世界になるのかと、一曲一曲終わるたびにワクワクした。そして二人とも、とにかく終始楽しそうだった。それが一番印象的だった。
力強いうたも優しいうたもリズミカルなうたも、すべて『本多哲郎』というジャンルにしてしまうような歌いっぷりは、ソロを始めて色々な経験をして一人で見てきたこと感じたことを吸収して確立させた唯一無二のソロの世界だった。
個人的に好きだったのは、曲を作ったときの話をしたあと、ピアノのONYさんが「演奏が変わりそうです」と言って弾き始めた「風鈴」。どういう風に変わったのかはわからないけど、私の中にある「風鈴」の世界観にぴったりとハマって、とても温度感空気感のある一曲だった。
最後は、この日に向けて作ったという新曲「フィルム」。しまい込んでいた写真の自分は輝いたまま止まっていて、そんな過去の自分に背中を向けず胸をはれるような曲を作ろうと思ったと話してくれた。
想像していたよりもアップテンポだったことに少し驚いたけど、自分の中にも同じような記憶があったせいか、あの頃を思い出して少し切なくなった。
くだらないことで笑いあったり、くだらないことで喧嘩したり、喜びあったり、怒ったり。くだらない日々を二人で過ごすことが何よりの幸せだったこと。そんな思い出たちをいつの間にかバラバラにしてしまっていたこと。でも心のフィルムに映し込んだ思い出たちは、光を当てればいつでも浮かび上がってくるんだなと。曲を聴きながら思い出の切れはしを拾っていったら、切ないけど あたたかな気持ちもあった。確かな時間をちゃんと歩いてきたんだと思えた。
誰かを思って作られた曲は、
きっと別の誰かの物語と重なると思う。
また一つ、大切にしたい曲ができた。
「フィルム」、名曲です。
ライブ中にも話題に出ていたトライアスロンは見事に完走したそうだ。挑戦したいことをちゃんと口にする、そして失敗を恐れずに立ち向かう。自分もそうでありたいと思うけど、歳を重ねると簡単そうでなかなか出来ないことだと思う。だからこそ、ずっと応援したいと思えるのだ。
変わらず続けていくために変わっていく。また来年も紫陽花が咲く頃に、新しいてっちゃんに会えるのを楽しみにしている。
「紫陽花が咲く頃に」
2022.6.19 大名スクエアガーデン
紫陽花
オルゴール
太陽
ジェット機
パレード
がんばってんだなぁ
月明かりをポケットに
あこがれ
風鈴
影
アルコール
カレーライス
ジグソーパズル
春が咲いたら
フィルム(新曲)
【会場限定EN】
雨上がりの空(アカペラ)
声なんてハッキリ覚えてないなぁ、、と思っていたけれど、寝ぼけた「おはよう」をふと思い出してしまって、なんだか胸がギュッとなった。
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