山開き登山の引率を終えて「あづまね山の日」制定に向けて思うこと
町のシンボル東根山
私の暮らすS町には東根山という山があります。町の東西をいくつもの山に囲まれているS町ですが、中でも東根山は町のシンボル的な存在の山です。東根山は地元の小学生が遠足で登ったり、トレイルランニングの大会が開催されるだけでなく、麓の温泉や湧水には町内外から多くの人が訪れ、広く人々に親しまれています。
今年、東根山の標高928mにちなんで9月28日を「あづまね山の日」に制定しようという動きがあります。
公民館の恒例行事「東根山登山・山開き」に引率してみて
町では毎年6月の第1土曜日に東根山の山開きと公民館主催の東根山登山を開催しています。趣味で色々な山を登り、森林インストラクターの資格を持つことから、ありがたいことに昨年からスタッフとして参加者の引率を任されることになりました。
引率を2年経験してみて、特に未就学児を連れて東根山登山をすることについて感じたことがあります。
標高は1000m未満だが、未就学児を連れて登るにはとても大変な山
登山口から山頂までの歩行距離は4.8km。平坦な道でも未就学児に歩かせるには大変な距離。それを山道となれば…
リフトやゴンドラ、近道があるわけではないので、途中でお子さんが音を上げた場合は親が担いで下山するしかない
どうしても未就学児にも登らせたいなら、親御さんに余程の登山経験と体力・覚悟が必要
無理やり登って、親子で「大変だった、辛かった」という思い出にしてほしくない
これらの事を思うのは、東根山登山で大変な思いをした家族を何組も見たからです。もし「あづまね山の日」が制定されたことで、幼いお子さんを連れた無茶な登山を計画し、親子で大変な思いをしたり、怪我や事故が発生して東根山を嫌いになってしまったらとても悲しいです。
幼い子供からお年寄りまでが楽しめる山に
私の好きなマンガ「岳」の中で、主人公がエベレストのベースキャンプで嬉しそうにしているシーンがあります。
「ベースキャンプから頂上までぜんぶエベレスト」
それと同じように、東根山も麓から頂上までぜんぶが東根山です。
山頂まで行かなくても、季節の草花、山菜、野鳥のさえずりなど山の自然にはたくさん楽しむ要素があります。東根山を「登るだけの山」ではなく「自然を楽しむ山」として幼い子供からお年寄りまで多くの方々に利用してもらいたいのです。
東根山の麓に「森林散策・自然観察エリア」を
残念ながらS町には、森林公園や自然公園のような気軽に自然に親しめる公園がありません。元々農業が基幹産業の町で、昔からある民家にはエグネと呼ばれる屋敷林があるので、わざわざそのような公園を造らなくても町民の日常は自然と共にありました。ところが近年では農家の数がかなり減少し、町民のほとんどは町の中心の住宅地に暮らしています。もちろん住宅地の民家にエグネはありません。多くの町民が自然に親しむ機会を失っています。
幸いにも東根山麓の温泉のすぐ裏側には「令和の森」という環境保全林(町有林)があります。この令和の森を中心に、森林散策のコースや自然観察の場を整備した「森林散策・自然観察エリア」を造れたらどんなに良いことでしょう。山頂を目指すだけを目的とせず、東根山を楽しむ目的が増えます。どんな年齢でも東根山を楽しむことができます。
あづまね山の日制定が「森林散策・自然観察エリア」を造るきっかけになってほしいと願っています。