ひめいち 【Vol.7 金木犀号】
◇ひめいちリテラシー
その本来の意味からひめいち攻略法を探ります。
■記述式問題を考える
記述といえば小論文というイメージですが、例年試験の最後に出題される小論文問題だけではありません。
例えば、昨年の18回試験では、93の問題(解答の数)があって、そのうち概ね20文字以上の文章で書かなければならない問いが15ありました。(ひめいち倶楽部調べ)
割合にすると16%ですが、配点を考えると結構なウエイトを占めます。
配点は非公開なので推測でしかありませんが、少なくとも30~40点分はあると考えます。(ひめいちの合格ラインは80点)
しかも過去10年のひめいち問題を見返すと、最終小論文の他にも200文字程度の説明文を求める長めの記述問題が6回も出題されていました。
二年に一回は小論文が複数、という印象です。
記述を苦手とする挑戦者にとっては、「そんなご無体な~!」ですよね。
はい、「ひめいちは、知識だけでは合格できない」ともいえるのです。
ある程度のリテラシーを持っていなければ合格に近づけない。
でも、それほど怖じけづくことはありません。必要となる知識自体は2級までと同じ方向にあるのです。
国語をちゃんと勉強したこともなく、文章スキルもたいして持ち合わせていない案内人でも、ここ数年はなんとか、ひめいちと勝負できているのです。
問題を読み飛ばしさえしなければ、ですけど。(前号参照)
強みは過去何度も挑戦してきたという経験です。(自慢にならへんけど)
知らず知らずにリテラシーが身についているのです。たぶん。
前置きが長くなりましたが、ひめいち記述式問題の傾向と対策と心構え。
ここからが今号の本番です。
(1)基本は読み手の立場になって書くこと
読み手のいる文章すべてにいえることです。レポート、企画書、稟議書、始末書、すべては、読む相手に分かってもらうために書きます。
読み手(今の場合は採点者)に納得してもらえなければ、どんなに一生懸命に書いても点にはなりません。
また、試験の場合は前提として、問題の意図を正確に読み取っておく必要があります。これは小論文に限りません。すべての問題文は、慎重に読むことを心がけてください。
早とちりや読み違いは、せっかくの知識を台なしにしかねない。
リテラシーは読む能力も要求しているのです。
例えば、
という問題がありましたが、読み手としては、"あなたの意見" が賛成だろうが反対だろうがどうでもよいわけで(それは言い過ぎ?)、結論までの過程に間違いがなく納得できるものであれば正解なのです。
世界文化遺産は「顕著な普遍的価値」を有する建造物や遺跡、景観という大前提を回答者が理解する。それを基にこの問いについて判断し、読み手に伝えられれば、ほぼ正解ということになるはずです。
この場合の読み手(出題者側)の意図とは、「対象四城の文化財的価値が世界文化遺産に相応しいレベルにあるのかないのか」ということです。
これを、「犬山城と彦根城は規模的にちょっと小さい」とか「松本城は黒くて見栄えもするから」とかだけでは、”文化財的価値を踏まえて” の判断にはなっていません。
※この場合、どんな文化財的価値からアプローチするかは種々あると思いますが、案内人の場合はこう考えるを前号に記していますので、よければ参考にしてください。
読み手に理解してもらえる解答文。これを書くには、まず相応の(納得させることが出来る)知識が必要です。そして、その知識を核にして、わかってもらえる文をできるだけ具体的な表現で書くという練習をしなければなりません。
基本は知識、あとは練習です。
(2)時間配分のこと
当たり前ですが、記述式は書いてなんぼ、です。
空白で答案しても点はもらえない。何が何でも自分の持っている知識を書かなければならない。が、これには時間が必要です。
ひめいち試験の制限時間は100分。1時間40分です。結構あると思いがちですが、経験からいえば短い。毎回毎回、脳みそがマラソンしているような気分になります。答を書いたのは良いが、見直して、「こらあかん」と消しゴムで全消し、という事態も度々です。(記述式だと消すのもたいへんです)
案内人の場合は、試験開始時に試験問題の全体を見渡します。
(一度だけこれを怠り、ひどい目にあったことはもう書きません)
これは、問題の難易度を測るというより、時間配分を計る感じです。
「わっ!この問題難しそうやな」というのは、その時は思いません、考えるのはその時になってからです。
で、最後の小論文にたどり着く頃には、よほど順調でも30分前。いくつかの問題で手間取ったら15~20分前くらいでしょうか。
問題を読み、フルスピードで解答文を頭の中で組み立てます。
時間配分対策としては、過去問を入手し(商工会議所さんで過去5年分が販売されています)、模擬テスト的にやってみるのが手っ取り早いです。
(3)文章の組立のこと
試験本番の最終、20~30分で解答文を組み立て、書き終えなければなりません。
まず結論をはっきりと定めます。いくら時間がないといっても、書きながら結論を探すというのはろくな結果にはならない。
小論文問題には様々なパターンがありますが、次も実際の小論文試験の例です。
この回の結論(なぜ両御坊が姫路にあるのか)は、自ずから定まっていました。
元々の英賀御堂から戦乱で亀山の地へ~本願寺の東西分裂から、当時の藩主池田輝政の(東の)教如との対立で、西本願寺派へ~本多忠政の藩主時代に東本願寺(大谷)派である船場本徳寺を建立、というのが幹の部分。
あとは、三木氏、空善(蓮如の門弟で英賀御堂を開山)、秀吉、家康、浄土真宗の大まかな歴史など、枝葉の部分を絡めながら時系列で指定の300文字近くまで持っていきます。
ということで、この回の小論文はすべて知識が解決してくれました。
「あなたはどう思うか」がない場合です。
「あなたはどう思うか」と訊かれた場合は、できるだけロジカルに自分の考えを持っている知識から導き説明します。
おそらく、結論(あなたの考え)より、そこまでのプロセスに採点者は目を向けるはずです。
この場合は、小論文のセオリー通り、結論を始めに持って行くことをお勧めします。読み手にも伝わりやすいし、文章も組み立てやすい。
しかも、制限時間切れで小論文が尻切れトンボになっても、(結論はすでに書いているので)いくらかの得点が貰えるかもという期待も出来ます。
ちなみに過去5年の小論文問題では、「あなたはどう思うか」が含まれる設問は3つ、知識のみを問われる問題は上の例を含めて2つでした。
(4)指定文字数のこと
過去5年の小論文指定文字数は、200文字が2回、300文字も2回、500文字が1回でした。
いずれも○○字 ”程度で" が付きます。
通常、小論文に対して受験者は、一般的な原則である指定文字数の9割以上~オーバー文字数ゼロ、を意識します。300文字指定であれば、270~300。
しかし、(ひめいち初心者の場合は特に)そこまでの余裕はありません。
たいていの受験者は、原則など構っていられないのです。
指定文字数の半分も書いていないではまずいでしょうが、設問に対して間違っていない内容を示していれば、ある程度の点数はもらえるのではないでしょうか。もらえると思います。もらえるはずです。
文字数よりも内容優先です。当然です。
でも、どうしても規定の文字数で書かなければ自分が許せないという方は、練習してください。トレーニングしかありません。これくらい書いたら○○字程度のはずだというまで。
繰り返し繰り返しの練習で、感覚を体に覚え込ませるのです。
(5)漢字のこと
配点について全く不明な案内人が書くのもなんですが、できるだけ漢字で書きましょうとしか書きようがありません。(なんとも歯切れの悪い)
例えば、
”やぶさめ や ゆみほこさし” と、”流鏑馬 や 弓鉾指”。(三ツ山大祭の神事)
"くしげ なる つげ の おぐし も取らむとも思はず" と
”櫛笥なる黄楊の小櫛も・・・”(万葉集より 播磨娘子)
どちらが読み手に伝わりやすいか、という話です。
どちらが ”姫路検定試験1級合格者の答案としてふさわしいか” という話にもなってきます。
スマホやパソコンとともに生活している現代人、難しい漢字を書くという作業はほぼありません。意識しなければ漢字は覚えられない。
ま、早い話が、せめて出題が予想される漢字の書き取りはしておきましょう、ということかなと。
■まとめます
ポイントを6つにしぼりました。
①まず問いの意図に対して間違っていないことを書く。基本はやはり知識。
歴史問題で諸説あるんだからとオリジナルな新説はいけません。
② 読み手の立場に立って分かりやすくを心がける。
抽象的な表現は避けます。自分だけ分かっていても意味はないのです。
③ 結論をはっきり定めて文章を組み立てる。
ケースバイケースですが、結論は始めに持ってくるというのが基本です。
④「あなたはどう思うか」問題に対しては、事実(史実)を示すなど、できるだけ論理的で説得力ある文章をめざす。
⑤指定文字数は二の次、まずは内容。
⑥できれば、漢字もついでに覚える。
なお、小論文も最近の出来事やブームになっているような時事的問題がよく出題されます。
参考問題集のないひめいち試験。自作問題をつくっての勉強が有効と何回か言ってきましたが、小論文とて同じです。
新聞、雑誌、TVのローカルニュース等でテーマを探して、小論文練習をしてみてください。指定文字数の練習にもなるんですから。
ひめいち記述試験対策は以上です。
どうでしょう、案外簡単にまとまりましたね。
後はこれを実践するだけなのです。ふ~っ
文筆家だけに向けた言葉ではないですよね。
豊富な練習量が実力を高めていく。アスリートにもピアニストにもそして、ひめいち挑戦者にもいえる金言です。
■MYひめいち物語【その七 目指すは警察犬きな子の巻】
失敗は成功のもと、失敗が人間を成長させる、などなど失敗にまつわる格言はたくさんありますが、その直後の本人にしてみれば凹み具合も尋常ではなく、そんな言葉も「なんですの、それ」のふぬけ状態でありましょう。
そんな敗残者を勇気づけてくれたのは、実際に敗北を糧としてついには成功を成し遂げた実話でした。
警察犬きな子。警察犬試験に挑戦すること、実に七度!。
司法試験の受験回数制限は5回までというのに(どないな比較?)、なんという勇気、なんという執念!。(訓練士もエライのですが)
記憶が良い方はおぼえていますよね、一時期話題になりました。
香川県のラブラドールレトリバーで、七回目の挑戦で合格率10%といわれる臭気選別の警察犬試験に合格し、それだけではなく映画にまでなり、それだけでもおさまらず、なんと銅像にまでなってしまったというワンちゃんです。
目指すはワンちゃんというのも、少々お笑いなのですが、マジで勇気づけられたのも事実です。
きな子に比べれば、まだ3度しか挑戦していないではないか。
なんだおまえは、その程度でふぬけになるとは!。
てなことで、4度目の挑戦は、第16回姫路検定試験。2019年です。令和最初のひめいちです。
高い壁が待ち受けていました。
正誤判定し間違いを指摘するという、新手の問題パターンです。
一見して、まあまあ"むずい" 問題かなと思うくらいですが、これが予想外の鬼問でした。しかもいきなり、試験開始直後から。
試験を受ける側の心理としては、ふむふむ、文章に正誤があるのか、
ということは、基本どこかが間違っているのだろうけど、少なくとも①~⑤のいずれか(ひとつかふたつ)は”正”があるはず、と思いませんか?。
全部”誤” だとは思わない。
これが全部”誤” なんですね~、①から⑤まですべて”誤”。
次の手順は”誤”を探すこと。どこが間違いなんだろう・・・、ですよね。
間違いが一つの文章に三つもあるとは思わない。あってもひとつかふたつ、のはず。ふたつ見つければ受験者は、もうないだろうと次の問いに行くのです。
これが、あるんですね~。①と②に三つ、③はひとつ。
恐るべし、ひめいち城!。
四度目の挑戦も負けムードから始まっているのでした。
(試験本番中はこれが相当な鬼問だったことなど思いもよりません)
きな子の話に戻りますが、彼女が受験した臭気選別のテストは、”ゼロ回答” 問題という難問があって、いくつかの選択肢の中に、その臭いのものがない、つまりは答がない(布をくわえてこないのが正解)というのがありました。
素直で律儀なきな子はこれによく失敗したそうです。
はい、私もきな子と同じ素直で律儀な性格なのでした。
間違い探し問題の(それぞれの)配点は少なかったと思いますが、合格が80点以上のひめいちにとっては、数点が合否を左右します。
もっと疑ってかかるべきだったと、また反省。
次問はこの回の試験で、思わずうなってしまった傑作といえる問いです。
これらのキーワードだけで、作品名/作家を当てるのです。
どのキーワードも、物語のあらすじだけ理解している、ではなかなか分からない。それぞれを読み切っている、もしくは印象として焼き付けている人にしか解けない問題です。
読んでいない人にとっては「おちょぼって、なんやねん!?」ですが、一度でも読んでいれば「おお、千姫の侍女、松坂局のことや」と思い出すのです。地元にゆかりの文学作品、読んでおくべし。
その他、この回はいつも以上にアクの強い出題が多かったように思います。
【 】は解答
そして、最後の小論文は、
といったものでした。
・黒田家が織田から毛利方に寝返れば、官兵衛は助かるかも知れない。
・その場合、松寿の命はない。
この時の黒田家(官兵衛の父、職隆)の決断は、従来からの大義を貫くというもので、その後の黒田家の命運を決定づけたともいえるものでした。
これを「あなたはどう思うか」をからめて、20分ほどで300字程度にまとめる。これ、結構骨の折れる作業です。
ということで、この回の挑戦、雰囲気的にお分かりだと思いますが、
(27人の挑戦者とも)ひめいち城を攻め落とすことはできませんでした。
第16回姫路検定1級試験は、知識力、読み取り能力、推理力を要求されたこれまでにない高難度の試験でした。ひめいちは進化?しているのです。
でも、まだきな子まで3回もあるもんね。
(次号に続きます)
■演習問題 [黒田氏]
前項の小論文でもテーマとなった官兵衛で広く知られた黒田氏です。
黒田氏の出自といえば、近江国黒田(現長浜市)が一般的ですが、はっきりとは分かっていないようです。(例えば、現西脇市の黒田庄町等も候補地)
同様に、黒田家が財をなした目薬伝説とか、官兵衛足なえ説も賛否両論あります。
謎が多い、というのもそそられますね。
□次号予告
・(試験本番まで)ラスト3ヶ月!の過ごし方
・MYひめいち物語 【その八 ータイトル未定ー の巻】
・演習問題 [豊臣から池田氏へ]
では、また次号で。
ありがとうございました。