『Triennale Game Collection』ゲームで味わうアート
公式サイト『Game Collection Vol. 1 | Triennale Milano』
2016年発売、無料で楽しめるミニゲーム集。
元々は2016年にイタリアのミラノで開催された美術展の出展作で、収録される5点の作品は全て「アート」に主軸が置かれている。
現在はPC向けにSteamで、スマートフォンやタブレット向けにiOS、Androidで、いずれも無料で配信中。操作は統一されているため、PC版は全てマウスのみで可能。
Steam:Triennale Game Collection
iOS:Triennale Game Collection
Android:Triennale Game Collection
この記事ではSteam版を紹介。
収録作品の解説
収録されているのは5作品、それぞれの内容と制作者の紹介。
Game 1『Il Filo Conduttore』
画面に出る「紐」を引くことで様々なイベントが起こる、インタラクティブムービー。
制作:Mario von Rickenbach / Christian Etter(スイス)
他の作品:Plug & Play(Steam) / KIDS(Steam)
と共に、制作者による作品とエピソード紹介記事
動かすと何かが起こり、次々と場面が変わっていく、それをいじるだけでも面白い。制作者の作品『Plug & Play』『KIDS』と共通する。
Game 2『L.O.C.K.』
最初、画面に現れるのは1本の樹木。画面をダイヤルのように回すと樹木は遠ざかり、映像が万華鏡のように目まぐるしく変わった末、全く別の世界に到達する。
また、円の中に時折「TERRA」「AERIS」など文字が見えるが、ラテン語で書かれていて訳すると「地球、空気、火…、太陽…」と続き、最後は「EMPIREVM(帝国)」となっている。
世界の全ては地球と人類を中心に作られているという、かつて想像されていた宇宙の形に基づいている。
制作:Tale of Tales(ベルギー)
他の作品:The Graveyard(Steam) / Sunset(Steam)
「Tale of Tales」はベルギー在住時、アートを主軸としたゲームを製作していたが、2015年発売の『Sunset』を最後にゲーム製作から撤退。現在はイタリアに移り住んでアート活動を続けている。
Game 3『Neighbor』
舞台は砂漠にできた巨大なクレーター、そこに建造物や家具、モノリスのような物体が置かれている。作業台で何かを作る、机でポエムを書くなどできる。
制作:Cardboard Computer(アメリカ)
他の作品:Kentucky Route Zero(Steam)
この作品について、当時のメディア記事がある。
これは目的を提示されず、様々な行動で世界を味わうゲームということ。これは制作者の作品『Kentucky Route Zero』と本質は完全に共通している。
Game 4『A Glass Room』
数多くの「思い出の写真」が映し出された部屋をさまよい、特定の記憶を呼び起こす。
マウスのドラッグ操作で上下左右に移動、特定の場所で画面下にあるゲージが振れるので、ダイヤル(少し大きな丸印)をドラッグでゆっくり回すと、どこかで「思い出」が形になる。そこで画面を下にドラッグすると「記憶が1つよみがえる」、それを4つ見つけることが目的。
人の記憶はぼやけていて簡単には思い出せない、そんな感覚をゲーム化したもの。
制作:Pol Clarissou(フランス)
他の作品:NUTS(Steam) / Fire Place(Steam)
Game 5『The Worm Room』
FPS視点の探索ゲーム、というより、ウォーキングシミュレーターで、終わりがない植物園の中を延々とさまよう。
目的は、歩き、美しさを眺め、学ぶこと。それは、植物園を訪れる理由と全く同じ。
制作:Everest Pipkin(アメリカ)
「ゲーム」とは異なる、ゲームの可能性
「ゲーム」とされているが、収録の5作品はどれも、敵を倒して目的を果たすものでも、勝負の勝敗を決めるものでもない、初めて触れると意味がわからず、何が楽しいのかわからないなど戸惑いを覚える。
正直、私も最初は意味が分からなくて、公式サイトを翻訳するなどして調べた結果、今になってようやく5作とも内容を理解したので、ここにまとめてみた。
そんな、私たちが考える「ゲーム」とは全く異なるアプローチで、自分が操作して映像やプレイ感覚を味わい楽しむ。そこに「ゲーム」の可能性を見せてくれる作品として、触れてみるのもよいかもしれない。
追記:Triennale Game Collection 2
2020年に発売された『Triennale Game Collection 2』の紹介記事も書いているので、合わせて読んでいただければ幸い。
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