19XXプレイ日記(5):19XXのサウンドトラックCDと、音楽の中に隠されたテーマ
この記事を含めて、19XXプレイ日記をまとめています。
カプコンから1996年に発売された、縦スクロールSTG『19XX - The War Against Destiny -』は、サウンドトラックを収録したCDも同年に発売されています。
今回はそのCDについての紹介と、音楽とゲームには密接な繋がりがある、その関係について書いていきます。
ライナーノートに込められた裏話
CDに収録されているのは、ゲーム中に演奏される全曲と効果音、そして先日の記事で書いた隠し音楽も含まれています。
そのトラックリストは次の通り、全24トラックです。
01:Opening
02:Player Select
03:Map Display
04:A Bit Of Blue Sky Between The Clouds - Mission 1
05:亜也虎改 - Mission 1 Boss
06:The Red Naval Port - Mission 2
07:雷鳴 - Mission 2 Boss
08:Dance Of The Green Gnome - Mission 3
09:カルベルトワーゲン - Mission 3 Boss
10:Silver Ice Sheet - Mission 4
11:グランツ - Mission 4 Boss
12:City Light In The Black Strait - Mission 5
13:サンチョペドロ - Mission 5 Boss
14:Glayish Tornado - Mission 6
15:アウターリミッツ - Mission 6 Boss
16:The Last Ditch Fight - Mission 7
17:ブラックノイズ - Last Boss
18:Mission Clear
19:Ending
20:Game Over
21:Score Ranking
22:S.E. Collection
23:(Untitled - 19xx)
24:(Untilted - Beeps)
でも、CDに添付されているライナーノートには隠し音楽について記載されておらず、PCではない通常のCDプレイヤーで聴くと、22トラックが終了した時点で停止するため、CDの上でも「隠し」として収録されています。
そのライナーノートには、音楽やゲームについて様々な情報が記載されています。
それによると、各Missionのステージ曲は多くをSYUN.Nishigaki(西垣俊)氏が、Mission3・5の後半やボスなどはTATSURO-(鈴木達郎)氏、効果音はHiroaki "Mach-2" Kondo(近藤広明)氏が手がけているとのこと。
そして、各曲の解説も詳しく書かれています。その一部を引用すると、
各MissionのBGM以外の曲でも、かなりこだわりをもって創りました。
例えば、プレイヤーセレクトBGM。かすかに聞こえるSynth音のバッキング、実は「1942」のリズムでもあったり、またMap表示場面などのマーチングドラムは、学生時代に勉強したもを是非「19XX」で、と構想していたものであったりしました。(西垣俊)
また、Mission 6の曲『Glayish Tornado』について、
8分の6拍子のうねるようなスロービートから、ドラムパターンを変化させることで、曲のテンポが急にあがったかのように錯覚を起こさせるように創った。
曲名の意味は、テンボの錯覚と、うねりと、タメから来ている。(西垣俊)
など音楽についての詳細な解説や、またゲームについても「『19XX』の名称は、実は企画の時点で付けられた仮タイトルだった」など、裏話が満載です。
マイベストアルバムを作る
でもこのCDでは、Missionクリアの曲がラストボスの後に流れるという、ゲームと異なる曲順であったり、Mission3・5は前後半と2曲あるのに1トラックにまとめられているなど、個人的には納得いきませんでした。
そこで私は、自分で編集して音楽のみ全25トラックのマイベストアルバムを製作しています。ちなみに、この中で「作曲家」の項目について、ライナーノートを読んで分かる範囲で記載しています。
ゲームと音楽で共通するテーマとは
そのライナーノートには「ゲームの進行とBGMが同期するように意識した」と書かれています。
例えばゲームスタート時のデモで、航空機が撃墜されプレイヤーが脱出する場面で前奏のギターが鳴り響くなど、ゲームと音楽との融合を感じ取ることができます。
でも、ゲームと音楽の関係は同期に限らない、もっと大きな繋がりがあります。
それを解説するため、Mission1からMission6の展開と、そこに流れる曲のタイトルを紹介していきます。
まず、スタート直後に展開されるMission1では、青一色の大海とその中で繰り広げられる戦闘が描かれる。そこに流れる曲のタイトルが、
『A Bit Of Blue Sky Between The Clouds』(雲の隙間から見える青空)
Mission2は、夕日で真っ赤に染まる港をバックに流れる曲が、
『The Red Naval Port』(赤い軍港)
Mission 3、緑に囲まれたジャングル地帯の中で流れる曲
『Dance Of The Green Gnome』(緑のノーム(森の妖精)が踊るダンス)
Mission 4、日光の反射で白銀にきらめく氷河と海。そんな極寒の地を舞台に流れる曲、
『Silver Ice Sheet』(銀の氷床)
Mission 5、日が落ちた後の大空はまさに暗黒の世界、その中で繰り広げられる戦闘の後、夜の街に地上すれすれまで近づいたときに無数の汽車が走り抜ける。そこでの曲、
『City Light In The Black Strait』(黒い海峡にある街の光)
Mission 6、プレイヤーの前に現れる巨大要塞「アウターリミッツ」と無数の敵機。それらは全て、塗装された装甲の中にある、輝きのないくすんだ「灰色」の鉄がひしめき合う世界。そこに流れる曲、
『Glayish Tornado』(灰色の竜巻)
これら全ての曲タイトルに入っているキーワードは「色」です。それは音楽だけでなく、各Missionもその色をテーマに作られています。
更に、Mission1~3は青・赤・緑という光の3原色。4~6は銀・黒・灰という光の明暗を表しています。つまり、
このゲームが持つ大きなテーマは「光」
であることが分かります。
このゲームでクレジットを投入すると、タイトル画面で日の光が差し込むアニメーションがありますが、まさにこれこそが、ゲームのテーマである「光」を象徴しているのかも知れません。
また、ゲームのストーリーとして、第二次世界大戦が世紀末まで続くという泥沼の世界が背景にある。そんな戦争という「闇」を終結するためにマーカーミサイルという「光」を貫いていく。音楽からそんなテーマが感じ取れます。
ちなみにその後、ラストとなるMission 7の曲名は『The Last Ditch Fight』(最後の切り札)と、色が入っていませんが、ここで失敗して世界を黒い闇に閉ざしてしまうか、クリアにより戦争を終結させて世界を白く塗り替えるか、それはプレイヤー次第と言えるでしょう。