岡本太郎 -「太陽の塔」と最後の闘い
この書籍を読んだのは10年以上前だけど、私にとっては大きなきっかけになった一冊なので、記録として残しておく。
岡本太郎 - 「太陽の塔」と最後の闘い
(平野 暁臣 著/PHP新書)
芸術家、岡本太郎氏について書かれた書籍で、タイトルもそのまま『岡本太郎』。出版は2009年で、現時点で電子書籍は出ていない。
著者の平野暁臣氏は、太郎氏のパートナーだった岡本敏子氏(実質は太郎氏の婦人ではあるが、結婚しておらず戸籍上は『養女』だった)の甥で、太郎氏との交流も深く、書籍などの多くに関わっている。
「日本」対「太郎」というエネルギー
本の内容は、1970年に開催された大阪万博と巨大なモニュメント「太陽の塔」の製作に関するエピソードを中心に書かれている。
大阪の万博は、当時に日本にとって維新をかけたものだったが、それを岡本氏は逆にぶっ壊してやろうという意思の元に引き受けた。そもそも、広場には「万博を象徴するものを置きたい」という依頼だったが、誰もあんな巨大なこけし(本書に書かれている表現)を作れとは言っていない、それでも主催側はOKを出した。
あらゆる面で「日本」対「太郎」という対立であったが、氏はあくまでケンカをするのではなく「ぶつかり合って調和する」やり方だったという、当時の日本と太郎氏、双方にものすごいエネルギーを感じるイベントだったことが書かれている。
太陽の塔は、万博の広場に置かれた巨大にモニュメントというだけではなく、会場に訪れた多くの人を上階に設置された大屋根に運ぶ通路の役割も果たしていた。
これを考えたのは太郎氏自身で、人々を渋滞なくスムーズに通す方法を解決させた事も描かれているなど、太郎氏は様々な面で画期的な事をやっていた、まさに天才ぶりを見せている。
氏の魅力を知るきっかけ
だが、太郎氏は万博の後、TVなどでは妙な仕草をする奇人の印象が強く、私も子供心に「変な人」という印象しかなかった。書籍内でも「なぜ万博以降、TVではあのような道化を演じるようになったのだろうか、全てをやり切ったためなのか」と書かれているほど。
そんなイメージしかなかったが、この本を読んでから氏に対する印象が全く変わった。
その後、2022年には大規模な展覧会の開催されたりTVで特集が放送されたり、現在は「太陽の塔」の内部観覧が可能になるなど、その魅力を存分に味わうことができるようになったが、私にとって楽しむきっかけとなったのが、この書籍だった。